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最終章 俺の好きな幼馴染(雄二視点)
不意打ちを狙われる
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慎太の身体を綺麗にした後、部屋を出た。慎太が動けないようにわざと前でイカした。
『文山高校の番長がうちの番長は自分のもんだって喧嘩を売ってるって……』
この噂の真相は分からない。でも、あの汚いゴミが門倉が慎太のことを好きだって言っていたことからあながち嘘ではないはずだ。いや、嘘だろうが本当だろうがどうでもいい。慎太に近づく前にぶっ飛ばす。
文山高校にもう少しで到着するという時だった。あの中学生ヤンキーが道端で胸倉を掴まれ、殴られそうになっていた。そして、その中学生ヤンキーの胸倉を掴んでいるのはあの汚いゴミだった。あいつも懲りないな。
その汚いゴミヤンキーを殴り飛ばした時だった。
「おいおい、ちょうど子猫ちゃんを迎えに行こうと思ったら彼氏面の野郎がお出迎えかよ」
ぞろぞろと文山高校からヤンキーが出てきた。門倉と取り巻きたちだ。
「……慎太に近づくな」
「あいつ、イクと弱くなんだろ?俺の下でヒィヒィ言わせてやるよ」
「お前、そんな強くねぇだろ」
「前からお前目障りだったんだよ。お前たちやれ」
門倉が取り巻きに命令し、飛び掛かってくる。雑魚がいくら向かってきても所詮は雑魚だった。
1人の人間が俺の胸倉を掴んだ時だった。あの汚いヤンキーが間近に近づいてきてナイフを振り上げた。咄嗟に避けるが、そのせいで胸元のネックレスが引きちぎれた。後で拾えばいい。そんなの分かってる。でも、慎太から貰った大事なネックレスで一瞬目を奪われてしまった。ナイフがかすめることはなかったが、その隙に後ろから近付いてきた門倉に俺は鉄パイプで殴られ、気を失った。
薄れゆく記憶の中、門倉が何か言っている。ダメだ。捕まってはダメだ。気力を振り絞って俺を抱えようとした奴を殴り飛ばす。殴られ蹴られ、今度こそ俺は気を失った。
次に意識を戻したのは、冷たい床に頬を押し付け倒れている状態だった。あの後も殴られ蹴られて全身が痛い。いや、そんなことよりも嫌な予感が頭を過る。俺が捕まったせいで……まさか……
何度か強く蹴られて覚醒した頭に声がはっきりと聞こえる。誰に向かっているのかもすぐに分かった。
「おい、口開けろ」
やめろ。慎太の唇は俺のもんだ。慎太は俺のもんだ。守ろうとした俺が足手まといになって慎太を窮地に追いやってる……。もう死んでもいい。だから、慎太を守らせてくれ。
「中の具合も良さそうだ。楽しませてもらおうとするかな」
呼吸する度に痛いし、頭もくらくらする。頭から血が流れているせいで視界が悪い。でも、ぎゅっと力を入れて地面から立ち上がる。取り巻きたちは俺が立ち上がったことにどよめいている。
「あの男よりもお前をよがらせてやるよ」
汚い手で慎太に触れるな。飛び掛かってくる取り巻きを1人1人殴り飛ばす。慎太を助けられたら死んでもいい。血がどんどん流れる。卑怯な奴らで後ろからも前からも俺に飛び掛かってくる。一歩一歩近づき、慎太の元へと行く。
「……雄二……オレ、雄二が好きだって気付いたんだ……だから、もうこれ以上怪我しないでくれ……」
慎太の声で嘘のような言葉が聞こえる。
「お前が全部初めての相手で良かった。だから、俺は大丈夫だから……」
何が大丈夫なんだよ……。あんな奴、俺が倒すから、だからそんなこと言わないでくれ。
「俺も……俺もずっと、好きだった……」
ずっと言いたかった。傍にいれたらいいとかって理由つけて伝えなくてごめん。額と唇に柔らかい何かがあたる。それが慎太の唇なのだとすぐに分かった。
慎太が門倉に挑もうとしている。無理だ。力が弱くなった慎太では門倉に勝つのは難しい。血が流れても気にせず立ち上がろうとした。でも、もう動けなかった。
慎太の声だけが耳に聞こえる。力強い慎太の腕が俺の手を引っ張り、慎太の肩に回される。その慎太の力の強さで慎太の呪いは解けたのだと分かった。慎太が誰かと会話している。あの神だった。神は一言喋るとすぐにその場から去った。神が消えると俺の体力は少し戻り、意識もはっきりした。理由は分からない。神の気まぐれだろうか?
門倉がもう二度と慎太に近づかないようにピアスを引きちぎってその場を後にした。
廃ビルから出て行く2人を後ろから見送った。呪いを解く条件は満たしていなかった。神に謝ると言うことも、あの男と正式に交際をスタートさせたわけでもなかった。
でも、あの間抜けが自身の気持ちに気付いたこと、死にそうなのに守ろうと動いた男に心が少し揺れ動いたんじゃい。ちょっと久しぶりに感動したからサービスしてやったんじゃ。その後、すぐにワシのことも思い出して謝りよったしな。
まぁ、実際のところ、喧嘩ばかりしていると思ったが毎回相手から吹っ掛けられていて、おにぎりを食べれなくしよった原因も元々はあの汚いヤンキーのせいだと分かったからなんじゃが……。
まぁ、あの不器用なあやつの恋が実ったから良しとしてもらおうかのう!
それにあいつにおにぎりを持ってきてもらえなくなったらひもじいからのう。スミレの花では腹は膨れんのじゃよ。
『文山高校の番長がうちの番長は自分のもんだって喧嘩を売ってるって……』
この噂の真相は分からない。でも、あの汚いゴミが門倉が慎太のことを好きだって言っていたことからあながち嘘ではないはずだ。いや、嘘だろうが本当だろうがどうでもいい。慎太に近づく前にぶっ飛ばす。
文山高校にもう少しで到着するという時だった。あの中学生ヤンキーが道端で胸倉を掴まれ、殴られそうになっていた。そして、その中学生ヤンキーの胸倉を掴んでいるのはあの汚いゴミだった。あいつも懲りないな。
その汚いゴミヤンキーを殴り飛ばした時だった。
「おいおい、ちょうど子猫ちゃんを迎えに行こうと思ったら彼氏面の野郎がお出迎えかよ」
ぞろぞろと文山高校からヤンキーが出てきた。門倉と取り巻きたちだ。
「……慎太に近づくな」
「あいつ、イクと弱くなんだろ?俺の下でヒィヒィ言わせてやるよ」
「お前、そんな強くねぇだろ」
「前からお前目障りだったんだよ。お前たちやれ」
門倉が取り巻きに命令し、飛び掛かってくる。雑魚がいくら向かってきても所詮は雑魚だった。
1人の人間が俺の胸倉を掴んだ時だった。あの汚いヤンキーが間近に近づいてきてナイフを振り上げた。咄嗟に避けるが、そのせいで胸元のネックレスが引きちぎれた。後で拾えばいい。そんなの分かってる。でも、慎太から貰った大事なネックレスで一瞬目を奪われてしまった。ナイフがかすめることはなかったが、その隙に後ろから近付いてきた門倉に俺は鉄パイプで殴られ、気を失った。
薄れゆく記憶の中、門倉が何か言っている。ダメだ。捕まってはダメだ。気力を振り絞って俺を抱えようとした奴を殴り飛ばす。殴られ蹴られ、今度こそ俺は気を失った。
次に意識を戻したのは、冷たい床に頬を押し付け倒れている状態だった。あの後も殴られ蹴られて全身が痛い。いや、そんなことよりも嫌な予感が頭を過る。俺が捕まったせいで……まさか……
何度か強く蹴られて覚醒した頭に声がはっきりと聞こえる。誰に向かっているのかもすぐに分かった。
「おい、口開けろ」
やめろ。慎太の唇は俺のもんだ。慎太は俺のもんだ。守ろうとした俺が足手まといになって慎太を窮地に追いやってる……。もう死んでもいい。だから、慎太を守らせてくれ。
「中の具合も良さそうだ。楽しませてもらおうとするかな」
呼吸する度に痛いし、頭もくらくらする。頭から血が流れているせいで視界が悪い。でも、ぎゅっと力を入れて地面から立ち上がる。取り巻きたちは俺が立ち上がったことにどよめいている。
「あの男よりもお前をよがらせてやるよ」
汚い手で慎太に触れるな。飛び掛かってくる取り巻きを1人1人殴り飛ばす。慎太を助けられたら死んでもいい。血がどんどん流れる。卑怯な奴らで後ろからも前からも俺に飛び掛かってくる。一歩一歩近づき、慎太の元へと行く。
「……雄二……オレ、雄二が好きだって気付いたんだ……だから、もうこれ以上怪我しないでくれ……」
慎太の声で嘘のような言葉が聞こえる。
「お前が全部初めての相手で良かった。だから、俺は大丈夫だから……」
何が大丈夫なんだよ……。あんな奴、俺が倒すから、だからそんなこと言わないでくれ。
「俺も……俺もずっと、好きだった……」
ずっと言いたかった。傍にいれたらいいとかって理由つけて伝えなくてごめん。額と唇に柔らかい何かがあたる。それが慎太の唇なのだとすぐに分かった。
慎太が門倉に挑もうとしている。無理だ。力が弱くなった慎太では門倉に勝つのは難しい。血が流れても気にせず立ち上がろうとした。でも、もう動けなかった。
慎太の声だけが耳に聞こえる。力強い慎太の腕が俺の手を引っ張り、慎太の肩に回される。その慎太の力の強さで慎太の呪いは解けたのだと分かった。慎太が誰かと会話している。あの神だった。神は一言喋るとすぐにその場から去った。神が消えると俺の体力は少し戻り、意識もはっきりした。理由は分からない。神の気まぐれだろうか?
門倉がもう二度と慎太に近づかないようにピアスを引きちぎってその場を後にした。
廃ビルから出て行く2人を後ろから見送った。呪いを解く条件は満たしていなかった。神に謝ると言うことも、あの男と正式に交際をスタートさせたわけでもなかった。
でも、あの間抜けが自身の気持ちに気付いたこと、死にそうなのに守ろうと動いた男に心が少し揺れ動いたんじゃい。ちょっと久しぶりに感動したからサービスしてやったんじゃ。その後、すぐにワシのことも思い出して謝りよったしな。
まぁ、実際のところ、喧嘩ばかりしていると思ったが毎回相手から吹っ掛けられていて、おにぎりを食べれなくしよった原因も元々はあの汚いヤンキーのせいだと分かったからなんじゃが……。
まぁ、あの不器用なあやつの恋が実ったから良しとしてもらおうかのう!
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