【本編完結・外伝投稿予定】異世界で双子の弟に手篭めにされたけど薬師に救われる

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第二章 良太との日々

部屋の片隅で

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 良太を怒らせた翌日、身体の節々の痛みで目が覚めた。鈍痛に顔を歪めながら腰を上げて、周りを見渡すと良太は部屋にいなかった。いつも起きた時良太はほとんどいなので、今日もいないはずだと分かっていたけど、今日だけは良太がいないことにいつも以上に少しホッとした。

(ーーお風呂に入らないと……)

 いつものようにお風呂に入り、身体を綺麗にして、服を着ないと……。
 そう思っているのに、身体が鉛のように重くて動けなかった。

 昨日、無理矢理されたことだけが原因ではない。

 そっと昨日良太に叩かれた頰を触る。
 別にグーで殴られたワケでも、力を込めて叩かれたワケでもなく、全然痛くないはずなのに、心が痛かった。

(元の世界で喧嘩した時だって、こちらの世界に来てからだって、良太が叩いたことなんてなかったのに……)

 良太が思わず手を出してしまったということは頭では分かっている……。良太だって驚いた顔をしていた……。
 でも、良太が俺を叩いたと言う、その事実がとてつもなく悲しかった。

(思わず手をあげるほど、俺は追い込んでしまったんだろうか……)

 抵抗したことが直接の原因で叩かれたことは分かっている。でも、その前に俺が言った言葉が良太をあそこまで追い詰めてしまったんだろうか……。

(だって良太は俺の弟で……兄弟でこんなこと……)

 良太に「淫乱」と言われたことを思い出して、涙が頰を伝う。
 実の兄弟なのに何度も身体を重ねてしまい、しかも俺の身体はいつの間にか良太からの刺激に喜びを感じて、素直に反応してしまっている。

 以前は早く行為が終われと思っていたのに、いつの間にか行為中にそんなことを考える余裕はなく、頭は快感でいっぱいだった。その事実が悲しくて、震えた手でシーツをぎゅっと握りしめる。

(……感じたくなんか、ないのに……)

 今、自身がいるベッドで、良太に組み敷かれ、喘ぎ、何度も吐精する自分を思い出す。
 安心して眠るはずのベッドに安らぎなどなく、いつも意識を失うまで何度も貪られ、眠っているのか気絶しているのか分からない。

(ーーこの部屋にいたくない……)

 この部屋は今過ごしている部屋なのに、どこにも心が休まる場所がないんだ、と気づく。
 そう思っても俺には部屋を出ることもできないし、例え出れたとしても行く場所なんかない……。

 その事実に心打ちひしがれて涙が溢れ出た。

 部屋から出られない。それでも、少しでも抗いたくて、ベッドからシーツを引きずり、部屋の片隅で膝を抱えて丸くうずくまった。

「淫乱」

「弟とヤっちゃう変態」

「嫌がる割に腰を振ってる」

 良太が俺に投げかけた言葉を思い出して涙が頰を伝う。
 何度も良太の言葉が頭の中をぐるぐると駆け巡る。

 ここに来た時は、良太の気持ちを受け入れられず嘔吐していたのに、今では良太に組み敷かれ、気持ち良く喘いでいる自分がいる。そんな自分が恐ろしかった。

(……もう何も、考えたくない……)

 元の世界に戻ることも、この先自分はどうなってしまうのかも分からず、不安に駆られて、また涙が頬を伝う。
 この不安から逃れたくて、もう考えることをやめたいと願った。

(このまま何も考えずに良太に守ってもらった方が楽なのかな……)

 考えることをやめたいと願うのに、どうしても頭の中で色々なことが駆け巡り、どこかに答えを探そうとした。
 良太の気持ちを受け入れたら楽になるのかもしれない。
 
 でも、自分は良太をどうしてもそういう風には見れなかった。

(……もう……疲れたな……)

 どうすることが一番いいのか?なんて分からず、考えることをやめようと、シーツをより深くかぶる。
 服を着る気力もなく、裸でシーツにくるまると、おくるみにいる赤ちゃんみたいな気持ちになった。

 部屋の片隅で、膝を抱えて丸くなり、流れる涙をそっと拭いた後、静かに瞼を閉じた。
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