54 / 286
第二章 良太との日々
部屋の片隅で
しおりを挟む
良太を怒らせた翌日、身体の節々の痛みで目が覚めた。鈍痛に顔を歪めながら腰を上げて、周りを見渡すと良太は部屋にいなかった。いつも起きた時良太はほとんどいなので、今日もいないはずだと分かっていたけど、今日だけは良太がいないことにいつも以上に少しホッとした。
(ーーお風呂に入らないと……)
いつものようにお風呂に入り、身体を綺麗にして、服を着ないと……。
そう思っているのに、身体が鉛のように重くて動けなかった。
昨日、無理矢理されたことだけが原因ではない。
そっと昨日良太に叩かれた頰を触る。
別にグーで殴られたワケでも、力を込めて叩かれたワケでもなく、全然痛くないはずなのに、心が痛かった。
(元の世界で喧嘩した時だって、こちらの世界に来てからだって、良太が叩いたことなんてなかったのに……)
良太が思わず手を出してしまったということは頭では分かっている……。良太だって驚いた顔をしていた……。
でも、良太が俺を叩いたと言う、その事実がとてつもなく悲しかった。
(思わず手をあげるほど、俺は追い込んでしまったんだろうか……)
抵抗したことが直接の原因で叩かれたことは分かっている。でも、その前に俺が言った言葉が良太をあそこまで追い詰めてしまったんだろうか……。
(だって良太は俺の弟で……兄弟でこんなこと……)
良太に「淫乱」と言われたことを思い出して、涙が頰を伝う。
実の兄弟なのに何度も身体を重ねてしまい、しかも俺の身体はいつの間にか良太からの刺激に喜びを感じて、素直に反応してしまっている。
以前は早く行為が終われと思っていたのに、いつの間にか行為中にそんなことを考える余裕はなく、頭は快感でいっぱいだった。その事実が悲しくて、震えた手でシーツをぎゅっと握りしめる。
(……感じたくなんか、ないのに……)
今、自身がいるベッドで、良太に組み敷かれ、喘ぎ、何度も吐精する自分を思い出す。
安心して眠るはずのベッドに安らぎなどなく、いつも意識を失うまで何度も貪られ、眠っているのか気絶しているのか分からない。
(ーーこの部屋にいたくない……)
この部屋は今過ごしている部屋なのに、どこにも心が休まる場所がないんだ、と気づく。
そう思っても俺には部屋を出ることもできないし、例え出れたとしても行く場所なんかない……。
その事実に心打ちひしがれて涙が溢れ出た。
部屋から出られない。それでも、少しでも抗いたくて、ベッドからシーツを引きずり、部屋の片隅で膝を抱えて丸くうずくまった。
「淫乱」
「弟とヤっちゃう変態」
「嫌がる割に腰を振ってる」
良太が俺に投げかけた言葉を思い出して涙が頰を伝う。
何度も良太の言葉が頭の中をぐるぐると駆け巡る。
ここに来た時は、良太の気持ちを受け入れられず嘔吐していたのに、今では良太に組み敷かれ、気持ち良く喘いでいる自分がいる。そんな自分が恐ろしかった。
(……もう何も、考えたくない……)
元の世界に戻ることも、この先自分はどうなってしまうのかも分からず、不安に駆られて、また涙が頬を伝う。
この不安から逃れたくて、もう考えることをやめたいと願った。
(このまま何も考えずに良太に守ってもらった方が楽なのかな……)
考えることをやめたいと願うのに、どうしても頭の中で色々なことが駆け巡り、どこかに答えを探そうとした。
良太の気持ちを受け入れたら楽になるのかもしれない。
でも、自分は良太をどうしてもそういう風には見れなかった。
(……もう……疲れたな……)
どうすることが一番いいのか?なんて分からず、考えることをやめようと、シーツをより深くかぶる。
服を着る気力もなく、裸でシーツにくるまると、おくるみにいる赤ちゃんみたいな気持ちになった。
部屋の片隅で、膝を抱えて丸くなり、流れる涙をそっと拭いた後、静かに瞼を閉じた。
(ーーお風呂に入らないと……)
いつものようにお風呂に入り、身体を綺麗にして、服を着ないと……。
そう思っているのに、身体が鉛のように重くて動けなかった。
昨日、無理矢理されたことだけが原因ではない。
そっと昨日良太に叩かれた頰を触る。
別にグーで殴られたワケでも、力を込めて叩かれたワケでもなく、全然痛くないはずなのに、心が痛かった。
(元の世界で喧嘩した時だって、こちらの世界に来てからだって、良太が叩いたことなんてなかったのに……)
良太が思わず手を出してしまったということは頭では分かっている……。良太だって驚いた顔をしていた……。
でも、良太が俺を叩いたと言う、その事実がとてつもなく悲しかった。
(思わず手をあげるほど、俺は追い込んでしまったんだろうか……)
抵抗したことが直接の原因で叩かれたことは分かっている。でも、その前に俺が言った言葉が良太をあそこまで追い詰めてしまったんだろうか……。
(だって良太は俺の弟で……兄弟でこんなこと……)
良太に「淫乱」と言われたことを思い出して、涙が頰を伝う。
実の兄弟なのに何度も身体を重ねてしまい、しかも俺の身体はいつの間にか良太からの刺激に喜びを感じて、素直に反応してしまっている。
以前は早く行為が終われと思っていたのに、いつの間にか行為中にそんなことを考える余裕はなく、頭は快感でいっぱいだった。その事実が悲しくて、震えた手でシーツをぎゅっと握りしめる。
(……感じたくなんか、ないのに……)
今、自身がいるベッドで、良太に組み敷かれ、喘ぎ、何度も吐精する自分を思い出す。
安心して眠るはずのベッドに安らぎなどなく、いつも意識を失うまで何度も貪られ、眠っているのか気絶しているのか分からない。
(ーーこの部屋にいたくない……)
この部屋は今過ごしている部屋なのに、どこにも心が休まる場所がないんだ、と気づく。
そう思っても俺には部屋を出ることもできないし、例え出れたとしても行く場所なんかない……。
その事実に心打ちひしがれて涙が溢れ出た。
部屋から出られない。それでも、少しでも抗いたくて、ベッドからシーツを引きずり、部屋の片隅で膝を抱えて丸くうずくまった。
「淫乱」
「弟とヤっちゃう変態」
「嫌がる割に腰を振ってる」
良太が俺に投げかけた言葉を思い出して涙が頰を伝う。
何度も良太の言葉が頭の中をぐるぐると駆け巡る。
ここに来た時は、良太の気持ちを受け入れられず嘔吐していたのに、今では良太に組み敷かれ、気持ち良く喘いでいる自分がいる。そんな自分が恐ろしかった。
(……もう何も、考えたくない……)
元の世界に戻ることも、この先自分はどうなってしまうのかも分からず、不安に駆られて、また涙が頬を伝う。
この不安から逃れたくて、もう考えることをやめたいと願った。
(このまま何も考えずに良太に守ってもらった方が楽なのかな……)
考えることをやめたいと願うのに、どうしても頭の中で色々なことが駆け巡り、どこかに答えを探そうとした。
良太の気持ちを受け入れたら楽になるのかもしれない。
でも、自分は良太をどうしてもそういう風には見れなかった。
(……もう……疲れたな……)
どうすることが一番いいのか?なんて分からず、考えることをやめようと、シーツをより深くかぶる。
服を着る気力もなく、裸でシーツにくるまると、おくるみにいる赤ちゃんみたいな気持ちになった。
部屋の片隅で、膝を抱えて丸くなり、流れる涙をそっと拭いた後、静かに瞼を閉じた。
11
あなたにおすすめの小説
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 1000 Thank_You!!
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる