【本編完結・外伝投稿予定】異世界で双子の弟に手篭めにされたけど薬師に救われる

miian

文字の大きさ
69 / 286
第二章 良太との日々

ゆうにぃとの食事と魔術の書 良太side

しおりを挟む
 今日、ルウファの街と図書館へ行ったことを早速ゆうにぃに伝えようと、急ぎ足で食事を持ちながら、ゆうにぃのいる部屋へと向かった。部屋に入ると魔鏡を見ていたゆうにぃはビクッとして、こちらを振り向いた。
 ゆうにぃを色々と悩ませてしまったけど、距離を置いたことで、最近はゆうにぃの顔色が良くなって食欲もあるみたいで安心した。ゆうにぃも最近の僕の様子を見て、顔色が良くなったことに僕と同じく安心していて、2人で少し笑った。

 たまに、ゆうにぃが僕の双子の兄でなければ、もっと簡単に恋愛対象として受け入れてもらえたのかな?と思うことがある。でも、僕が好きなのは双子の兄弟として過ごしてきたことを含めてゆうにぃが好きだった。だから兄じゃなければ……とか意味のないことを考えることはやめた。

「今日見た生き物は殻から目玉1つ飛び出たドロドロの液状の小さくて気持ち悪い生き物だった」

 ゆうにぃは今日見た魔鏡の生き物について興奮して話した。この前は綺麗な蜘蛛について興奮しながら嬉しそうに話してくれたので、ゆうにぃがこの部屋で過ごすのに魔鏡が本当にあって良かった。
 今度は、僕がルウファの街に行ったことや、図書館について話すとゆうにぃは面白そうに聞いてくれる。

「今日、ルウファの名産品の芋みたいなのを買ってきたから、それで料理を作ってもらったよ。ピニャンて芋らしくて屋台ではその場で揚げ芋みたいにして売られてるんだ。見た目はどきつい緑色だけど、美味しいらしい」

「へぇ、匂いも香ばしくて美味しそうだな」

 オレンジ色のソースがかかった蒸されたピニャンを2人で頬張った。ピニャンは緑色なのでオレーンジソースも相まってカラフルな見た目なものの、ホクホクで見た目と反して優しい味だった。

「「美味しい!」」

2人で他のピニャン料理を食べて、「優しい味だ」とか感想を言いつつ、またルウファの街の話をした。

「というか、今日街を見て回ったのに、良太は屋台でピニャンとか食べなかったのか?」

「あー、ゆうにぃと食べたくて……」

 王子に食べ物を食べよう、あれを見よう、としつこく誘われたが、ゆうにぃと一緒に食べること以外で食事をとることに興味がなかった。それに、早く図書館へ行きたかったので、王子の誘い全てをスルーしていたことはゆうにぃに言わなかった。

 ふとゆうにぃの顔を見ると、羨ましそうな、我慢しているような、そんな表情をしていた。このグッと堪えるようなゆうにぃの表情が、自分の心をいつも惑わせる。ハッと我に返り、今はそんなことを考える時じゃない……と頭を振って、ゆうにぃに話しかけた。

「ゆうにぃ、やっぱり外に出たいよね……」

「ん?あぁ、ごめん。無理なの分かってるんだけど、いつの日か行ってみたいなぁって思って……」

「そう、だよね……何とかできないか頑張ってみるから、もう少しだけ待ってて欲しい……」

「救世主としての役割もあるんだから別に大丈夫だよ。ありがとうな」

(ゆうにぃが「ありがとう」って言ってくれた……!ゆうにぃの願いを叶えてあげたいし、僕もゆうにぃと街デートしたい……)

 その後も他愛のない話をして、ゆうにぃの部屋を出た。そのまま王子の隣の部屋へと行く。早速、今日図書館で借りてきた本を開いて、自分の調べたかったページを探す。
 僕の能力、護るという概念がどこまで指すのか分からなかったけど、何度も読み直し、その気になっている魔術を試してみる他ないと考えた。

(もしうまくいけば……ゆうにぃと僕との世界に近づくはず……)

 そんな願いを込めて、王子の部屋と繋がっている扉を開けた。王子は机に座って書類に目を通しているみたいだったが、話しかけるとうざいくらいの笑顔で王子がこちら見た。

 ゆうにぃと僕との世界に近づけるため、王子に少しだけ愛想良く笑ってやった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 1000 Thank_You!!

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

アルファの双子王子に溺愛されて、蕩けるオメガの僕

めがねあざらし
BL
王太子アルセインの婚約者であるΩ・セイルは、 その弟であるシリオンとも関係を持っている──自称“ビッチ”だ。 「どちらも選べない」そう思っている彼は、まだ知らない。 最初から、選ばされてなどいなかったことを。 αの本能で、一人のΩを愛し、支配し、共有しながら、 彼を、甘く蕩けさせる双子の王子たち。 「愛してるよ」 「君は、僕たちのもの」 ※書きたいところを書いただけの短編です(^O^)

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

処理中です...