【本編完結・外伝投稿予定】異世界で双子の弟に手篭めにされたけど薬師に救われる

miian

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第四章 交錯

会食

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 大きな穴蔵で一晩過ごした翌朝、出発してほどなくしてユグリル騎士団長がいる場所へと到着した。
 まだ探しているカケラは見つかっていないようで、全員で捜索することにした。

 カケラは手のひらに乗るほどだったので、そんなすぐ見つかるのかな?と思った数時間後、エンフィル王子と共に行動していたユグリル騎士団長が見つけた。
 ユグリル騎士団長が手のひらに乗せてラウリア王子に見せる。ラウリア王子が頷き、無事にフグラセンでの任務は完了したようだった。
 大輝さんも調査対象の生き物を見つけることはできなかったけど、その生き物の巣を見つけて糞便の採取ができたとのことでお城へと戻ることになった。

 お城へ戻る時、良太が「ゆうにぃ、転移魔術で先に僕と帰ろう」と言い、ラウリア王子たちに向かって良太は同じ旨を伝えたのだろう、ラウリア王子は駄々をこねているようで、良太はまた王子をあしらっている。

 エンフィル王子がため息をつき、ラウリア王子に魔法石を渡している。どうもそれで帰れと言っているみたいだ。
 大輝さんも「調べたいから」と言い、アルツナハインでもらった魔法石で帰るとのことで、良太の転移魔術で帰っても2人きりになることはなさそうだと思い、安心した。
 
 良太は目の前にラウリア王子だけでなくエンフィル王子もいるのに、皆もすぐに帰ると知り、チッと舌打ちしていた。良太は俺の腰を抱き寄せると、転移魔術で城のいつも過ごしている部屋へと戻った。

「ゆうにぃ、よく聞いて。あのエンフィルってヤツには気をつけて。絶対に近づかないで」

 良太が抱き寄せていた俺の腰から手を離したので離れようとしたら、腕を掴まれてクルッと回された。
 肩に手を置かれて真剣な顔をしたので、キスをされるのかと身構えていたら、言われたのはエンフィル王子に気をつけろと言う言葉だった。

「え?なんで?いや、確かに怖そうな雰囲気があったけど、助けてくれた人だぞ?」

「あいつ、何でか分からないけど、ゆうにぃにかけた認識阻害も認識改変もかかってないみたいなんだ……」

「……?どういうことだ?」

 訳が分からず話を聞くと、良太が俺にかけている魔術が何故かエンフィル王子にはかかっておらず、俺のことを怪しんでいるようだと言った。
 認識改変は一度ラウリア王子にかけて失敗したことがあったけど、設定をきちんと固定してからは、その正しくなった情報で俺に魔術をかけ直していたらしい。
 認識改変って魔術はラウリア王子に直接かけて記憶をいじっているのかと思っていたけど、良太は俺に直接認識改変をかけていて、俺を見た人にその魔術がかかるのだと初めて知った。
 と言うか、自殺防止や魔力偽装以外にも俺にかけられていたなんて知らなかった。

「分かった?アイツには気をつけて」

「うん……」

 念押しするように言われたので、返事をすると良太は張り詰めていた緊張を解くと俺にチュッとキスをした。
 先ほどまで真剣な眼差しをしていたので油断していた。

「ずっとお預けされてるからこの先もしたいけど夕食の時間だから行こう」

 ガッカリした表情で良太が呟いた。良太が夜部屋で過ごさないようになってから、夕食はダイニングルームという部屋で決まった時間に必ず食事することになっていた。
 何故かずっと分からなかったけど、この前契約という言葉を大輝さんに良太が言っていた。
 もしかして部屋のことや食事も契約の1つなのかな?

(大輝さんがそうしてくれたのかな?でもどうして?)

 俺が良太に怯えていると知ったからと言って、どうして大輝さんはここまでしてくれるのだろうか?偶然かな?
 そんな風に考えながら、ダイニングルームの部屋へ入り、扉を閉めようとした時だった。

 閉まりかけた扉を誰かがこじ開けるようにして入ってきた。振り返り驚いた。
 先ほどまで同じジャングルにいたラウリア王子が部屋へと入ってきたのだ。そのすぐ後ろにエンフィル王子と大輝さんもいて、部屋へと入ってきた。
 良太が喚いているが、ラウリア王子が何か言い、部屋から出ていく様子はなさそうだった。
 王子たちと大輝さんが席に着いたので、俺も座ることにした。
 
 いつもは良太と向かい合わせに座っていたけど、今日はラウリア王子とエンフィル王子が隣同士で、大輝さんがエンフィル王子の横に座った。良太と俺は王子たちの向かい側に横並びになって座ることにした。

 よくよく見ると食事も人数分置かれていたので、ラウリア王子たちは元から一緒に食事をするつもりだったのだろうか?
 先ほど、良太にエンフィル王子に気をつけろと言われたのに、早速会ってしまったこの状況は困る。
 俺がこの状況に困っていると、大輝さんが俺の様子に気づいて「エンフィル王子が一旦この城へと戻ってくることにしたらしく、皆で会食をしたいと言ったらしい」と教えてくれた。

 シーンと静まり返った中で、ラウリア王子が口を開き『ーー.ーーー.ーーーーー?』と言った時だった。
 エンフィル王子は頷き、良太と大輝さんが『はぁ?』とか『おいっ』とかって言っている。
 良太が立ち上がり、その振動でグラスが倒れた。

「おっ、おい……」

「ゆうにぃ、もう行こう」

 隣にいる良太に声をかけようとするも、その前に良太が俺の手を引いて部屋を去ろうとする。
 そこでエンフィル王子が何か口を開くと、良太は大人しく座った。

 重々しい空気で食事は継続され、1人ラウリア王子だけが機嫌よく食事をしていた。
 呼吸する度に胃が重くなるような気まずさの中、静かに食事は終わり良太に連れられて部屋へと戻った。

「な、なぁ?何があったんだ?」

 戸惑いながら聞く俺に良太は言うか言わないか迷ったのだろう、少し時間を置いてから口を開いた。

「ゆうにぃをあのエンフィルってやつと結婚させるって……」

(……俺が……エンフィル王子と結婚……?)

 何を言っているかよく分からなかったけど、エンフィル王子と俺を結婚させるとラウリア王子が言って、エンフィル王子も了承しているらしい。

「ゆうにぃは絶対誰にも渡さない……」

 良太が俺の肩に手を置いて、ぎゅっと力を込めた。
 押しつぶすように肩に置いた手に良太が力を入れるので、俺は「痛い」と言おうとしたのに、良太の顔が険しくて言うことができなかった。


※2023/4/26『嫉妬』の公開位置を間違えてしまいました。本話『会食』の後に移動させます。読んでくれた方、申し訳ありません。
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