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国王の婚姻
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国王はアロイスよりも少し年下だが、もう結婚していてもおかしくない年齢ではある。
貴族たちの集まりでも、たびたび国王の結婚については話題に上がっていた。
「相手はコルスの王女だ」
「そうですか」
アロイスはなぜ国王がわざわざ自分を呼び出してまで、結婚の報告をしてくるのかがわからなかった。
「どうして呼び出されたのかという顔をしているな?」
「まあ、そうですね」
机の向こう側でにやりと笑う国王に、アロイスは素直に心情を認めた。
近衛になってからまだ日が浅く、国王の性格を十分に理解しているとは言えないが、それなりの信頼関係は築けていると思っている。
有能な人材を集めるのが趣味で、なかなか食えない人だというのはわかっていた。
「おまえにも関係があるから、わざわざ呼び出したのだ」
「陛下が有能であることは、疑ってなどおりませんよ」
「まあ、私の話を最後まで聞け」
アロイスは姿勢を正し、国王の言葉を拝聴する姿勢をとってみせた。
「半年ほど先にはコルスの王女がこの国にやって来る。さらに半年後には挙式の予定だ。だが、私の妃となる者の周りに、若い男が近づくのはあまりよろしくないと、大臣どもが言うのだ」
「それは、近衛がお守りする以上、仕方のないことでは?」
この国には女性の兵士が少ない。魔法使いならば、女性もそれなりにいるが、国王の身近に仕えられるほど身元の確かな者は少ない。
近衛に女性を採用する話はなんどか出てはいるが、すぐに使えそうな人材がいるかと言えば否で、未だ実現していない。
男ばかりの近衛だが王族の守りを任務としている以上、未来の王妃を護衛するのも仕方のないことだ。
「そこで、ある男から有能で、護衛ができる能力があり、身元の確かな既婚女性を召し上げるのはどうかと言われてな」
「確かに護衛を務められる女性がいるのであればいうことはありませんが……」
王族に仕える女性は既婚者であることが望ましいとされている。だが、それがアロイスにどう関係してくるのかが、わからない。
アロイスは嫌な予感に胸が騒いだ。
「そこで、おまえの出番だ」
「私、ですか?」
「お前の妻ならば、条件を満たせるだろう」
「私は結婚していませんが?」
「いまからすぐ結婚すれば間に合う」
「私は初恋の相手と結婚すると決めています」
レティ以外と結婚するつもりはない。アロイスは予防線を張った。
「知っている。オルレーヌ公の娘だろう? 先日の夜会に招待したときから気になっていたのだ。まさかあの公爵の娘だとは思わなかった」
「はい?」
アロイスは思わず口をついて出た言葉が、不敬だと気づいて慌てた。
「どこでそれを……お聞きに?」
そう言いつつも、そんなことを知っている人間をアロイスはひとりしか知らなかった。
アロイスの表情が情報を漏らした相手に思い当たったものに変わる。
それに気づいた国王は、にんまりと笑った。
「そういうことだ。魔導士であるならば能力に何ら不足はない。一年後の婚儀に先駆けて、おまえが結婚すれば済む話だ」
「そんな簡単におっしゃらないでいただきたい」
「私にとっては他人事だ。それに、オルレーヌ公とおまえの弱みを同時に握ることができて、いいこと尽くめだ。おまえにとっても、妻と一緒の職場で働けることは悪い話ではないだろう?」
確かにレティと同じ職場で働けるのならば嬉しいが、アロイスは素直にうなずけない。それに、国王の声がかりでの結婚となれば、ヴィラール侯爵家当主としては逆らえない。
国王は為政者としては頼もしく、誇らしくもあり、仕えるのに相応しいと思えるが、その一方で、食えない人物だとも思う。
それよりもアロイスはオルレーヌ公の弱みというのが気になっていた。
「彼女がオルレーヌ公の、弱みなのですか?」
「そうだ」
国王は肯定したが、アロイスにはどうにも違和感を拭えなかった。レティから聞いていた話では、父親とは一度も会ったことがないという話だった。
公爵にとってレティが弱みであるということと、七歳まで子供に会ったことのない父親とが、アロイスのなかの公爵像にはにわかに一致しない。
だが国王が詳しく語らぬところをみるに、これ以上教えてくれるつもりはないようだ。
「公爵に話を呑ませるために、私もカードを切る必要があったが、それについてはまあいい。公爵には話を通してある。きちんと挨拶に行くのだぞ?」
「承知いたしました」
「下がっていい」
国王はそう告げると、アロイスに興味を失ったように机の上の書類に目を落としている。
アロイスは頭を下げて、国王の前を辞した。
その足で近衛が詰めている部屋に向かう。
予想通り、お目当ての人物はそこにいた。幸いと言うべきか周囲にほかに人影はない。
アロイスは大股で彼に近づき、詰め寄った。
「エヴァ、私の情報を陛下に売っただろう?」
「売らない、とは約束しませんでしたから」
「く……、確かに」
しれっとした顔でそういわれてしまえば、アロイスは反論できない。
「それに、陛下のお力をお借りしたほうが早いと思いまして。あの公爵閣下から結婚の承諾をもぎ取るのは難しそうでしたし……」
「それはそう……なのだが」
できればもう少し穏やかな手段でレティを手に入れたかった。しかし、エヴァリストに手段を任せると言ってしまった手前、責めることはできない。
「それよりも、公爵とはお話したのですか?」
「いや、まだだ」
「ならば、そちらを攻略するための策を練る必要がありますね?」
にっこりと笑ったエヴァリストに、アロイスは苦虫を噛みつぶしたような表情になる。
「これほどエヴァが面倒見のいい奴だとは思わなかったよ。涙が出そうだ」
「それほど感激してもらえるとは、友達甲斐がありました」
そうして、アロイスはエヴァリストに相談して、公爵にお伺いを立てる手紙を送った。
結婚に関して取り決めを交わす必要があったし、オルレーヌ公爵家とヴィラール侯爵家が縁付くとなれば、いろいろと話し合うべきことも多い。
オルレーヌ公からの返事は思っていたよりも早くアロイスの元へもたらされた。
アロイスは休暇をとり、手紙で指定された時刻に王都の公爵邸を訪ねた。
「それで、君があの子の結婚相手というわけか。あのような子が欲しいとは物好きな男だな」
応接室に通されるなり、公爵はアロイスに対して高圧的な声を発した。はっきりと値踏みされているとわかる視線に、一瞬むっとする。
だが、公爵の態度については想定の範囲内だった。
アロイスは笑みを作り、応える。
「あのような子とおっしゃいますが、あなたの娘でしょう?」
「そうだな」
余裕のある態度を崩さないアロイスに、公爵が矢継ぎ早に質問をしてくる。
「なんでも以前からの知り合いだとか?」
「ええ、彼女は覚えていないようですが」
「それなのに、結婚したいと?」
「はい。許していただけるのなら」
「私は別に構わないと思っている。公爵家にとってもヴィラール侯爵家との結びつきができれば、なにかと便利だからな」
「それは我が侯爵家にとっても同じですよ」
「ふむ……、悪くない。どのみち陛下の要請となれば私に断る権利はない。娘との結婚を許そう」
「……っ、ありがとうございます」
思っていたよりも簡単に承諾を得たことに、アロイスは拍子抜けする。
だが、安心するにはまだ早かった。
「だが肝心の娘が、結婚を望んでいない」
「とは言っても、陛下のご意向がある以上、拒否することは許されないでしょう」
「あの子が私の言うことなどききはしない」
公爵ははじめてアロイスに弱気な表情を見せた。
そんな顔をすると、レティと似ているような気がして、アロイスもあまり強い態度に出られなくなる。
アロイスは少しためらったあと、公爵に問いかけた。
「それは、あなたが彼女を庶子のままにしていることと関係がありますか?」
「調べたのか……」
「妻にしようとする人のことですから」
アロイスはにこりとほほ笑んだ。
エヴァリストに協力してもらったおかげで、思った以上にレティについての情報が集められた。
どうやら公爵は母親が亡くなったのを機に、レティを引き取るつもりだったが、公爵夫人の強い反対により断念したという経緯があったらしい。
親子の仲がこじれたまま、ここまできてしまったというところだろう。
「あの子は公爵家の嫡子として育てられてはいない。故に貴族としての義務も知らず、結婚を強制できるほどの愛情も感じていない。なので、少々強引な手段でもって承諾させた」
「は、どういうことです?」
アロイスは一瞬頭が真っ白になった。まずは礼儀として父親に婚姻の許可を求めたはずが、どうしてこんな事態になっているのか理解できない。
あとは彼女を口説き落とせば、それでどうにかなったはずなのに。
「あの子の勤め先を人質に取って承諾させた。それで恨まれたとしても、あとは君の手腕でなんとかしてくれ」
公爵の取った手段はアロイスにとっては最悪の方法だった。
調べた限りでは、レティは魔法使いとなって以来、研究一筋に生きてきた。彼女の居場所を奪うような真似をすれば、恨まれるに決まっている。
国王が王妃の護衛に召し抱えたいと思っている以上、いずれは研究所をやめてもらうことになるとしても、こんな手段ではどうしてもしこりが残る。
アロイスには嫌がらせとしか思えなかった。
これが世にいう婿いびりというやつかと、怒りを通り越して若干感動する。
ほとんど会ったことがないはずなのに、公爵はレティの弱みをよく理解している。
レティが思っているよりは、愛されているのではないかと思えるほどに。
――少なくとも婿としては認められた。一歩前進と言えなくはない。自分に任せるという言質を得たのだ。私の好きにさせてもらおうか。
アロイスはにやりと口角を釣り上げた。
「承知しました。私に任せていただけるということで、よいですね。では、持参金の相談に参りましょうか」
「ああ、時間は有限だ。さっさと決めてしまおう」
公爵とアロイスのあいだに見えない火花が散った。
貴族たちの集まりでも、たびたび国王の結婚については話題に上がっていた。
「相手はコルスの王女だ」
「そうですか」
アロイスはなぜ国王がわざわざ自分を呼び出してまで、結婚の報告をしてくるのかがわからなかった。
「どうして呼び出されたのかという顔をしているな?」
「まあ、そうですね」
机の向こう側でにやりと笑う国王に、アロイスは素直に心情を認めた。
近衛になってからまだ日が浅く、国王の性格を十分に理解しているとは言えないが、それなりの信頼関係は築けていると思っている。
有能な人材を集めるのが趣味で、なかなか食えない人だというのはわかっていた。
「おまえにも関係があるから、わざわざ呼び出したのだ」
「陛下が有能であることは、疑ってなどおりませんよ」
「まあ、私の話を最後まで聞け」
アロイスは姿勢を正し、国王の言葉を拝聴する姿勢をとってみせた。
「半年ほど先にはコルスの王女がこの国にやって来る。さらに半年後には挙式の予定だ。だが、私の妃となる者の周りに、若い男が近づくのはあまりよろしくないと、大臣どもが言うのだ」
「それは、近衛がお守りする以上、仕方のないことでは?」
この国には女性の兵士が少ない。魔法使いならば、女性もそれなりにいるが、国王の身近に仕えられるほど身元の確かな者は少ない。
近衛に女性を採用する話はなんどか出てはいるが、すぐに使えそうな人材がいるかと言えば否で、未だ実現していない。
男ばかりの近衛だが王族の守りを任務としている以上、未来の王妃を護衛するのも仕方のないことだ。
「そこで、ある男から有能で、護衛ができる能力があり、身元の確かな既婚女性を召し上げるのはどうかと言われてな」
「確かに護衛を務められる女性がいるのであればいうことはありませんが……」
王族に仕える女性は既婚者であることが望ましいとされている。だが、それがアロイスにどう関係してくるのかが、わからない。
アロイスは嫌な予感に胸が騒いだ。
「そこで、おまえの出番だ」
「私、ですか?」
「お前の妻ならば、条件を満たせるだろう」
「私は結婚していませんが?」
「いまからすぐ結婚すれば間に合う」
「私は初恋の相手と結婚すると決めています」
レティ以外と結婚するつもりはない。アロイスは予防線を張った。
「知っている。オルレーヌ公の娘だろう? 先日の夜会に招待したときから気になっていたのだ。まさかあの公爵の娘だとは思わなかった」
「はい?」
アロイスは思わず口をついて出た言葉が、不敬だと気づいて慌てた。
「どこでそれを……お聞きに?」
そう言いつつも、そんなことを知っている人間をアロイスはひとりしか知らなかった。
アロイスの表情が情報を漏らした相手に思い当たったものに変わる。
それに気づいた国王は、にんまりと笑った。
「そういうことだ。魔導士であるならば能力に何ら不足はない。一年後の婚儀に先駆けて、おまえが結婚すれば済む話だ」
「そんな簡単におっしゃらないでいただきたい」
「私にとっては他人事だ。それに、オルレーヌ公とおまえの弱みを同時に握ることができて、いいこと尽くめだ。おまえにとっても、妻と一緒の職場で働けることは悪い話ではないだろう?」
確かにレティと同じ職場で働けるのならば嬉しいが、アロイスは素直にうなずけない。それに、国王の声がかりでの結婚となれば、ヴィラール侯爵家当主としては逆らえない。
国王は為政者としては頼もしく、誇らしくもあり、仕えるのに相応しいと思えるが、その一方で、食えない人物だとも思う。
それよりもアロイスはオルレーヌ公の弱みというのが気になっていた。
「彼女がオルレーヌ公の、弱みなのですか?」
「そうだ」
国王は肯定したが、アロイスにはどうにも違和感を拭えなかった。レティから聞いていた話では、父親とは一度も会ったことがないという話だった。
公爵にとってレティが弱みであるということと、七歳まで子供に会ったことのない父親とが、アロイスのなかの公爵像にはにわかに一致しない。
だが国王が詳しく語らぬところをみるに、これ以上教えてくれるつもりはないようだ。
「公爵に話を呑ませるために、私もカードを切る必要があったが、それについてはまあいい。公爵には話を通してある。きちんと挨拶に行くのだぞ?」
「承知いたしました」
「下がっていい」
国王はそう告げると、アロイスに興味を失ったように机の上の書類に目を落としている。
アロイスは頭を下げて、国王の前を辞した。
その足で近衛が詰めている部屋に向かう。
予想通り、お目当ての人物はそこにいた。幸いと言うべきか周囲にほかに人影はない。
アロイスは大股で彼に近づき、詰め寄った。
「エヴァ、私の情報を陛下に売っただろう?」
「売らない、とは約束しませんでしたから」
「く……、確かに」
しれっとした顔でそういわれてしまえば、アロイスは反論できない。
「それに、陛下のお力をお借りしたほうが早いと思いまして。あの公爵閣下から結婚の承諾をもぎ取るのは難しそうでしたし……」
「それはそう……なのだが」
できればもう少し穏やかな手段でレティを手に入れたかった。しかし、エヴァリストに手段を任せると言ってしまった手前、責めることはできない。
「それよりも、公爵とはお話したのですか?」
「いや、まだだ」
「ならば、そちらを攻略するための策を練る必要がありますね?」
にっこりと笑ったエヴァリストに、アロイスは苦虫を噛みつぶしたような表情になる。
「これほどエヴァが面倒見のいい奴だとは思わなかったよ。涙が出そうだ」
「それほど感激してもらえるとは、友達甲斐がありました」
そうして、アロイスはエヴァリストに相談して、公爵にお伺いを立てる手紙を送った。
結婚に関して取り決めを交わす必要があったし、オルレーヌ公爵家とヴィラール侯爵家が縁付くとなれば、いろいろと話し合うべきことも多い。
オルレーヌ公からの返事は思っていたよりも早くアロイスの元へもたらされた。
アロイスは休暇をとり、手紙で指定された時刻に王都の公爵邸を訪ねた。
「それで、君があの子の結婚相手というわけか。あのような子が欲しいとは物好きな男だな」
応接室に通されるなり、公爵はアロイスに対して高圧的な声を発した。はっきりと値踏みされているとわかる視線に、一瞬むっとする。
だが、公爵の態度については想定の範囲内だった。
アロイスは笑みを作り、応える。
「あのような子とおっしゃいますが、あなたの娘でしょう?」
「そうだな」
余裕のある態度を崩さないアロイスに、公爵が矢継ぎ早に質問をしてくる。
「なんでも以前からの知り合いだとか?」
「ええ、彼女は覚えていないようですが」
「それなのに、結婚したいと?」
「はい。許していただけるのなら」
「私は別に構わないと思っている。公爵家にとってもヴィラール侯爵家との結びつきができれば、なにかと便利だからな」
「それは我が侯爵家にとっても同じですよ」
「ふむ……、悪くない。どのみち陛下の要請となれば私に断る権利はない。娘との結婚を許そう」
「……っ、ありがとうございます」
思っていたよりも簡単に承諾を得たことに、アロイスは拍子抜けする。
だが、安心するにはまだ早かった。
「だが肝心の娘が、結婚を望んでいない」
「とは言っても、陛下のご意向がある以上、拒否することは許されないでしょう」
「あの子が私の言うことなどききはしない」
公爵ははじめてアロイスに弱気な表情を見せた。
そんな顔をすると、レティと似ているような気がして、アロイスもあまり強い態度に出られなくなる。
アロイスは少しためらったあと、公爵に問いかけた。
「それは、あなたが彼女を庶子のままにしていることと関係がありますか?」
「調べたのか……」
「妻にしようとする人のことですから」
アロイスはにこりとほほ笑んだ。
エヴァリストに協力してもらったおかげで、思った以上にレティについての情報が集められた。
どうやら公爵は母親が亡くなったのを機に、レティを引き取るつもりだったが、公爵夫人の強い反対により断念したという経緯があったらしい。
親子の仲がこじれたまま、ここまできてしまったというところだろう。
「あの子は公爵家の嫡子として育てられてはいない。故に貴族としての義務も知らず、結婚を強制できるほどの愛情も感じていない。なので、少々強引な手段でもって承諾させた」
「は、どういうことです?」
アロイスは一瞬頭が真っ白になった。まずは礼儀として父親に婚姻の許可を求めたはずが、どうしてこんな事態になっているのか理解できない。
あとは彼女を口説き落とせば、それでどうにかなったはずなのに。
「あの子の勤め先を人質に取って承諾させた。それで恨まれたとしても、あとは君の手腕でなんとかしてくれ」
公爵の取った手段はアロイスにとっては最悪の方法だった。
調べた限りでは、レティは魔法使いとなって以来、研究一筋に生きてきた。彼女の居場所を奪うような真似をすれば、恨まれるに決まっている。
国王が王妃の護衛に召し抱えたいと思っている以上、いずれは研究所をやめてもらうことになるとしても、こんな手段ではどうしてもしこりが残る。
アロイスには嫌がらせとしか思えなかった。
これが世にいう婿いびりというやつかと、怒りを通り越して若干感動する。
ほとんど会ったことがないはずなのに、公爵はレティの弱みをよく理解している。
レティが思っているよりは、愛されているのではないかと思えるほどに。
――少なくとも婿としては認められた。一歩前進と言えなくはない。自分に任せるという言質を得たのだ。私の好きにさせてもらおうか。
アロイスはにやりと口角を釣り上げた。
「承知しました。私に任せていただけるということで、よいですね。では、持参金の相談に参りましょうか」
「ああ、時間は有限だ。さっさと決めてしまおう」
公爵とアロイスのあいだに見えない火花が散った。
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