ドラゴンが最強だなんて誰が言った?

文月 蓮

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幕間 一

いとし子

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 私と愛する夫イーヴォとの間に、ようやく女の子を授かることができた。
 ドラゴンは三対七くらいの比率でメスのほうが少ない。
 個体数が減りつつあるドラゴンの未来のためにも、私はぜひとも女の子を産みたかったのだ。
 ドラゴンの子供は少ないので、子が生まれると周囲のみんなが過剰にかわいがってしまう傾向がある。
 上の息子たちがタマゴからかえったときは、夫の両親や、私の両親が押しかけてきて大変だった。
 子供たちがぐったりとするまでかまい倒される姿を見ていたので、ルチアのときは来訪をご遠慮いただいた。
 両親たちはかわいい孫娘の姿を一目見たいとごねていたが、ルチアが生まれたときは、このまま育つのだろうかと危ぶまれるほど弱弱しかった。
 生まれたルチアの姿を目にした上の息子たちはこぞって世話を焼こうとする。ともすれば過剰に。
 こんな状態のルチアを両親たちに見せたら、ルチアが死んでしまうのではないかと心配になった私たちは、ある決心をした。ルチアが両親たち、兄弟たちにかわいがられても大丈夫なほどに成長するまでは、離れて暮らすことを。
 かわいい息子たちに会えない日々は寂しかったけれど、これもルチアのためだと涙を飲んで耐えた。
 そうして、私たちの心配どおりルチアの成長は遅かった。
 すぐに体調は悪くなるし、なんどもこのまま死んでしまうのではないかとはらはらさせられた。
 上の息子たちのときは半年もすれば、言葉を話すようになり、意思疎通も楽になったのだが、ルチアはそこまで成長するのに一年ほどかかってしまった。
 そしてルチアは、とてもおてんばだった。
 驚いたことに、あの子は次々と四属性すべての精霊と契約してしまった。
 普通ならば生まれてから二、三年もしなければ、精霊と契約することはできないはずなのに、言葉もまともにしゃべらないうちから契約をしてしまった。
 いくら四種族の竜の血を引くとはいえ、すべての精霊と契約するというのはただ事ではない。
 おそらくルチアは普通のドラゴンよりも、寿命が長い分ゆっくりと成長しているのだ。
 人の寿命はおよそ六十年。ドラゴンである私たちはその十倍はゆうに生きる。
 寿命の長い竜人りゅうじん森人しんじんでも二百年ほどであることを考えると、驚異的な寿命の長さだ。
 ゆえに私たちの成長は緩やかだ。
 十年ほどで成竜となり、親の元を巣立っていく。
 マウロはあと一年ほど、ティーとも三年ほどで巣立ちの時期を迎えるだろう。
 けれども成長の遅いルチアが成竜となり、巣立つにはあと十年ほどはかかるだろう。
 とりあえずルチアの身体もずいぶんと丈夫になったので、子供たちの待つ家に帰ることにした。
 久しぶりに会った息子たちは祖父母の元でずいぶんと成長していた。
 ちょっとやんちゃな長男マウロは、風竜の性質そのままに好奇心旺盛で、はらはらと心配させられるときもあるけれど、愛すべきわが子だ。
 すこしおとなしい次男のティートは地竜らしく、年齢の割には落ち着いている。猪突猛進なところのある兄の姿を見ていたせいか、よく考えてから行動することが多い。
 脳筋の多い夫の家系ではなく、私の父や母に似たのかもしれない。
 なにはともあれ、私たち家族が再び一緒に暮らせることになったことを喜ぼう。
 ルチアは毎日兄たちと家の近くを飛び回って、元気に遊んでいる。
 ドラゴンのメスは子供を産むまでは、魔力も力もそれほど強くない。けれど一旦子供を授かると、子を守らなければという意識が働くのか、魔力も力も桁違いに強くなる。
 それなのに、ルチアはすぐに強くなりたいのだと、魔力を増やす練習をしている。
 確かに四属性すべての精霊と契約できるのだから、かなりの魔力を持っていることは間違いない。けれど、その魔力はすべて精霊の成長に使われてしまうために、彼女自身が使える魔力はそれほど多くない。
 ある日、夫の弟が家に遊びに来た。
 義弟のラウルは、一族の中でもかなりの変わり者だ。
 ドラゴンなのに人の姿になって、人の世界で暮らしているのだ。
 もともとドラゴンは身体の小さな他の種族にあわせて、人の姿を取ることはたまにあった。けれどもラウルのように、常に人の姿で彼らと共に暮らそうと思うドラゴンはめったにいない。
 私たちに敬意を抱き、何かと便宜を図ってくれる竜人りゅうじん森人しんじんたちならばともかく、わけのわからない理論を振りかざし、私たちを素材として狩りにくる人間とは、とても仲良くしようとは思えない。
 しかもラウルは大きな街でレストランとかいう料理屋を経営している。
 基本的に素材をそのまま頂くドラゴンにとって、わざわざ食べ物をこねくり回して料理するというのがなんとも理解しがたい。
 そんなところだけはちょっといただけないラウルだが、甥っ子たちのことはとてもかわいがってくれている。
 そんな彼が人の姿のままでルチアに会ったところ、ルチアが突然人間に変化できるようになってしまった。
 あの子の兄たちでさえ変化する能力はまだ身につけていないというのに。
 なんとかわいいのだろう!
 人の姿に変身したルチアは、それはもうかわいらしかった。人の姿を見てもこれまでかわいいとは思ったことがなかったけれど、ルチアだけは別だ。
 けれど同時にとても心配になる。
 薄い皮膚は突けばすぐに破れてしまいそうなほどやわらかく、頼りない。
 しかも人の姿で冒険がしたいと言い出したときは、仰天した。
 親ばかかもしれないが、ルチアは神に愛されているのではないかと思う。
 でなければこれほどまでに早く変身する力を身につけ、四種族もの精霊と契約することなどできるはずがない。
 私たちにできることは、ルチアが独り立ちできるまで、できる限りの手助けをし、成長を見守ることだけだ。
 どうか神様、私たちのかわいいルチアをお守りください。
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