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第二部
金髪の騎士
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尖った耳と、白い鱗に覆われたしっぽが見えているので、否定しても無駄だろう。
私は騎士の問いにうなずいた。
「何か?」
「おお、やはりか!」
騎士は嬉しそうに顔をほころばせた。
クラウディオが持ち上げていた私を床に下ろしてくれた。
改めて、ゆっくりと目の前の騎士を観察する。彼は腰に細身の剣を下げ、背中には逆三角形の盾を背負っていた。
淡い金色の髪に、透き通った空色の瞳をした騎士は、いかにも好青年といった容貌をしていた。
「失礼した。私はヴィットーレという。騎士だ。お前の名を教えてもらえるか?」
「ルチアだけど……」
本当に何の用だろう?
この人もクラウディオほどではないけれど、そこそこ背が高い。大きく見上げなければ視線が合わないので、ああ、首が疲れるよ。
「ルチア、俺とパーティを組んでくれないだろうか?」
「待て」
ヴィットーレの願いと、クラウディオの制止の言葉がかぶる。
「んん?」
パーティって?
「それは、俺の方が、先約だ。遠慮して、もらおう」
「そうか……。ならば、仕方がない。貴殿も含めたパーティでも構わない。見たところ戦士のようだから、役割的にも問題はないだろう」
クラウディオはヴィットーレを睨みつけている。
「パーティって、なに?」
私はクラウディオの手をつついて、注意を引いた。
「ルチアは、知らないか……。冒険を、共にする、仲間の、ことだ」
ああ、社交的な方じゃなくて、そっちのパーティね。登山の時とか、前世でファンタジーなゲームで遊んだ時に、仲間を連れていたけどあんな感じかな。
「パーティって、何かいいことあるの?」
「ルチアはパーティについて、知らないのか?」
私の問いをヴィットーレが遮った。
なんだか、彼の仕草がいちいち貴族的と言うのだろうか、ちょっと大げさで鼻につく。
「こいつは、まだ若葉だ」
クラウディオが私をかばうようにヴィットーレとの間に身体を割り込ませた。
確かに私のギルドランクは若葉で、知らないことばかりだ。
「ああ、それなら知らなくとも不思議はないな。冒険者が強い魔物と戦う時はパーティを組んで役割を分担するのだ。敵の注意を引き付け、高い防御力で皆を守る盾持ち、防御よりも攻撃を優先し、敵をせん滅する攻撃役、回復魔法や補助魔法で皆を助ける回復役というようにな」
ヴィットーレの滔々とした語りに、私は黙って聞き入った。
「そうして役割を分担することで、一人が各々で戦うよりも、安全に、より効率よく魔物を倒すことができる」
「はあ……。何となくわかりました。でも、どうして私を誘おうと?」
目の前のヴィットーレはともかく、クラウディオも私をパーティに誘おうとしていたみたいだけれど、私みたいな冒険者としては初心者をどうして誘おうとするのかわからない。
ヴィットーレは片膝をついて私に視線を合わせると、まじめな顔つきで私に問いかけた。
「魔法使いが少ないということは、知っているか?」
「うん。クラウディオが教えてくれたからね」
「そうか……。ここから南の方に行くと、コルシの洞窟という迷宮がある。そこに出現する魔物には、魔法が一番有効なのだ。コルシの洞窟を攻略するために、お前の助力を得られればと思ったのだが。そうか、若葉か……」
ヴィットーレは片方の手を顎に当てて、考え込んでいる。
そういうことなら、今の私では彼の役には立てないだろう。ワンドを手に入れたおかげで魔法の威力は上がったけれど、まだまだ魔物を危なげなく倒すという所には至っていない。
迷宮がどんなところなのか知らないけれど、初心者でしかない私が攻略できるほど簡単な場所なら、パーティに誘ったりはしない気がする。
「せっかくだけど……」
「だったら私が手伝おう。お前が一日も早く若葉を卒業できるように」
ヴィットーレが私の手を取った。
「えぇ?」
私は愕然と口を開いた。
「せっかくだが、ルチアの、面倒は、俺が、見る」
クラウディオがヴィットーレの手を払う。
「クラウディオが師匠だから、別にお手伝いはいらないよ?」
「そんなこと言わずに」
ヴィットーレは私の拒否にもめげずに食い下がってくる。
なんだか変わった人だ。
それにしても、クラウディオもパーティを組みたいと思っているとは知らなかった。今まで言わなかったのは、私にプレッシャーをかけないためかな?
やっぱり、私の師匠はクラウディオがいいな。
「魔法使いは別に私じゃなくても、いいでしょ?」
「いいや、お前がいい」
この騎士は簡単に諦めそうにない。
「……どうしても、というなら、一緒に、クエストを、受けるか?」
「ええっ?」
クラウディオがそんなことを言うとは思わなかった。
私は騎士の問いにうなずいた。
「何か?」
「おお、やはりか!」
騎士は嬉しそうに顔をほころばせた。
クラウディオが持ち上げていた私を床に下ろしてくれた。
改めて、ゆっくりと目の前の騎士を観察する。彼は腰に細身の剣を下げ、背中には逆三角形の盾を背負っていた。
淡い金色の髪に、透き通った空色の瞳をした騎士は、いかにも好青年といった容貌をしていた。
「失礼した。私はヴィットーレという。騎士だ。お前の名を教えてもらえるか?」
「ルチアだけど……」
本当に何の用だろう?
この人もクラウディオほどではないけれど、そこそこ背が高い。大きく見上げなければ視線が合わないので、ああ、首が疲れるよ。
「ルチア、俺とパーティを組んでくれないだろうか?」
「待て」
ヴィットーレの願いと、クラウディオの制止の言葉がかぶる。
「んん?」
パーティって?
「それは、俺の方が、先約だ。遠慮して、もらおう」
「そうか……。ならば、仕方がない。貴殿も含めたパーティでも構わない。見たところ戦士のようだから、役割的にも問題はないだろう」
クラウディオはヴィットーレを睨みつけている。
「パーティって、なに?」
私はクラウディオの手をつついて、注意を引いた。
「ルチアは、知らないか……。冒険を、共にする、仲間の、ことだ」
ああ、社交的な方じゃなくて、そっちのパーティね。登山の時とか、前世でファンタジーなゲームで遊んだ時に、仲間を連れていたけどあんな感じかな。
「パーティって、何かいいことあるの?」
「ルチアはパーティについて、知らないのか?」
私の問いをヴィットーレが遮った。
なんだか、彼の仕草がいちいち貴族的と言うのだろうか、ちょっと大げさで鼻につく。
「こいつは、まだ若葉だ」
クラウディオが私をかばうようにヴィットーレとの間に身体を割り込ませた。
確かに私のギルドランクは若葉で、知らないことばかりだ。
「ああ、それなら知らなくとも不思議はないな。冒険者が強い魔物と戦う時はパーティを組んで役割を分担するのだ。敵の注意を引き付け、高い防御力で皆を守る盾持ち、防御よりも攻撃を優先し、敵をせん滅する攻撃役、回復魔法や補助魔法で皆を助ける回復役というようにな」
ヴィットーレの滔々とした語りに、私は黙って聞き入った。
「そうして役割を分担することで、一人が各々で戦うよりも、安全に、より効率よく魔物を倒すことができる」
「はあ……。何となくわかりました。でも、どうして私を誘おうと?」
目の前のヴィットーレはともかく、クラウディオも私をパーティに誘おうとしていたみたいだけれど、私みたいな冒険者としては初心者をどうして誘おうとするのかわからない。
ヴィットーレは片膝をついて私に視線を合わせると、まじめな顔つきで私に問いかけた。
「魔法使いが少ないということは、知っているか?」
「うん。クラウディオが教えてくれたからね」
「そうか……。ここから南の方に行くと、コルシの洞窟という迷宮がある。そこに出現する魔物には、魔法が一番有効なのだ。コルシの洞窟を攻略するために、お前の助力を得られればと思ったのだが。そうか、若葉か……」
ヴィットーレは片方の手を顎に当てて、考え込んでいる。
そういうことなら、今の私では彼の役には立てないだろう。ワンドを手に入れたおかげで魔法の威力は上がったけれど、まだまだ魔物を危なげなく倒すという所には至っていない。
迷宮がどんなところなのか知らないけれど、初心者でしかない私が攻略できるほど簡単な場所なら、パーティに誘ったりはしない気がする。
「せっかくだけど……」
「だったら私が手伝おう。お前が一日も早く若葉を卒業できるように」
ヴィットーレが私の手を取った。
「えぇ?」
私は愕然と口を開いた。
「せっかくだが、ルチアの、面倒は、俺が、見る」
クラウディオがヴィットーレの手を払う。
「クラウディオが師匠だから、別にお手伝いはいらないよ?」
「そんなこと言わずに」
ヴィットーレは私の拒否にもめげずに食い下がってくる。
なんだか変わった人だ。
それにしても、クラウディオもパーティを組みたいと思っているとは知らなかった。今まで言わなかったのは、私にプレッシャーをかけないためかな?
やっぱり、私の師匠はクラウディオがいいな。
「魔法使いは別に私じゃなくても、いいでしょ?」
「いいや、お前がいい」
この騎士は簡単に諦めそうにない。
「……どうしても、というなら、一緒に、クエストを、受けるか?」
「ええっ?」
クラウディオがそんなことを言うとは思わなかった。
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