ドラゴンが最強だなんて誰が言った?

文月 蓮

文字の大きさ
33 / 81
第二部

金髪の騎士

しおりを挟む
 尖った耳と、白い鱗に覆われたしっぽが見えているので、否定しても無駄だろう。
 私は騎士の問いにうなずいた。

「何か?」
「おお、やはりか!」

 騎士は嬉しそうに顔をほころばせた。
 クラウディオが持ち上げていた私を床に下ろしてくれた。
 改めて、ゆっくりと目の前の騎士を観察する。彼は腰に細身の剣を下げ、背中には逆三角形の盾を背負っていた。
 淡い金色の髪に、透き通った空色の瞳をした騎士は、いかにも好青年といった容貌をしていた。

「失礼した。私はヴィットーレという。騎士だ。お前の名を教えてもらえるか?」
「ルチアだけど……」

 本当に何の用だろう?
 この人もクラウディオほどではないけれど、そこそこ背が高い。大きく見上げなければ視線が合わないので、ああ、首が疲れるよ。

「ルチア、俺とパーティを組んでくれないだろうか?」
「待て」

 ヴィットーレの願いと、クラウディオの制止の言葉がかぶる。

「んん?」

 パーティって?

「それは、俺の方が、先約だ。遠慮して、もらおう」
「そうか……。ならば、仕方がない。貴殿も含めたパーティでも構わない。見たところ戦士のようだから、役割的にも問題はないだろう」

 クラウディオはヴィットーレを睨みつけている。

「パーティって、なに?」

 私はクラウディオの手をつついて、注意を引いた。

「ルチアは、知らないか……。冒険を、共にする、仲間の、ことだ」

 ああ、社交的な方じゃなくて、そっちのパーティね。登山の時とか、前世でファンタジーなゲームで遊んだ時に、仲間を連れていたけどあんな感じかな。

「パーティって、何かいいことあるの?」
「ルチアはパーティについて、知らないのか?」

 私の問いをヴィットーレが遮った。
 なんだか、彼の仕草がいちいち貴族的と言うのだろうか、ちょっと大げさで鼻につく。

「こいつは、まだ若葉だ」

 クラウディオが私をかばうようにヴィットーレとの間に身体を割り込ませた。
 確かに私のギルドランクは若葉で、知らないことばかりだ。

「ああ、それなら知らなくとも不思議はないな。冒険者が強い魔物と戦う時はパーティを組んで役割を分担するのだ。敵の注意を引き付け、高い防御力で皆を守る盾持ちタンク、防御よりも攻撃を優先し、敵をせん滅する攻撃役アタッカー、回復魔法や補助魔法で皆を助ける回復役ヒーラーというようにな」

 ヴィットーレの滔々とうとうとした語りに、私は黙って聞き入った。

「そうして役割を分担することで、一人が各々で戦うよりも、安全に、より効率よく魔物を倒すことができる」
「はあ……。何となくわかりました。でも、どうして私を誘おうと?」

 目の前のヴィットーレはともかく、クラウディオも私をパーティに誘おうとしていたみたいだけれど、私みたいな冒険者としては初心者をどうして誘おうとするのかわからない。
 ヴィットーレは片膝をついて私に視線を合わせると、まじめな顔つきで私に問いかけた。

「魔法使いが少ないということは、知っているか?」
「うん。クラウディオが教えてくれたからね」
「そうか……。ここから南の方に行くと、コルシの洞窟という迷宮ダンジョンがある。そこに出現する魔物には、魔法が一番有効なのだ。コルシの洞窟を攻略するために、お前の助力を得られればと思ったのだが。そうか、若葉か……」

 ヴィットーレは片方の手を顎に当てて、考え込んでいる。
 そういうことなら、今の私では彼の役には立てないだろう。ワンドを手に入れたおかげで魔法の威力は上がったけれど、まだまだ魔物を危なげなく倒すという所には至っていない。
 迷宮ダンジョンがどんなところなのか知らないけれど、初心者でしかない私が攻略できるほど簡単な場所なら、パーティに誘ったりはしない気がする。

「せっかくだけど……」
「だったら私が手伝おう。お前が一日も早く若葉を卒業できるように」

 ヴィットーレが私の手を取った。

「えぇ?」

 私は愕然と口を開いた。

「せっかくだが、ルチアの、面倒は、俺が、見る」

 クラウディオがヴィットーレの手を払う。

「クラウディオが師匠メンターだから、別にお手伝いはいらないよ?」
「そんなこと言わずに」

 ヴィットーレは私の拒否にもめげずに食い下がってくる。
 なんだか変わった人だ。
 それにしても、クラウディオもパーティを組みたいと思っているとは知らなかった。今まで言わなかったのは、私にプレッシャーをかけないためかな?
 やっぱり、私の師匠はクラウディオがいいな。

「魔法使いは別に私じゃなくても、いいでしょ?」
「いいや、お前がいい」

 この騎士は簡単に諦めそうにない。

「……どうしても、というなら、一緒に、クエストを、受けるか?」
「ええっ?」

 クラウディオがそんなことを言うとは思わなかった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

処理中です...