ドラゴンが最強だなんて誰が言った?

文月 蓮

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第三部

窮鳥懐に入れば……

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 一通りルフィーノ少年の話を聞き終えたところで、クラウディオが私に向かって手を差し出した。

「ルチア、コップを出せ」
「んー?」
「フェルの、茶だ。これなら、飲める、だろう」

 基本的に果物しか食べない私のために、わざわざ淹れてくれたのだ。

「わぁ、ありがと!」

 私は慌てて荷物から買ったばかりのコップを取り出し、クラウディオに手渡した。
 甲斐甲斐しくお世話をしてくれるクラウディオは、まるでお母さんみたいだ。料理ができて、気配りもできて、彼は私のお母さんよりもかなり家庭的かもしれない。

「ん……、いい匂い」

 受け取ったコップからは、甘い匂いが立ち上っていた。イチゴのような甘い匂いに誘われて口をつける。

「あちっ」

 お茶が熱くて舌先をやけどしてしまった。
 こういうのも猫舌っていうんだろうか。私はドラゴンなのだから、ドラゴン舌と言うべき?
 あつーい。でも、美味しい。甘い匂いを裏切らず、味もきちんと甘い。やっぱりお砂糖か何か入っているんだろうな。
 ふーふーと息を吹きかけて、冷ましながらお茶をすすっていると、強い視線を感じて顔を上げた。
 ルフィーノ少年の青い瞳から発せられた、うらやましそうな視線が突き刺さる。

「お前も、いるのか?」
「……もらえるならほしい。あと、ルフィって呼んでくれ」

 クラウディオは鼻で笑って、ルフィにもお茶を振る舞った。

「ありがと」
「それで、ルフィはこれからどうするんだ?」

 ほっとした表情でお茶を飲んでいたルフィは、ヴィートの問いに真剣な顔つきに変わる。

「コルシニに戻りたい。パーティメンバーがどうなったのか、ギルドへ行けばわかるだろう。彼らが無事なのか知りたい。ギルドカードも再発行しないといけないし、あんたたちにもお礼がしたい……」

 ルフィの言葉に私は驚く。

「パーティメンバーの安否がギルドでわかるの?」
「ああ。ギルドでメンバーの居場所を調べてもらうことができる。もし居場所が分からなければ、それはメンバーがギルドカードを所持していないということだ」

 ヴィートの説明に私はぞっとした。つまりは死んでいたら、居場所が分からないと……。
 ギルドカード、まじ優秀。

「そうなんだ。じゃあ、ヴィートやクラウディオとはぐれたら、ギルドに行けば居場所がわかるってこと?」
「ああ。パーティを組んだことがある者のことなら教えてくれる」

 ふんふん。じゃあ、ルフィもコルシニに行くんだ。私は思いつくままに口を開いた。

「じゃあさ、ルフィ。コルシニまで私たちと一緒に行かない?」

 ルフィは大きな目をさらに大きく見開いている。

「いいのか?」
「あ、事後承諾になっちゃったけど、クラウディオ、ヴィートもいいかな?」
「私は構わない」
「いい」

 ヴィートとクラウディオも同意してくれる。
 ちょっとお節介かな~とも思ったけれど、どうせ行く先は一緒なのだ。わざわざ離れて行くこともないだろう。情けは人の為ならずと言うからね。

「助かる。すまないけど、よろしく、頼む」

 ルフィはそう言って頭を下げた。

「どうせ行く先は一緒だ」
「ん」
「ありがとう」

 ヴィートもクラウディオもやっぱり優しい。
 でも、二人の表情が浮かない様子なのがちょっとだけ気にかかる。

「あのさ……、おかわり、ある?」

 まだ食べ足りない様子のルフィが空になった器をクラウディオに差し出す。

「ああ」

 クラウディオは苦笑しつつ、器にスープを盛り付けた。
 ルフィに聞いてみたら二日近く食べてなかったそうで、お腹がすいているのも納得だ。
 彼は鍋に残っていたスープをすべて平らげると、座ったまま船をこぎ始めた。
 まともに眠れてなかったのかもしれない。

「ルフィ、お前は俺のテントを使え」

 クラウディオが目をこすっているルフィを自分のテントへ連れて行く。
 本当にお母さんみたいだ。

「さ、私たちも寝ようか」

 ヴィートに促されると、私も急に眠気を感じた。

「うん。ふあぁ……」

 戻ってきたクラウディオがたき火に枯れ枝を追加して、薬草っぽいものを投入した。ちょっとツンと鼻をつく匂いが広がっていく。

「それ、なあに?」
「魔物避けの、香だ」
「そんなのがあるの?」
「火と、一緒に、焚いておけば、弱い魔物は、近寄れない」

 ふおぉ。便利だ。
 あんまり好きな匂いじゃないけど、それだけで魔物が近づかないなら我慢できる。

「あれ、クラウディオは寝ないの?」

 寝床をルフィに譲ってしまったら、クラウディオはどこで寝るんだろう。

「ルフィのパーティメンバーも近くにいるかもしれないし、目印になる火は絶やさない方がいいだろう。私と交代で眠れば問題ない」
「私も、火の番できるよ?」
「子供は、寝るのが、仕事だ」

 ちゃんと成竜していると言いかけて、生ぬるいヴィートの視線に気づいてやめた。二人がそういうのならば、甘えておこう。何より眠い。

「じゃあ、おやすみなさい」

 今日は久しぶりに一人で寝るんだなあと思いつつ、自分のテントで毛布に包まったところで私の意識は途切れた。
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