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第四部
懐が暖かいのは一瞬だけ?
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ギルドマスターの気配が遠ざかると、私はすぐにヴィートに尋ねた。
「どうして私たちが倒したんだって秘密にしておくの?」
「事前に説明しておけばよかったな……」
ヴィートは苦笑しながら私の頭を撫でる。
ごまかそうとするようなヴィートの態度に、むっとする。
私はとっさに彼の手を払いのけていた。
「そういう子ども扱いはあんまり好きじゃない。私だってみんなと同じ冒険者だよ。初心者だから頼りないかもしれないけど、私にだって関係あることを秘密にされたくないよ」
ヴィートの鋭く息を呑んだ音が聞こえた。
クラウディオは少し迷っている様子だったが、やがて口を開いた。
「……ルチアに、正しく、現実を、認識させる、べきだ、と思う」
「俺には判断つかねぇ」
ルフィは口を尖らせて、そっぽを向く。
「すまなかった。子ども扱いしたつもりはないが、結果的にそう見えるかもしれない。昨夜、ルチアが眠ったあとで、皆で少し話し合ったのだ。ルチアの正体について伏せておくためには、極力目立たないほうがよいだろうと思ってな……。しかも上級魔法が使えるほどの魔法使だと知られれば、他のパーティからの誘いも増えるだろう。だが今のルチアにそういった勧誘は荷が重いと思ったのだ」
ヴィートのきれいな空色の瞳が伏せられ、表情はよくわからなかった。
だけどみんなが私のことを考えて、そうしてくれたのだということは痛いほど伝わってきた。
「私のために、そうしてくれたんだ……」
うれしいような、申し訳ないような気持ちが混ざって、うまく言葉にならない。
「別にルチアのためだけじゃないぞ?」
ルフィが私の頭をくしゃりと撫で、言葉を続ける。
「俺は……、できたらずっとルチアと一緒に戦っていきたいと思ってる。ギルドランクは昇格したみたいだけど、俺にそんな実力はまだない。だけどいつまでもこのままじゃない。ルチアと一緒に戦って、強くなりたいって、思ったから……」
「うん」
私は言葉が見つからずに、ただうなずいた。
「俺も、ルチアと、一緒に、戦いたい。まだまだ、教えるべきことが、たくさんある。そして、ルチアの、師匠を務めてみて、いろいろと、学ぶことが、多かった。だから、今は、これが、一番いい、方法だと、思う」
「そっか……」
別に子ども扱いして秘密にしたわけじゃないなら、いい。
それ以上に、みんなが私のことを考えて、そういう手段を選んでくれたことがうれしかった。
確かに急に活躍したパーティがいたら注目されてしまうだろうし、ドラゴンだってこともばれる危険性が高くなるだろう。
うん、確かに私はそこまで考えてなかったよ。
きっとこういうところが、みんなを心配させてしまうんだろう。
私はみんなの顔を順番に見つめながら、ゆっくりと口を開いた。
「生意気なこと言って、ごめんなさい。いろいろと考えてくれてありがとう。だけど、私だっていつまでも守られるだけでいたくない。次からは、足りないところは教えてほしいし、嫌なことでも相談してほしいな」
「そうだな……。いつまでこのパーティでいられるかはわからないが、今後は気をつけよう」
ヴィートにそう言われて、私はいつまでもこのパーティでいられるわけじゃないことを、ようやく思い出す。
ヴィートは最初からコルシの迷宮に行きたいって言っていたから、目的を達成してしまった今、一緒にいる理由はなくなってしまった。
クラウディオだって、いつまでも師匠でいてくれるわけじゃない。私のギルドランクが上がってしまったから、もう師匠制度は解消しようと言われてもおかしくない。
魔力切れじゃないのに、頭からざあっと血の気が下がるような気分に襲われる。
「ヴィートはパーティを抜けちゃうの?」
自分でも情けないほど声が震えているのがわかった。
「いや、そのことについてはゆっくりと話をしたかったんだが……、今は無理そうだ」
ヴィートの視線が示す先に目を向けると、ギルドの職員が二人、申し訳なさそうに、扉のところで立っていた。
「あのー、入ってもよろしいですか?」
「どうぞ」
ヴィートが許可を出すと、職員は両手いっぱいに荷物を持って入ってきた。
ソファの前に置かれた机の上に、持っていた荷物を並べていく。
「ええっとですね、今回の緊急クエストの報酬について説明させていただきますね」
眼鏡をかけた職員が眼鏡の縁を持ち上げて位置を直し、話し始めた。
「まず、クエストの参加報酬として、銀貨一枚が各自に与えられます。それから迷宮の主の討伐報酬として金貨二枚が加算されます」
金貨二枚というのは、私が想像していたよりも多かった。ギルドにお願いした私たちの情報を伏せておいてほしいという依頼料が差し引かれているらしいけど、それでもかなりの金額になる。
もうひとりの職員が、私たちの前にそれぞれ金貨と銀貨を置いていく。
ルフィが金貨の輝きに負けないほど目を輝かせているのが、なんだかおかしかった。
「それから、魔石は特級と鑑定されましたので、金貨五枚となります」
四人の山とは別に、五枚重なった金貨が机の上に置かれた。
「そして、地長竜の前足ですが、金貨三枚となりました」
五枚の金貨の上に、更に三枚が積みあがる。
ふおおぉ! すごく興奮してきたよ。
「報酬については以上となります。ご質問、疑問などはございませんか?」
「ない」
短いクラウディオの返事に、ギルドの職員がほっとした表情を見せる。
「均等配分でいいな?」
「うん」
ヴィートに聞かれて私は肯定する。みんなもうなずいたので、ヴィートが八枚の金貨をそれぞれの山に分配してくれた。
わーい、金貨四枚だぁ! これで何を買おうかな? 壊れちゃったワンドの代わりはもちろんだけど、装備も破れちゃったし、そろえないといけないなぁ。あれ? せっかくの収入だけど、すぐになくなっちゃうんじゃないの?
私は金貨を腰の物入れに片付けたところで、恐ろしいことに気付いてしまった。
ギルドの職員はそんな私にかまわず話を続けていた。
「では、続きましてギルドランクの昇格手続きに移りましょう」
職員は持ってきた荷物から魔道具を取り出した。
それはギルドの窓口でよく見かける機械だった。
「どうして私たちが倒したんだって秘密にしておくの?」
「事前に説明しておけばよかったな……」
ヴィートは苦笑しながら私の頭を撫でる。
ごまかそうとするようなヴィートの態度に、むっとする。
私はとっさに彼の手を払いのけていた。
「そういう子ども扱いはあんまり好きじゃない。私だってみんなと同じ冒険者だよ。初心者だから頼りないかもしれないけど、私にだって関係あることを秘密にされたくないよ」
ヴィートの鋭く息を呑んだ音が聞こえた。
クラウディオは少し迷っている様子だったが、やがて口を開いた。
「……ルチアに、正しく、現実を、認識させる、べきだ、と思う」
「俺には判断つかねぇ」
ルフィは口を尖らせて、そっぽを向く。
「すまなかった。子ども扱いしたつもりはないが、結果的にそう見えるかもしれない。昨夜、ルチアが眠ったあとで、皆で少し話し合ったのだ。ルチアの正体について伏せておくためには、極力目立たないほうがよいだろうと思ってな……。しかも上級魔法が使えるほどの魔法使だと知られれば、他のパーティからの誘いも増えるだろう。だが今のルチアにそういった勧誘は荷が重いと思ったのだ」
ヴィートのきれいな空色の瞳が伏せられ、表情はよくわからなかった。
だけどみんなが私のことを考えて、そうしてくれたのだということは痛いほど伝わってきた。
「私のために、そうしてくれたんだ……」
うれしいような、申し訳ないような気持ちが混ざって、うまく言葉にならない。
「別にルチアのためだけじゃないぞ?」
ルフィが私の頭をくしゃりと撫で、言葉を続ける。
「俺は……、できたらずっとルチアと一緒に戦っていきたいと思ってる。ギルドランクは昇格したみたいだけど、俺にそんな実力はまだない。だけどいつまでもこのままじゃない。ルチアと一緒に戦って、強くなりたいって、思ったから……」
「うん」
私は言葉が見つからずに、ただうなずいた。
「俺も、ルチアと、一緒に、戦いたい。まだまだ、教えるべきことが、たくさんある。そして、ルチアの、師匠を務めてみて、いろいろと、学ぶことが、多かった。だから、今は、これが、一番いい、方法だと、思う」
「そっか……」
別に子ども扱いして秘密にしたわけじゃないなら、いい。
それ以上に、みんなが私のことを考えて、そういう手段を選んでくれたことがうれしかった。
確かに急に活躍したパーティがいたら注目されてしまうだろうし、ドラゴンだってこともばれる危険性が高くなるだろう。
うん、確かに私はそこまで考えてなかったよ。
きっとこういうところが、みんなを心配させてしまうんだろう。
私はみんなの顔を順番に見つめながら、ゆっくりと口を開いた。
「生意気なこと言って、ごめんなさい。いろいろと考えてくれてありがとう。だけど、私だっていつまでも守られるだけでいたくない。次からは、足りないところは教えてほしいし、嫌なことでも相談してほしいな」
「そうだな……。いつまでこのパーティでいられるかはわからないが、今後は気をつけよう」
ヴィートにそう言われて、私はいつまでもこのパーティでいられるわけじゃないことを、ようやく思い出す。
ヴィートは最初からコルシの迷宮に行きたいって言っていたから、目的を達成してしまった今、一緒にいる理由はなくなってしまった。
クラウディオだって、いつまでも師匠でいてくれるわけじゃない。私のギルドランクが上がってしまったから、もう師匠制度は解消しようと言われてもおかしくない。
魔力切れじゃないのに、頭からざあっと血の気が下がるような気分に襲われる。
「ヴィートはパーティを抜けちゃうの?」
自分でも情けないほど声が震えているのがわかった。
「いや、そのことについてはゆっくりと話をしたかったんだが……、今は無理そうだ」
ヴィートの視線が示す先に目を向けると、ギルドの職員が二人、申し訳なさそうに、扉のところで立っていた。
「あのー、入ってもよろしいですか?」
「どうぞ」
ヴィートが許可を出すと、職員は両手いっぱいに荷物を持って入ってきた。
ソファの前に置かれた机の上に、持っていた荷物を並べていく。
「ええっとですね、今回の緊急クエストの報酬について説明させていただきますね」
眼鏡をかけた職員が眼鏡の縁を持ち上げて位置を直し、話し始めた。
「まず、クエストの参加報酬として、銀貨一枚が各自に与えられます。それから迷宮の主の討伐報酬として金貨二枚が加算されます」
金貨二枚というのは、私が想像していたよりも多かった。ギルドにお願いした私たちの情報を伏せておいてほしいという依頼料が差し引かれているらしいけど、それでもかなりの金額になる。
もうひとりの職員が、私たちの前にそれぞれ金貨と銀貨を置いていく。
ルフィが金貨の輝きに負けないほど目を輝かせているのが、なんだかおかしかった。
「それから、魔石は特級と鑑定されましたので、金貨五枚となります」
四人の山とは別に、五枚重なった金貨が机の上に置かれた。
「そして、地長竜の前足ですが、金貨三枚となりました」
五枚の金貨の上に、更に三枚が積みあがる。
ふおおぉ! すごく興奮してきたよ。
「報酬については以上となります。ご質問、疑問などはございませんか?」
「ない」
短いクラウディオの返事に、ギルドの職員がほっとした表情を見せる。
「均等配分でいいな?」
「うん」
ヴィートに聞かれて私は肯定する。みんなもうなずいたので、ヴィートが八枚の金貨をそれぞれの山に分配してくれた。
わーい、金貨四枚だぁ! これで何を買おうかな? 壊れちゃったワンドの代わりはもちろんだけど、装備も破れちゃったし、そろえないといけないなぁ。あれ? せっかくの収入だけど、すぐになくなっちゃうんじゃないの?
私は金貨を腰の物入れに片付けたところで、恐ろしいことに気付いてしまった。
ギルドの職員はそんな私にかまわず話を続けていた。
「では、続きましてギルドランクの昇格手続きに移りましょう」
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それはギルドの窓口でよく見かける機械だった。
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