ドラゴンが最強だなんて誰が言った?

文月 蓮

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第四部

ギルドランク昇格

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「ギルドカードを出していただけますか?」

 眼鏡をかけた職員に告げられて、私は物入れに入っていた銀色のギルドカードを取り出し、職員に手渡した。
 職員は機械に通してから、カードを差し出す。

「おめでとうございます。星三つですね」

 眼鏡の奥の目がにっこりと笑っていた。

「ありがとうございます!」

 手元に帰ってきた銀色のカードには、星が三つ燦然と輝いている。
 いずれこのランクに見合うだけの実力を身につけられるように、がんばろう。
 星を見つめる私の顔は、きっとにやにやと笑み崩れているに違いない。
 ヴィート以外は順番にカードを渡して手続きを済ませる。

「こちらはヴィットーレ様にお渡しする紹介状です」

 職員はヴィートに封蝋のついた手紙を渡した。

「さて、ギルドでの手続きは以上となります。ご依頼の件についてはギルドマスターが責任を持って対応すると申しておりましたので、ご安心ください」

 眼鏡をかけていないほうの職員は、機械を手にさっさと部屋を出て行く。
 残された眼鏡の職員はにっこりと笑った。

「それでは、ルチア様にはお勧めの武器屋を紹介させていただきたいと思います。お時間はよろしいですか?」
「はい。あ、みんなはどうするの?」

 うなずいたものの、みんなの予定を確認しないとね。

「俺は、魔石を、換金、してくる」
「では、私もそうしよう」

 クラウディオとヴィートはギルドで用事を済ませてくるつもりらしい。

「じゃあ、俺が一緒に行ってやるよ。新しいワンドを買うなら、同じ魔法使いとして助言もできそうだし……」
「ありがとう、ルフィ」

 そんなわけで、私はルフィと一緒に武器屋へ行くことになった。




 ギルドの職員さんが案内してくれたのは、大通りから二本ほど路地に入った、奥まった場所にあるお店だった。
 付近には職人の工房が多いらしく、金属を叩く甲高い鍛冶の音が聞こえてくる。
 職員がある門の前で立ち止まった。
 そこには看板もかかっておらず、教えてもらわなければ気付かずに通り過ぎてしまうよう場所だ。
 うっすらと店の名前が刻み込まれた、手のひらほどの大きさのプレートがかろうじてそこが店であることを示している。

「ちょっと偏屈な店主ですが、腕は一流ですから」

 あまり安心できそうもないことを言いながら、職員は扉を押し開いて私たちを店の中にいざなった。

「ジャンパオロさーん」

 職員は店の奥に向かって声を張り上げた。
 薄暗い店の中には壁一面が棚になっていて、棚板の上には杖や、古びた本が並んでいる。

「すげぇ……」

 ルフィが小さな声で呟いた。
 確かにここまで多くの杖は、これまで見たことがない。
 私はゆっくりと棚に近づいて、埃をかぶった杖を一つ持ち上げた。
 ふうっと息を吹きかけて埃を払い、杖の先端についている飾りを撫でてみる。
 とても繊細な彫金細工が施されていて、その美しさに私は息を呑んだ。

「きれいだねぇ……」
「ああ。すごくいい杖ばかりだ……。なのにどうしてこんなに埃をかぶってるんだ?」

 ルフィは首を傾げている。

「ジャンパオロさーん!」
「そんなにわめかんでも、聞こえとるわい」

 何度目かにギルドの職員が声を張り上げたとき、ひげもじゃの壮年の男性がようやく奥の扉から姿を現わした。

「ああよかった、いらしてくださって! 今日はお客様をお連れしたんですよ」
「ふん。客なんざ、紹介してもらわんでも間にあっとる」

 店主らしき男性は腕組みをして、そっぽを向いた。
 とても客商売をしているようには見えない。こんな不遜な態度じゃ、商品が埃をかぶってしまっているのも当たり前だ。

「そんなことをおっしゃらずに。うちのギルドマスターから、くれぐれもよろしくと頼まれているんですから~」
「ふん」

 店主は組んでいた腕をほどき、すばやい足取りで私に近づいた。
 大抵の人は私よりも大きいので、見上げることが多いのだが、この男性の身長はそれほど高くない。耳が尖っているところを見ると、森人しんじんの血を引いているのかもしれない。
 どんぐりのように大きな茶色の瞳が、じっと私を見つめたかと思うと、更に大きく見開かれる。

「まさか……」

 うわ~、もしかして、またばれたの?
 森人の血を引くフェルナンドに、正体を見破られたのは記憶に新しい。
 私は黙ったまま、じっと大きな瞳を見つめ返した。

「ええっと、ルチアさん。こちらは武器の中でも杖を専門に作っている職人のジャンパオロさんです」

 眼鏡のギルド職員さんが、私たちの間に流れる微妙な空気に気付くことなく紹介を始める。

「それから、こちらが我がギルド期待の新人冒険者ルチアさんです。杖が壊れてしまったということで、こちらにお連れした次第です。どうか彼女にふさわしい杖をお願いします」
「あ……、ちょっと……」

 職員はぺこりと頭を下げると、さっさと店を出て行ってしまった。
 ものすごくジャンパオロさんからの視線を感じる。
 助けを求めてルフィの姿を探したが、店内に飾られている杖を夢中になって見学している。
 どうやら助けは期待できそうにない。

「ええっと……、ワンドを見せてもらえますか?」

 ジャンパオロはひげの奥から鋭い視線で睨みつけている。

「壊れた杖は?」

 確か荷物の奥にしまっていたはずだ。たとえ壊れてしまったワンドでも、値段が高かったこともあり、何かの素材には使えるかもしれないと思って、回収していた。
 私は背中の荷物入れを探った。

「……あった。これです」
「ふん、安物だな」

 ジャンパオロはワンドの残骸を鼻で笑った。
 これでも銀貨十枚はしたんだよ? 私的にはとってもお高い買い物だったんだから!

「こっちだ」

 ジャンパオロがあごを突き出してある方向を示す。
 私はワンドを手に黙って彼の後に続き、促されるままに店の隅に移動した。

「ちょっと、それを貸せ」

 ジャンパオロが手を差し出す。職人らしいごつごつとして真っ黒な、厳つい手だ。

「はい、どうぞ」
「なんの魔法を使ったらここまで派手に壊れるんだ?」
「えっと、アイスプリズン?」
「はあっ!?」

 ジャンパオロはあんぐりと口を開けた。

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと、待て。お前、上級魔法が使えるのか?」
「うん」

 本当のことを言っただけなんだけど、まずかったのかな?
 私は不安に眉の両端をしょんぼりと下げた。

「おっさん、嘘みたいに聞こえるけど本当のことだぜ? 俺も見たからな」

 それまで存在感のなかったルフィが会話に割り込んできた。

「はあ……、なるほど。そりゃ、ぶっ壊れてもしかたねぇな。こんな安物じゃ、耐え切れるはずがねぇ」
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