上 下
80 / 100
第2章 アリタリカ帝国に留学

80 盗賊退治

しおりを挟む
 マリエルはサイクロプスの魔石をマジックバッグにしまってから辺りを見回します。
 盗賊達は蜘蛛の子を散らすように、散り散りに逃げて居なくなっていました。


「まぁ、どうしましょう。せっかく沢山集まって下さったのに1人も居なくなってしまいましたわ」

「お嬢様、何処かに盗賊達の集合場所かアジトがあると思いますよ」

「そうですね、エリザ。 スズちゃん、何処に居るか調べてくださいな」

「は~い。盗賊を【索敵】!」

 シュィイイイイインッ!


「北東に1キロ程離れた所に、盗賊達が集まり始めています」

「宰相のサッチャン、どういたしましょうか?」

「目の上のタンコブは排除いたしましょう」

「領主としては、看過かんかできませんものね」

「はい、治安向上も大事な仕事の1つです」


「ケンちゃん、サイクロプスの石像をマジックバッグにしまっといてね」

「オッケー」

 シュィイイイイインッ!


「御嬢様、石像を持って帰ってどうするのですか?」

「ローザンヌの観光名所に、ランドマークとして設置しようかと思ったのです。おほほほほ」

「そうですか。まぁ、この世界の人の反応は想像できませんが置いてみましょう」


 私達は馬車に乗り込み、盗賊が集まってる方へと向かいました。



「爺さん、ストーップ!」

『……』

 森が深くなって来たので、サチコがジークンに馬車を止めさせます。


「この先は道がありませんので、ここに馬車を置いていきましょう」

「う~ん……マリちゃん、心配だから馬車は【転移門】でローザンヌに返しとこうよ」

「それがいいわね。じゃあ、ケンちゃんお願いね」

「オッケー。グリュエーレ城に【転移門】オープン!」

 ブゥウウウウウンッ!

 ケンちゃんは【転移門】を開き、馬車をローザンヌのグリュエーレ城に置いて来ました。


「それではいつもの陣形で盗賊のアジトを目指しましょう」

「「「オォゥ」」」



 10分程歩いて、私達は盗賊達のアジトを見つけます。

「御嬢様、彼らは逃げ切れたと思って安心しきっているようです。不意打ちで強襲しましょう」

「それが良いですわね。では、早速参りましょう」


 私は何気にスタスタと歩いて、盗賊達に近づいていきます。

「あっ、御嬢様! 待って下さい、1人で先行しないで……」


「盗賊達に【フラッシュ】!」
 ピッカァアアアアアッ!

「「「「「うっわぁあああああ……」」」」」


「【ブラインド】!」
 シュィイイイイインッ!

「「「「「ぎゃぁあああああ……」」」」」


「【石化】!」
 ピッキィイイイイインッ!

「「「「「ひぃいいいいい……」」」」」


 盗賊達の人数が多い為、私は積極的にスキルを発動していきます。
 人命を無闇に失いたくないという理由からなのでした。


「エリザ、エリシャナ、歯向かう者や暴れる者は峰撃ちでお願いします」

「「はい」」


「ケンちゃん、スズちゃん、ピーちゃんは【土弾】や【水弾】で、命を奪わない程度の強さでお願いします」

「「は~い」」
「キュ~ル」



「エリザ、観念した盗賊から、後ろ手にロープで拘束してくださいな」

「はい、畏まりました」


 マリエルは拘束した盗賊達を1箇所に集めると、

「捕まえた盗賊達の魂を【浄化】!」

 ピッキィイイイイインッ!

「「「「「はぁああぁ……」」」」」

 盗賊達は魂の毒気が抜けて大人しくなりました。みんな穏やかな顔になっています。


「貴方達はレオポルド侯爵領かローザンヌ領に行き、犯罪奴隷として教育を受けながら働いて貰う事になると思います。仕事を用意して生活が安定するようにしますので、もう悪い事はしないでくださいね」

「「「「「はい」」」」」


「刑期が終わった後も衣食住を保障しますから、安心して地道に働くのですよ」

「「「「「はい」」」」」


「病気や怪我をしたら遠慮しないで申し出るのですよ」

「「「「「はい」」」」」


「刑期中も衣食住は保障されますが、要望があれば仰って下さいね」

「「「「「はい」」」」」


「くううう……なんてやさしい御嬢様なんだぁ! うおおおぉぉぉんっ、うぉん、うぉん……」
「ひっくぅ、おおい、おい、おい……」

 盗賊達の幾人かは涙を流して、すすり泣き始めました。


「刑期が終わったら結婚して家を持ち、家族と安定した生活をしましょうね」

「「「「「はい」」」」」

「「「「「ありがとうございますだあああぁぁぁ……」」」」」


「マリちゃんそのぐらいでいいんじゃない? 涙と鼻水で汚くなっちゃうから! 拘束してるから自分で拭けないから」

「あら皆さん、御免なさいね。盗賊達を【洗浄】【消毒】【乾燥】!」

 シュワワワワアアアァァァンッ!


「御嬢様、これだけの人数を受け入れるのなら、レオポルド侯爵領都ウォルフスベルクの城が良いと思いますが?」

「そうですねエリザ。 ケンちゃん、又【転移門】をお願いね」

「オッケ~。ウォルフスベルクの城に【転移門】オープン!」

 ブゥウウウウウンッ!

 盗賊達は大人しくゾロゾロと【転移門】のゲートを潜りました。



 あたりを調べていたスズちゃんが戻って来て、私に報告します。

「御姉様、この先の山肌に洞穴がありました、中には彼らが溜めた戦利品があります。それと拘束されてる女性が3人いました」

「まぁ、家族の下に返してあげましょうね」

「はい」


「戦利品はマジックバッグに回収して倉庫に保管してください。持ち主が分かる物は返しましょうね」

「はい、畏まりました」

 エリザとエリシャナは広場にあった武器や馬も回収します。
 私は歩きながら、見える範囲の薬草や鉱物等を、ついでに【採取】しました。


「御嬢様、この森に居る筈の無いサイクロプスの調査もしなければなりません」

「サッチャン、領民の安全の為にもそれは必要な事ですわね」

「はい」


「スズちゃん、サイクロプスに繋がりそうな情報は有りませんか?」

「魔力溜りが、ちょっと離れた所にあります」

「魔力溜りですか……そこに行って見ましょう」

「「「はい」」」


 10分程歩いて行った所に、黒い沼の様な魔力溜りがありました。

「う~ん、禍々まがまがしい嫌な感じがしますね。ここからサイクロプスが出てきたのかしら?」

「はい、そうかもしれません」


「黒い沼を【浄化】!」

 ピッキイイイイイイイイイイイイイィィィィィンッ!


「ハァハァハァ……やっぱり穢れてましたね、あまりのひどさに魔力が底を付きそうに成りましたわ。黒い沼って恐ろしいですわね」

 黒い沼は浄化されて綺麗な湖に成りました。


「それにしても、どうして穢れて黒くなったんでしょうね?」

「はい、誰かが何かをしたのでしょうか?」


「『災厄の偶像』のように、誰かが意図的に作ったのかもしれませんね」

「まぁ、大きな被害が出る前に防げたのですから良しとしましょう」

「はい」


「それでは、試験馬車輸送の旅を続けましょう」

「「「は~い」」」


「って、まだ続けるんかい!」

 と、サチコがツッコミました。
しおりを挟む

処理中です...