チートなんて簡単にあげないんだから~結局チートな突貫令嬢~

まきノ助

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第3章 魔族王国の迷子令嬢

92 囚人護送馬車の護衛依頼

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 王都は南の方角だそうです。

 ジャマング王国ノスロンド町は、魔族大陸の東の果ての、更に北に位置していました。
 東には大海原おおうなばらがあるだけなのです。
 北は凍てつく氷の大地で、国どころか街もありません。僅かに狩人などが、少数で点在して住んでるとの事でした。

 私達『タイガーケイブ』と『ベアーファング』は、丸1日休息と準備に費やして、翌日の朝早くに街を出発しました。
 2台の囚人護送車には、囚人達を15人づつ計30人乗っているそうです。
 2組のパーティー10人と私は、1台の同じ馬車に乗りますが、交代で2人づつが前後を騎乗で守ります。

 他に冒険者やギルドスタッフはいません、襲撃が予想されるのでお断りしたそうです。
 同行予定だったギルドの副長も断られて喜んでいました。


「悪いなぁ、王都へ無事に辿り着く事を祈っているよ」

「なぁに、俺達だけの方が向こうも遠慮なく襲ってくるだろう。その方が好都合だからな」

 見送りに来たギルドの副長とジルベルトが、そんな会話をしていました。


「出発に先立って『ベアーファング』のメンバーをお嬢ちゃんに紹介しよう。『ベアーファング』は全員が熊人族なんだ。
  まずはリーダーの『ドリー・ファング』だ」

「よろしくな」


「続いて、その弟の『テリー』」

「よろしくぅ」


従兄弟いとこの『スタン』」

「ウイイイイイッ! よろしくっ」


「首に太いチェーンを掛けてるのが、ドリーの腹違いの弟『ブルーザー』」

「ハッ、ハッ、ハッ、やってやんよ!」

「お手柔らかにお願い致します」

 ブルーザーはマリエルの顔を見て、ニマァと相好をくずします。

「可愛いお嬢ちゃん、俺に任せろ。何も心配いらないぞ」

「はい、よろしくお願いします」


「最後に謎の西方熊人族の『ハン』だ。『キラーハーン』という二つ名を持ってるんだぞ」

「竹が好きなんだけどぅ、実は雑食だよぅ」

 野太い声に丸い大きな体で、白い体毛の中に目の周りと耳が黒いのでした。


「パンダさん、よろしくお願いいたします」

「ちがうちがう、ハンだ」

「はんださん?」


「ハン!」

「ごめんなさい。ハンさん、よろしくお願いいたします」

「オッケー」


「なんか……パンダさんの方が似合ってるなぁ」

「あぁ、しっくりくるな。不思議とな」

「じゃあ、パンダに変えるかなぁ」

「「「はっはっはっはっは~」」」


『御嬢様ぁ、鋼鉄ジークンは馬車の馭者ぎょしゃをさせる為に、御嬢様が御作りになられたゴーレムなのですよぅ』

「そうだったんだね。寡黙で控えめで確かに馭者に向いてるわね」


「ヘエエ、じゃあ俺達の馬車はそのジークンていう爺さんに頼もうかな?」

「は~い、分かりましたぁ。ジークンよろしくねぇ」

「……」
「「「……」」」


『御嬢様ぁ、鋼鉄ジークンは喋れませんよぅ』

「そうなんだね、普通のゴーレムは喋らないものね」

「むしろ喋るゴーレムなんて、きっとアダモ以外に居ないよなぁ」

「そうよねぇ」


『じゃあ、私がゴーレムを代表して沢山お喋りしますぅ』

「いやいや、喋らなくてもいいから、むしろもう少し大人しくしてくれ」

『ひぇっ、もっと大人しくぅ?……』


「アダモちゃん、お返事は?」

『は~い』
 アダモちゃんは渋々言いました。



 私はインベントリに沢山の荷物を収納しました。より快適に護衛する為なのです。
 時間経過しないから、お料理やパンやスープなども沢山入れました。
 お菓子も時間の限り作って入れました。と言っても、作れる物はそんなに多くありませんが。
 小麦や卵、芋類が豊富だったのでクッキーやタルトを作ったのです。

「マリエルちゃん、無理しないでインベントリに収納してね、沢山収納したせいで魔力が枯渇しないように気を付けるのよ」

「は~い」

 私は時々、自分のMPをチェックしていますが、満タンの侭で全然減る様子がありません。【魔力消費減】【魔力回復増】スキルのお陰だと思います。


 冒険者ギルドの前を出発して馬車は街を出ました。王都まで10日程掛かる予定だそうです。

 基本的に途中の街には宿を取らずに、郊外などでキャンプをするそうです。
 囚人を助けに来た者と争いになった時に、街に迷惑を掛けない為だそうです。
 そして勿論、私達の食事は自炊する事になります。
 囚人の食事はパン1個とスープ1杯だけだそうです、ちょっと可哀想ですね。

 街道は草原から森に入り、しばらく進むと早速オーク3匹に襲われました。
 魔物は2メートルぐらいの体長で丸々と太っています。

 馬上のマッシュが弓を射て、リーゼが【氷弾】アイスバレットを撃ちました。

「オークだぁ! 外に出て加勢してくれ!」

「「「オオゥ」」」


 しかし、さすがA級冒険者パーティーです、秒で余裕で返り討ちにしてしまいました。

 ジルベルトが倒したオークを眺めながら言います。

「オークも腹をすかして、街道を旅人が通るのを待っていたみたいだなぁ」

「うむ、しかし早速オークが襲ってきてくれて良かった。オーク肉が大量に入った事で晩飯が期待できるからな!」

「そうねぇ、でも大きなオークだから解体を手伝ってね、料理は私達女性陣が美味しく作ってあげるから」

「勿論さ、言ってくれれば何でも手伝うぜ。美味しく食べさせて貰うんだからなぁ」


「食料に余裕があるので、囚人たちにも御裾分けしてあげましょう」

「お嬢ちゃんは優しいなぁ」

「だって、こんなに食べ切れないでしょう? ポークソテーを1切れづつ40人に配っても、まだ残りますでしょう?」


 大陸の最果ての森には野生の獣が沢山いるそうです。
 ホーンラビット、ボア、ベア、レインダー等、食べられる獣を見つけては肉の補充するのでした。
 とりあえず、インベントリに収納しておけば時間劣化しないので、狩った獣の血抜きを休憩中にするのです。

「頸動脈を切って、ロープで足を結んで、逆さに木に吊るすんだ。止めを刺さずに心臓を止めない様にすると、より早く血が抜けるんだぞぅ」

「へぇぇ、さすがお詳しいのですね」

「ふんすっ、そんな事ねぇよぅ」

 ヘクトルさんがドヤ顔で誇らしげに笑っていました。


 約40人の食事ですから沢山食材が必要ですが、インベントリに入れておくと腐らないので食品ロスの心配はありません、最後の一切れまで無駄にする事は無いのでした。
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