ハゲエルフ~薄毛率0%のエルフなのに禿げた

伊瀬カイト

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第16話 ハゲエルフと魔王

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 ここは大魔樹林たいまじゅりんの北にある魔族の生息地。この地は危険な大魔樹林に隣接する形で魔王が住まう魔都が存在している。

 魔都では今、多くの住民が魔王城の前に集まっていた。彼らは皆、魔王の登場を待ちわびる。

 魔王に先だって、魔族の宰相が登場。民達のボルテージは上がり、宰相は拳を振り上げて高らかに宣言した。

「漸くだ…。漸く我らの悲願が叶う時!我らが魔王様の御出陣である!」

「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉおおお!」」」」」

 魔王が登場して民達のボルテージは最高潮に達した。偉大なる魔王の姿に失神する者まで現れた。

 それも1人や2人ではない。

 3人もの民が失神して卒倒したのであった。

 魔族の悲願。それは大魔樹林を手中に収め、それを足掛かりに人間達の生息域に攻め込む。

 そして魔族による世界征服を実現する事である。

 先陣を切るのは歴代最強と名高い魔王クロ…クロ…クロカンブッシュとか、そんな感じの名前のやつである。

「…」

 無口なクロ…なんとかは、民を一瞥だけして翼で羽ばたいた。

 目指すは多くの魔物が跋扈する大魔樹林。その中央部である。

「ソドム…オーバーグレード」

 大魔樹林へ入り、少なくない魔物を軽々と始末したクロ…何とかは、大魔樹林も言われている程に大した事は無いと余裕綽々で中央部を目指していた。

 少しばかり中二病臭い部分はあるものの、歴代最強の魔王と呼ばれる実力は本物。大魔樹林に魔王単騎で入ったのは、他のどんな実力者も彼にとっては足手纏いにしかならないからである。

 果たして魔王クロ…なんとかの覇道を止められる者は、この大魔樹林にも存在するのだろうか?いいや、存在する筈が無い。と、クロ…なんとかは、ブツブツと口に出して言っている。

「む…この香りは…」

 地上の遥か上空を飛んでいるクロ…もう魔王でいいや。魔王の鼻が、何やら旨そうな香りを感じ取った。何の香りかはわからないが、兎に角旨そうなのだけはわかる。

 そんな不思議な香りに引き寄せられて、魔王が目にしたのは謎の黒い物体であった。

「何という旨そうな香りをさせているのだ…」

 そんな言葉が思わず口から零れて、ゴクリと生唾を飲む。

「いや、いかん!どう見たって食える物ではないであろう!」

 その通り。それは亜空間のような異常な黒色をしていて、食べるどころか触る事すら躊躇われる見た目をしているのだ。

「それにしても旨そうだが…。いや、いかん!これは罠であろう!我をこれ以上進ませまいとする何者かの罠だ!この程度の誘いに抗えぬ我ではない!我を舐めるなよ!」

 1人になるとやけに饒舌な魔王は謎の黒い物体を放置して先を急いだ。幾ら腹が減っていようとも、魔王の強靭な精神力をもってすれば誘惑に抗う事など容易いのだ。

 魔王は食中毒で死亡した。
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