NOT THE GAME~現実世界とリンクする

伊瀬カイト

文字の大きさ
10 / 44
プロローグ

しおりを挟む
 偶然か…?
 偶然の線は…大いにあり得る。
 柊がスーパーへ買い物に行く姿は、部屋の窓から頻繁に見掛ける。

 だが、NOT THE GAMEのNPCとは違う、現実の柊が同じ理由で、同じ口調で、同じ言葉を口にするなんて。
 そんな事が有り得るのだろうか?

 何故だろう…。
 何故だか冷や汗が止まらない…。
 まさか、本当に…?

 一も二も無く、俺はこんな言葉を口にしていた。

「柊、俺もついて行って良いか?」

 覚えている限りで、同じ言葉をなぞって。

「珍しいね。どういう風の吹き回し?」

 また同じ。

「それは、あれだよ。今日はそういう気分なんだ」

 頭の中が真っ白で、咄嗟に理由が出てこなかった。
 俺が魔物から守ってやるだなんて、頭がおかしくなったと思われかねない。

「変な裕ちゃん。それじゃあ、久しぶりにお買い物に付き合って貰おっかな」

「あ、ああ。行こうぜ」

「うんうん、裕ちゃんとお買い物だなんて、小学生の時以来だよね」

「そう…だったか?」

「そうだよー。調理実習の食材を買いに行った時。あの時の裕ちゃん、私も半分持ってあげるって言ってるのに、これは男の子の仕事だって絶対に袋を放さなかったんだよね」

「そんな事あったか?」

「あったよ!私、子供ながらに男の子って頼りがいがあるんだなーって思ったもん!結局途中で限界になっちゃって、私が袋の底を支えながら帰ったけどさ」

「そんな事…あったか?」

「あったあった!次の日腕が上がらないとか言って、裕ちゃん以外の班の子で作ってさ。裕ちゃんは試食係とか言って点数つけて回ってたのがバレて先生に怒られてたでしょ?」

「そんな事…あったかな…?」

「あったじゃん!そのあと先生に罰として家で料理を作って皆に振舞いなさいって宿題出されてさ、お酒に梅入れたので先生買収しようとして、もっと怒られてたじゃんっ!あれ、今思い出すと当時よりも面白くって笑っちゃうんだよねっ。あははっ!意味わかんないよっ!どうして小学生がお酒で買収しようって発想になるのよっ!面白っ…お腹痛いっ…」

「そんな事…あったな…」

 あの頃の俺は、怖いもの知らずで、今よりもファンキーな事を平然とやっていた気がする。
 恐れを知らない子供って無敵だからな。

 あの担任教師、梅酒を没収したくせに子供の俺に雷落とすなんて、なんて理不尽な大人なんだ。
 名前は確か…柴沢だったか。
 思いだしたらムカムカしてきた。
 どこかで遭ったら一言言ってやるぜ。

「梅酒代、980円になりますってなぁ!」

「あははっ!急にどうしたのよっ…。はあ、おかしいっ…」

 道すがらの会話はNPCとした会話とは違う内容で、現実の幼馴染との会話を心の底から楽しむ事が出来た。

 やっぱり偶然だ。
 NOT THE GAMEと現実がリンクするだなんて、そんな事が起こる筈もない。

 そう考えを改めかけた俺が疑念を深めたのは、買い物を済ませたすぐ後の事である。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

ミックスブラッドオンライン・リメイク

マルルン
ファンタジー
 ある日、幼馴染の琴音に『大学進学資金』の獲得にと勧められたのは、何と懸賞金付きのVRMMOの限定サーバへの参加だった。名前は『ミックスブラッドオンライン』と言って、混血がテーマの一風変わったシステムのゲームらしい。賞金の額は3億円と破格だが、ゲーム内には癖の強い振るい落としイベント&エリアが満載らしい。  たかがゲームにそんな賞金を懸ける新社長も変わっているが、俺の目的はどちらかと言えば沸点の低い幼馴染のご機嫌取り。そんな俺たちを待ち構えるのは、架空世界で巻き起こる破天荒な冒険の数々だった――。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

処理中です...