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春江望杏
retry3:タイムリープ
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「はぁ?うざいんだけど頭おかしいでしょ!」
「こんなに落ち込んでるのに何がよかったねだよ、ふざけんな!」
「ううっ……酷い」
望杏の気持ちを無視した考えは相手には届かない。
案の定、望杏は女子の怒りを沢山買ってしまった。責められる彼があまりにも可哀想でミカはまた止める。
「待って、望杏だって悪気があったわけじゃないんだ」
「何?四季さんはあいつの肩を持つわけ?」
ミカの言葉にさらに憤慨する彼女にミカは何も言えない。望杏が言葉を間違えたことはわかっているし、その間違いを正さなければいけないのもわかっていた。
今は何を言っても望杏のことを理解してもらえる空気でもないし、余計に拗れそうだとミカは判断する。その間にも女子は望杏に対して今までの鬱憤を晴らすかのように酷く怒り糾弾した。
「いつも最悪だったけど、本当にやばいわ。もう、消えろよクズ」
「キモい話しかけんなよ」
「うざったい」
「お前なんか存在しない方がマシだ」
望杏への非難は段々と増していき、ミカの静止も意味をなくしていく。止まらない罵詈雑言にミカの方が耐えきれそうにないほどに、酷いものだった。
ミカはその時見た。この中でも無表情のままでいる望杏。彼の心の杭が膨らみ弾けそうになっていることをーー。
「……ごめん。少し来て」
ミカは望杏の手を引っ張り、教室を出て屋上へ向かった。
「勝手に連れてきてごめん。でもあのままだと望杏が悪者扱いになっちゃいそうだったから……」
「オレが悪いの?」
「……望杏が言ったことは事実。それでも相手は納得しない。それは望杏が相手の気持ちまで考えなかった。だからだよ」
ミカがそう言うと望杏は少し考える素振りをする。その目はやはり感情がないように見えた。けれど、ミカは黙って次の言葉を待った。
「やっぱり、人は難しい。また、ダメだった。……オレはずっとおかしいのかな?」
望杏は自分の胸に手を当てる。その姿にミカは何も答えられなかった。
「ミカちゃん、ごめんね。オレのせいで嫌な思いさせて」
「それは……」
「オレさ、知れば知るほどわけがわからなくなる。でも、もっと知りたいって思うんだ」
「……」
「だけど……それで、みんなに嫌な思いをさせてるから、だからオレは……」
望杏が言葉を切る。彼の心の杭はまるで心臓が脈打つように動きーー……。
「消えた方がいいのかな」
その言葉と共に更に膨れ上がる。
「っ……」
ミカはたまらなくなった。無表情でも、声に気持ちがなくても、目の前の望杏は傷ついているように見えたから。だから、望杏の手を取った。
「そんなことない!望杏はおかしくないし、消えなくていい!変われる!きっと変われるから!」
ミカが叫ぶように伝える。握った手に力が入る。すると不思議なことに、光がミカと望杏を包みーーーー……。
気づけば、望杏と初めて会話をした時に戻っていた。
「は?なんで……」
「大丈夫?四季ミカちゃん」
ミカは自分の目を疑う。屋上にいたのに、なぜか廊下にいて、望杏を受け止めている状況。
ーーこれは、初めて彼と会話した時と同じ……。
そう思うと目の前の望杏がフルネームで自分のことを呼ぶのにも納得がいく。ミカは無表情のままの望杏の手をぎゅっと握ってみた。先程のような謎の光は現れない。
「なぁに?どうしたの?」
「ああ、いや……」
不思議そうにする望杏の手を離してミカは考えた。もしかして、自分は過去にタイムリープしたのではないかと。それならば、前の春江望杏はどうなったのか?
ミカが知る限り彼はあの時に心の杭が破裂しそうになっていた。その彼を置いてきてしまったのか?それとも、またやり直せるのか?自分の考えが正しいかはわからないけどミカは目の前にいる望杏を見つめる。
「私なら大丈夫だ」
これは過去なのか、それとも夢なのかもわからない。それでも、今目の前にいる望杏としっかり向き合おうと決意したのであった。もう、あの時のようなことは起きないように、と。
望杏が自分や他人の気持ちが理解できるように一緒にいようと強く思った。
「こんなに落ち込んでるのに何がよかったねだよ、ふざけんな!」
「ううっ……酷い」
望杏の気持ちを無視した考えは相手には届かない。
案の定、望杏は女子の怒りを沢山買ってしまった。責められる彼があまりにも可哀想でミカはまた止める。
「待って、望杏だって悪気があったわけじゃないんだ」
「何?四季さんはあいつの肩を持つわけ?」
ミカの言葉にさらに憤慨する彼女にミカは何も言えない。望杏が言葉を間違えたことはわかっているし、その間違いを正さなければいけないのもわかっていた。
今は何を言っても望杏のことを理解してもらえる空気でもないし、余計に拗れそうだとミカは判断する。その間にも女子は望杏に対して今までの鬱憤を晴らすかのように酷く怒り糾弾した。
「いつも最悪だったけど、本当にやばいわ。もう、消えろよクズ」
「キモい話しかけんなよ」
「うざったい」
「お前なんか存在しない方がマシだ」
望杏への非難は段々と増していき、ミカの静止も意味をなくしていく。止まらない罵詈雑言にミカの方が耐えきれそうにないほどに、酷いものだった。
ミカはその時見た。この中でも無表情のままでいる望杏。彼の心の杭が膨らみ弾けそうになっていることをーー。
「……ごめん。少し来て」
ミカは望杏の手を引っ張り、教室を出て屋上へ向かった。
「勝手に連れてきてごめん。でもあのままだと望杏が悪者扱いになっちゃいそうだったから……」
「オレが悪いの?」
「……望杏が言ったことは事実。それでも相手は納得しない。それは望杏が相手の気持ちまで考えなかった。だからだよ」
ミカがそう言うと望杏は少し考える素振りをする。その目はやはり感情がないように見えた。けれど、ミカは黙って次の言葉を待った。
「やっぱり、人は難しい。また、ダメだった。……オレはずっとおかしいのかな?」
望杏は自分の胸に手を当てる。その姿にミカは何も答えられなかった。
「ミカちゃん、ごめんね。オレのせいで嫌な思いさせて」
「それは……」
「オレさ、知れば知るほどわけがわからなくなる。でも、もっと知りたいって思うんだ」
「……」
「だけど……それで、みんなに嫌な思いをさせてるから、だからオレは……」
望杏が言葉を切る。彼の心の杭はまるで心臓が脈打つように動きーー……。
「消えた方がいいのかな」
その言葉と共に更に膨れ上がる。
「っ……」
ミカはたまらなくなった。無表情でも、声に気持ちがなくても、目の前の望杏は傷ついているように見えたから。だから、望杏の手を取った。
「そんなことない!望杏はおかしくないし、消えなくていい!変われる!きっと変われるから!」
ミカが叫ぶように伝える。握った手に力が入る。すると不思議なことに、光がミカと望杏を包みーーーー……。
気づけば、望杏と初めて会話をした時に戻っていた。
「は?なんで……」
「大丈夫?四季ミカちゃん」
ミカは自分の目を疑う。屋上にいたのに、なぜか廊下にいて、望杏を受け止めている状況。
ーーこれは、初めて彼と会話した時と同じ……。
そう思うと目の前の望杏がフルネームで自分のことを呼ぶのにも納得がいく。ミカは無表情のままの望杏の手をぎゅっと握ってみた。先程のような謎の光は現れない。
「なぁに?どうしたの?」
「ああ、いや……」
不思議そうにする望杏の手を離してミカは考えた。もしかして、自分は過去にタイムリープしたのではないかと。それならば、前の春江望杏はどうなったのか?
ミカが知る限り彼はあの時に心の杭が破裂しそうになっていた。その彼を置いてきてしまったのか?それとも、またやり直せるのか?自分の考えが正しいかはわからないけどミカは目の前にいる望杏を見つめる。
「私なら大丈夫だ」
これは過去なのか、それとも夢なのかもわからない。それでも、今目の前にいる望杏としっかり向き合おうと決意したのであった。もう、あの時のようなことは起きないように、と。
望杏が自分や他人の気持ちが理解できるように一緒にいようと強く思った。
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