BUT TWO

寒星

文字の大きさ
13 / 14
01 意外なオファー(Unexpected Offer)

04-03

しおりを挟む
 尾行されているなと気づいたとき、ラニウスは同時に、それが脅威でないことにも気づいていた。

 撮影現場のヴィラを離れ、アレクシスが以前溢していた有名なサンドイッチ店へ向かう道すがらのことだ。おおよそパパラッチか何かだろうと放っておいた。写真を数枚撮られたところでサングラスをかけていれば正面から撮影されてもなんということはない。そもそもラニウス自身は業界人でもない。相手もそんなことにフィルムを無駄にはしないだろう。

「ねえ、お兄さん」

 にぎやかなシエスタの通りにあるサンドイッチ店で注文し、出来上がりをテラス席で待っていると、まるで知り合いのようにするりと細身の男が同じテーブルに着いた。頬の骨格が特徴的な男だった。おざなりなアロハシャツにハーフパンツ、観光客のように見えるが足元は履き続けてくたびれたスニーカー。

「こんな日差しの中でスーツだなんて暑くないの。知り合いが古着屋をやってるんだけどどうだい、いいのが揃ってるよ」
「また今度」
「さっき撮影クルーと話してたよな?」

 通りへ視線を流したラニウスの横顔に男がわずかに身を乗り出した。「アレクシス・バックマンのボディガード? 今まで見たことない顔だ、最近雇われたばかりだろう。なあ、ちょっといい話があるんだ聞いてみないか」

「いい話なら独り占めしておくといい。聞かせたいだけなら猶更結構だ」
「そう言うなって!」

 別のテーブルに移動しようとしたラニウスの前に男が割り込んだ。「なあ、マジでいい話なんだって。アンタがアレクシスの事務所からいくら貰ってるか知らないが……その金が払いきられるまで、あの事務所が残ってるかわからないんだぜ?」

 ラニウスがかすかに首を曲げた。男は俄然得意になったようすで距離を詰め、声を潜めた。

「アレクシスがいま事務所とやりあってるのは知ってるだろ? 価値観が合わねえから独立させろって言い出して、もう二年近くにもなる。HRA*は業界でも超大手の事務所だ、業界とのコネも深い。そこの看板任せられてるってのに、アレクシスは事務所から独立したがってる。なんでだと思う?」
  *HRA=アレクシスの所属事務所

 男はそう問いかけながらも、ラニウスの返事を待たずに続けた。

「事務所が業界のやばい奴らと関係してるって噂だ。実は昔からあったのさ、だが噂が立つたびすぐ消えた。枕営業なんて可愛いもんじゃねえ、テレビ業界、映画配信会社、それからSNSの運営会社____そういうとこに面のいい奴ら送り込んで、献金もしてるって噂だ。しかもたちが悪いことに、向こうも向こうで事務所に頼りまくってる。スキャンダルが出るたびに代役をすぐ寄こさせて、ほしいキャラクターのタレントを育てさせて、不祥事が起きりゃ目立つ奴らを呼びつけて別の話題を作らせる」
「ありがちな話だな」
「そうか? じゃこんなのはどうだ、ある新進気鋭の若手俳優が映画の主役をやることになった。だが映画公開の一カ月前に不倫がバレて急遽降板になったが、映画は予定通りに公開された。主役は誰だったと思う? アレクシスだよ」

 男は舌を覗かせ、乾いた唇をぺろりと舐めた。

「もっと言えばな、この若手俳優の不倫だって当初は大々的にバッシングされたが、結局は和解したんだぜ。不倫相手の女の夫がテレビ業界の大物だったが、そもそも夫婦仲は最悪だったってことが後々分かった。俳優は名前を変えて海外で元気にダンサーやってるよ」
「興味がない」
「まあ、マジで後悔するぜ、あんた……」
「いつか誰もが後悔する」ラニウスは呼ばれた番号が印字されたレシートをもってレジで商品を引き換えた。「だが今は俺の番じゃない。誰の番だと思う?」

 テイクアウトのホットサンドが入った袋はじんわりと温かい。熱心にゴシップを聞き出そうとしていた男は舌打ちをして引き下がっていった。
 そして予定通りに撮影現場のヴィラに戻ると、アレクシスは主賓室のベッドでチェシャ猫のようにニタニタ笑っていた。

「なにか面白いことでもあったか?」ラニウスはテイクアウトの袋をサイドテーブルに置いた。
「通りの向こうからやけにピカピカしたものが近づいてくると思ったらお前の頭だった」
「そうか、よかったな。食事をとれ」
「ハゲてると熱いだろ」
「ハゲてない、剃ってるだけだ」

 アレクシスはおざなりに受け流し、テイクアウトの袋から取り出した球体のプラスチックパックをボールのように真上に投げ上げてはキャッチした。中のサラダが重力にもてあそばれ、ドレッシングと混ざり合って攪拌されていく。
 そういう食べ方をするためのケースとは言え顰蹙を買いそうなものだ、とラニウスは思った。特に日本人などが見れば刀を抜いてアレクシスの首を取りに来るだろう。

「なんだよ、俺に見惚れて」

 アレクシスは球体のパックを開け、めちゃくちゃに混ざったサラダをフォークで食べ始めた。「うん、まあ味は普通だよな」
 払った金はほとんど容器代だろう。それと娯楽代か。ラニウスはそんなことを考えながら肩にさげたジュラルミンケースから水筒を取り出す。

「何飲んでる? プロテイン?」
「水」
「お前の分は買ってこなかったのか?」
「不要だ。食事は落ち着いた場所でとる」

 アレクシスはサラダを頬に溜めながら室内を見渡した。ヴィンテージな家具に囲まれた憩いの部屋。広いベッドに質素ながら高級感のあるテーブル、まさに大人の隠れ家と言わんばかりの一室だ。
 ラニウスはその視線の動きが言わんとするところを察した。

「仕事中は食事を取らないことにしている。気が緩む」
「俺の部屋で勝手に作って勝手に食ったのは?」
「あれは仕事としての食事だ。同じ調理工程で作られた食事を目の前で俺が食べれば、それに毒が盛られてないことがわかる。安全性と、信頼獲得のための第一歩」
「そこは嘘でも俺のために作ったって言えよ」

 アレクシスはサラダをきれいに食べ終えると、次に、また野菜があふれんばかりに挟まれたホットサンドを手に取った。ローストビーフサンドのはずだが、野菜を増量しすぎて肉が埋もれている。

「俺がしていることのすべてはお前のためだ」

 ラニウスは水筒を鞄に仕舞い、そしてタオルを一枚取り出した。「……随分むせたな、一度出すか」
 アレクシスは眉間にしわを刻み、口元を抑えたままじっとベッドに座っている。ラニウスが差し出したタオルを受け取らず、代わりにラニウスにホットサンドを預けた。
 ホットサンドは根元を強く握りすぎたせいか、飛び出したレタスやパプリカ、ローストビーフが極彩色の花束のようになっている。

「水いるか?」

 ラニウスはテイクアウトの袋からアイスティーを取り出してアレクシスに渡した。

「存外初心なんだな、この業界にいても」
「ハゲに真面目な顔で口説かれた経験なんてどこの業界でもねえよ」
「口説いてない」
「ああ、はいはい、もうここ数週間でお前のやり口はわかってる」

 アレクシスはラニウスの手からホットサンドを取り戻し、はみ出たレタスやローストビーフが崩れないようちまちまと端からかじっていく。

「”これは仕事の一環だ”、”俺は業務としてやってる”、”勘違いするな、俺はお前じゃなく仕事に本気なんだ”____このあたりだろ? お前の決め台詞は」

 ラニウスは妙な顔をしていた。サングラスによって彼の表情や目つきが隠されていたとしても、アレクシスは口元の微妙な動きや、眉に繋がる額のしわなどでそれを察していた。

「本当に決めなきゃならない重大な状況において、言葉が手段になるのは政治家や俳優だけだろう。俺はただの一般人だ」
「へえ?」
「それに、重大な場面なら猶更行動で示すべきだ」
「ふーん」アレクシスは興味を失ったようだ。「じゃあお前、目の前にめちゃくちゃタイプの奴がいて、なんとしてでも抱きたいときどうする」
「礼儀正しく挨拶して隣の席に座る」
「それで?」
「許されるなら手を握って一目惚れしたと伝える」
「つまんねえ男」
「自分で自分を面白い奴だと思っている男よりはマシだ」
「それはそうだな」
「マシな選択肢を選ぶことだ。運命的な出会いや偶然なんてものはこの世にない。必ず誰かの利己的な思惑がある、相手にも、自分にもだ。その中で最もこちらの損害が少なく、最も相手に打撃を与える手立てをとる。その繰り返し」
「誰だ? お前の軍人スイッチ押したのは?」
「失礼。癖だ」
 
 ラニウスは口元を手で撫でた。アレクシスはホットサンドにかぶりつきながらまた猫のように笑った。

「まあなんだ。安心して口説け、お前結構面白いぞ」
「……黙って食え。よく噛んで食べろよ。そろそろ撮影も再開するだろう」
「イエッサー」

 今にも具が零れ落ちそうなサンドをよくもまあ口元を汚さず綺麗に食べるものだ。
 ラニウスは内心感心しながら、階下であがる機材復旧の歓声を聞いていた。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

サラリーマン二人、酔いどれ同伴

BL
久しぶりの飲み会! 楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。 「……え、やった?」 「やりましたね」 「あれ、俺は受け?攻め?」 「受けでしたね」 絶望する佐万里! しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ! こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

『定時後の偶然が多すぎる』

こさ
BL
定時後に残業をするたび、 なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。 仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。 必要以上に踏み込まず、距離を保つ人―― それが、彼の上司だった。 ただの偶然。 そう思っていたはずなのに、 声をかけられる回数が増え、 視線が重なる時間が長くなっていく。 「無理はするな」 それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、 彼自身はまだ知らない。 これは、 気づかないふりをする上司と、 勘違いだと思い込もうとする部下が、 少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。 静かで、逃げ場のない溺愛が、 定時後から始まる。

処理中です...