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01 意外なオファー(Unexpected Offer)
01-03
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「採用だ」
「なんだって?」
「気に入った。今のところはな」アレクシスは身を翻し、リビングを突っ切って奥の部屋へ入って行った。「この後撮影があるから着いてこい。トライアルといこう」
「聞いてないぞ」
奥の部屋から突然銀色に光るものが飛んできた。ラニウスがそれを掴み、手のひらを開く。そこにあるのは車の鍵だった。
指示された場所へ向かう際、驚いたのは出会ってまだ一時間もないラニウスにアレクシスが車の鍵を任せたことだった。とはいえアレクシスからすれば「持っている車の中でも一番古いもの」らしいが、実際ラニウスがハンドルを握ることになったBMWは傷一つなく、最新モデルではないにせよトレーダーに出すにも惜しいほどのものだった。
「まあ、ぶつけたら修理費は出せよ」
「ならトライアルで運転させるな」
「度胸がない奴は大抵何をしても駄目だ」
「度胸と無謀は違う」
アレクシスが鼻で笑った。
「賢いつもりの臆病者がよく言う言葉だな」
指定のスタジオはニューヨークの一等地に建っていた。雑誌やWEBニュース含めたメディア事業を展開する企業で、CMや映画事業にも手を伸ばしている。
関係者専用通路へ車が侵入した時点で、警備員は助手席にいるアレクシスの顔を見るなり早々に駆け寄ってきてエスコートを始めた。彼らのそれはファンというよりも仕事人のそれで、好意的には思われなかった。まるで犯罪者を秘密裏に別の刑務所へ移送する刑務官のようなきびきびとした手つきでラニウスとアレクシスを案内し、エレベーターへ流れるように押し込む。
「彼らに嫌われるような心当たりは?」
「彼らは此処に来るやつ全員が嫌いだ」
ラニウスは「そうか」と短く言った。エレベーターはあっという間に目的のスタジオに二人を運び、そしてドアが開いた途端そこは別世界だった。「アレクシス!」「バックマンさん」「やあミスター、お出ましだな」機材を運んでいたスタッフや社員が次々にこちらを振り返り、手を止めて歓迎する。
そして決まって彼らはラニウスを見て固まった。
「彼は新しいビジネスパートナーだよ」アレクシスはにこやかに言った。「サングラスを外したら存外キュートなんだ」
ラニウスは沈黙を選択した。そもそもまだ正式に雇用されたわけでもない。説明の義務も何ら発生していない。ラニウスに課せられていることは、この場で見聞きした情報の一切を、それらが公式に発表される前に漏洩しないことだけだ。
当然撮影の内容も聞いてはいなかったが、スタジオのセットや機材の配置を見ている限り表紙撮影らしい。
慣れた様子でスタジオ脇のドレッサーに座らされ、スタイリストに化粧やヘアセットを受けていくアレクシスがそれまで一切の化粧をしていなかったことにラニウスはひそかに驚いた。保湿スプレーを振られ、肌の表面を冷やして下地を塗り、薄い色合いのファンデーションを顔の凹凸に合わせて乗せる。パールの入ったパウダーを軽く乗せ、眉を整え、目じりに濃い締め色のアイシャドウを細く引く。唇はほとんど無色のグロス。
衣服は事前に指定されていたのか、アクセサリーをいくつか付け替えただけで支度が終わった。それでもドレッサーの前から立ち上がり、撮影のセットへ向かうアレクシスからは他人とは明らかに一線を画する風格がにじみ出ていた。
グリーンカーテンの手前に小規模で四角形の水槽が置かれ、鮮やかな色の花びらがいくつか浮いていた。アレクシスはスタッフに促され、水槽脇の階段に腰掛け、水面に向かって頬杖を突くような体制になった。水槽に見えたそれは実際には底上げされているらしく、アレクシスが投げ出した腕は数センチばかり沈み込んだ位置で止まっている。
「じゃ、始めよう」カメラマンの男が言った。「ライト、もう少し低く。水飛沫いいか?」
「いいです」明後日の方向から小さく応答があった。
撮影は前触れもなく始まった。シャッター音が一度鳴った。そのあとも立て続けにシャッターが切られ、水槽の水面がゆらめき、浮いていた花びらが揺れ、飛沫が立った。アレクシスは慣れた様子で、特に支持されることもなく水面を見つめたり、目を伏せたり、花びらをひとつ指に挟んで持ち上げたりした。
手遊びのような仕草が続き、あるときふいにアレクシスは水面に浮いていた花びらを手のひらに集め、水ごと持ち上げた。手のひらから透明な水が滴り落ち、ついで無造作にかき集められた花びらも零れていく。
その水を啜るようにアレクシスは自分の手首に唇を寄せた。目を伏せ、それからふと、また目を開く。その先には図ったようにカメラのレンズがある。
そのとき完全に、需要と供給がぴたりと一致した。
「____OK!」
カメラマンが言った。「完璧だ」
周囲がにわかにざわめく。歓声を押し殺したがゆえのざわめきだった。アレクシスは動じることもなく身を起こし、濡れた手についた花びらを無造作に払う。「おい、今のは撮るなよ。オフだぞ」再び鳴ったシャッター音に眉を浮かべる。カメラマンが笑った。
アレクシスがセットから降りてくると、周囲のスタッフが我先にとバスタオルを差し出す。出遅れたものは、アレクシスが歩いた後に点々と落ちた水滴すら奪い合うようにして拭いていた。
「ほら」
着替えるためにラニウスの前を横切ろうとしたアレクシスが濡れた手を差し出す。人差し指と中指の間には鮮やかなハイビスカスの花びらが一枚挟まれていた。「やる、少し待ってろ」
ラニウスは自分の手のひらに落ちた花びらをしばらく眺めていた。全身に突き刺さる大量の視線を感じながら。
それから
「……ゴミ箱はどこに?」
と、ラニウスは近くのスタッフに尋ねたが、その問いかけは周囲全ての人間を親切な隣人から敵に変えた。
問われたスタッフは信じ難い愚行を目の当たりにしたような顔でラニウスを睨みつけ、無言で立ち去った。ほかのスタッフもあきれた様子で次々に踵を返した。
アレクシスにとってこの企業が仕事先の一つであるように、企業からしてもアレクシスは仕事相手の一人だ。だというのに随分好かれているらしい。少なくともこのフロアにいる人間でファンクラブが結成されていそうなほどの一体感(このときはラニウスに対する敵対行動として)を感じられる。
ラニウスは仕方なく花びらをポケットに押し込んだ。アレクシスは早々に戻ってきたが、装いは一新していた。目の醒めるようなブラックのスーツ。大きく開いた胸元に対してベルトで絞られたウエストがスタイルの良さを強調する。
「いい子で待ても出来ないのか?」アレクシスは早々に場の空気を察したらしい。
「吠えないで待ってたぞ」
「いい子だ。でも愛想がないな」
アレクシスがラニウスに顔を近づけた。周囲がぎょっとしたが、ラニウスはアレクシスの行動の意図を察した。ラニウスのサングラスを鏡代わりにして髪を整えているのだ。
「ん____どうも前髪が気に入らない」
「やめろ」
「おい、動くなよ」
「鏡なら他にいくらでもあるだろう」
「待てって」アレクシスは顔をそむけるラニウスを追いかけて体をひねり、そしてニコッと笑った。「ああ、うん。これでいい」
少なくともラニウスの目には何が悪かったのか、そしてそれがどう改善されたのか皆目見当もつかなかった。「今度はちゃんと愛想よくおすわりしてろ」アレクシスは無邪気に片目をつむり、再びスタジオの方へ向かった。先ほどとは様変わりしたセットは中央に映画監督が腰掛けるような簡素な椅子が一つと、それを囲うように光沢のあるシャツを身に着けた男女が立っている。
アレクシスが中央の椅子に座り、隣に立っていた女から縁の無いサングラスを受け取るなり、前触れもなくシャッターが鳴った。撮影が始まった。アレクシスがサングラスをかけ、足を組み、時にはレンズをずらして片目を露出させたりする。スタジオのライトは次々に色を変え、取り巻いて立っている男女もきびきびとポーズを変えた。腕を巻き付けあったり、官能的な曲がりかたをした指先で触れたり。
彼らの姿は時に白飛びしそうなほど強いライトに照らされ、かと思えば背後からのライトによる逆光で黒く塗りつぶされたりした。
その後もアレクシスは化粧直しや着替えを挟み、セットも変えて二時間近く撮影を行った。すべての工程を終え、機材やほかのスタッフがじんわりと汗すらかいているなか、セットから抜け出てきたアレクシスはひんやりとした空気を纏っていた。
「なんだって?」
「気に入った。今のところはな」アレクシスは身を翻し、リビングを突っ切って奥の部屋へ入って行った。「この後撮影があるから着いてこい。トライアルといこう」
「聞いてないぞ」
奥の部屋から突然銀色に光るものが飛んできた。ラニウスがそれを掴み、手のひらを開く。そこにあるのは車の鍵だった。
指示された場所へ向かう際、驚いたのは出会ってまだ一時間もないラニウスにアレクシスが車の鍵を任せたことだった。とはいえアレクシスからすれば「持っている車の中でも一番古いもの」らしいが、実際ラニウスがハンドルを握ることになったBMWは傷一つなく、最新モデルではないにせよトレーダーに出すにも惜しいほどのものだった。
「まあ、ぶつけたら修理費は出せよ」
「ならトライアルで運転させるな」
「度胸がない奴は大抵何をしても駄目だ」
「度胸と無謀は違う」
アレクシスが鼻で笑った。
「賢いつもりの臆病者がよく言う言葉だな」
指定のスタジオはニューヨークの一等地に建っていた。雑誌やWEBニュース含めたメディア事業を展開する企業で、CMや映画事業にも手を伸ばしている。
関係者専用通路へ車が侵入した時点で、警備員は助手席にいるアレクシスの顔を見るなり早々に駆け寄ってきてエスコートを始めた。彼らのそれはファンというよりも仕事人のそれで、好意的には思われなかった。まるで犯罪者を秘密裏に別の刑務所へ移送する刑務官のようなきびきびとした手つきでラニウスとアレクシスを案内し、エレベーターへ流れるように押し込む。
「彼らに嫌われるような心当たりは?」
「彼らは此処に来るやつ全員が嫌いだ」
ラニウスは「そうか」と短く言った。エレベーターはあっという間に目的のスタジオに二人を運び、そしてドアが開いた途端そこは別世界だった。「アレクシス!」「バックマンさん」「やあミスター、お出ましだな」機材を運んでいたスタッフや社員が次々にこちらを振り返り、手を止めて歓迎する。
そして決まって彼らはラニウスを見て固まった。
「彼は新しいビジネスパートナーだよ」アレクシスはにこやかに言った。「サングラスを外したら存外キュートなんだ」
ラニウスは沈黙を選択した。そもそもまだ正式に雇用されたわけでもない。説明の義務も何ら発生していない。ラニウスに課せられていることは、この場で見聞きした情報の一切を、それらが公式に発表される前に漏洩しないことだけだ。
当然撮影の内容も聞いてはいなかったが、スタジオのセットや機材の配置を見ている限り表紙撮影らしい。
慣れた様子でスタジオ脇のドレッサーに座らされ、スタイリストに化粧やヘアセットを受けていくアレクシスがそれまで一切の化粧をしていなかったことにラニウスはひそかに驚いた。保湿スプレーを振られ、肌の表面を冷やして下地を塗り、薄い色合いのファンデーションを顔の凹凸に合わせて乗せる。パールの入ったパウダーを軽く乗せ、眉を整え、目じりに濃い締め色のアイシャドウを細く引く。唇はほとんど無色のグロス。
衣服は事前に指定されていたのか、アクセサリーをいくつか付け替えただけで支度が終わった。それでもドレッサーの前から立ち上がり、撮影のセットへ向かうアレクシスからは他人とは明らかに一線を画する風格がにじみ出ていた。
グリーンカーテンの手前に小規模で四角形の水槽が置かれ、鮮やかな色の花びらがいくつか浮いていた。アレクシスはスタッフに促され、水槽脇の階段に腰掛け、水面に向かって頬杖を突くような体制になった。水槽に見えたそれは実際には底上げされているらしく、アレクシスが投げ出した腕は数センチばかり沈み込んだ位置で止まっている。
「じゃ、始めよう」カメラマンの男が言った。「ライト、もう少し低く。水飛沫いいか?」
「いいです」明後日の方向から小さく応答があった。
撮影は前触れもなく始まった。シャッター音が一度鳴った。そのあとも立て続けにシャッターが切られ、水槽の水面がゆらめき、浮いていた花びらが揺れ、飛沫が立った。アレクシスは慣れた様子で、特に支持されることもなく水面を見つめたり、目を伏せたり、花びらをひとつ指に挟んで持ち上げたりした。
手遊びのような仕草が続き、あるときふいにアレクシスは水面に浮いていた花びらを手のひらに集め、水ごと持ち上げた。手のひらから透明な水が滴り落ち、ついで無造作にかき集められた花びらも零れていく。
その水を啜るようにアレクシスは自分の手首に唇を寄せた。目を伏せ、それからふと、また目を開く。その先には図ったようにカメラのレンズがある。
そのとき完全に、需要と供給がぴたりと一致した。
「____OK!」
カメラマンが言った。「完璧だ」
周囲がにわかにざわめく。歓声を押し殺したがゆえのざわめきだった。アレクシスは動じることもなく身を起こし、濡れた手についた花びらを無造作に払う。「おい、今のは撮るなよ。オフだぞ」再び鳴ったシャッター音に眉を浮かべる。カメラマンが笑った。
アレクシスがセットから降りてくると、周囲のスタッフが我先にとバスタオルを差し出す。出遅れたものは、アレクシスが歩いた後に点々と落ちた水滴すら奪い合うようにして拭いていた。
「ほら」
着替えるためにラニウスの前を横切ろうとしたアレクシスが濡れた手を差し出す。人差し指と中指の間には鮮やかなハイビスカスの花びらが一枚挟まれていた。「やる、少し待ってろ」
ラニウスは自分の手のひらに落ちた花びらをしばらく眺めていた。全身に突き刺さる大量の視線を感じながら。
それから
「……ゴミ箱はどこに?」
と、ラニウスは近くのスタッフに尋ねたが、その問いかけは周囲全ての人間を親切な隣人から敵に変えた。
問われたスタッフは信じ難い愚行を目の当たりにしたような顔でラニウスを睨みつけ、無言で立ち去った。ほかのスタッフもあきれた様子で次々に踵を返した。
アレクシスにとってこの企業が仕事先の一つであるように、企業からしてもアレクシスは仕事相手の一人だ。だというのに随分好かれているらしい。少なくともこのフロアにいる人間でファンクラブが結成されていそうなほどの一体感(このときはラニウスに対する敵対行動として)を感じられる。
ラニウスは仕方なく花びらをポケットに押し込んだ。アレクシスは早々に戻ってきたが、装いは一新していた。目の醒めるようなブラックのスーツ。大きく開いた胸元に対してベルトで絞られたウエストがスタイルの良さを強調する。
「いい子で待ても出来ないのか?」アレクシスは早々に場の空気を察したらしい。
「吠えないで待ってたぞ」
「いい子だ。でも愛想がないな」
アレクシスがラニウスに顔を近づけた。周囲がぎょっとしたが、ラニウスはアレクシスの行動の意図を察した。ラニウスのサングラスを鏡代わりにして髪を整えているのだ。
「ん____どうも前髪が気に入らない」
「やめろ」
「おい、動くなよ」
「鏡なら他にいくらでもあるだろう」
「待てって」アレクシスは顔をそむけるラニウスを追いかけて体をひねり、そしてニコッと笑った。「ああ、うん。これでいい」
少なくともラニウスの目には何が悪かったのか、そしてそれがどう改善されたのか皆目見当もつかなかった。「今度はちゃんと愛想よくおすわりしてろ」アレクシスは無邪気に片目をつむり、再びスタジオの方へ向かった。先ほどとは様変わりしたセットは中央に映画監督が腰掛けるような簡素な椅子が一つと、それを囲うように光沢のあるシャツを身に着けた男女が立っている。
アレクシスが中央の椅子に座り、隣に立っていた女から縁の無いサングラスを受け取るなり、前触れもなくシャッターが鳴った。撮影が始まった。アレクシスがサングラスをかけ、足を組み、時にはレンズをずらして片目を露出させたりする。スタジオのライトは次々に色を変え、取り巻いて立っている男女もきびきびとポーズを変えた。腕を巻き付けあったり、官能的な曲がりかたをした指先で触れたり。
彼らの姿は時に白飛びしそうなほど強いライトに照らされ、かと思えば背後からのライトによる逆光で黒く塗りつぶされたりした。
その後もアレクシスは化粧直しや着替えを挟み、セットも変えて二時間近く撮影を行った。すべての工程を終え、機材やほかのスタッフがじんわりと汗すらかいているなか、セットから抜け出てきたアレクシスはひんやりとした空気を纏っていた。
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