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第23話
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夜になって、栗栖さんからメールが来ていた。私は丸まって、ソファに座り、麦茶を飲んでいた。テレビをつけているけれど、頭に入ってこない。
なんて書かれてあるのか、見たいような見たくないような気がしたけれど、そっと電話に触れて、読む。
『美咲が失礼なことを言ってごめん』
……なんであの女の人が言ったことを栗栖さんが謝るの?と少し捻くれた考え方をしてしまった。
確実に栗栖さんの彼女だと、嫌でもわかってしまった。説明なんて必要ないくらい、親しげなやりとりに思えた。
すぐにメールは返せなくて、グズグズしてタイミングを逃してしまい、次の日になってしまった。
栗栖さんのところには行く勇気は持てなかった。きっと美咲さんがいるだろうし……また私の心を読まれてるような、恥ずかしいことを言われるのは嫌だった。
もちろん、点数稼ぎとか、そんなつもりはなかったけど、他の人から見るとそう見える……よね。
家で鬱々していても暗くなるだけだと思い、用事を無理矢理作ってみる。茉莉ちゃんにメールしたら、塾だと涙マークのスタンプで返信がきた。
仕方なく日用品を買いに近くの薬局へ行くことにした。午前中なのに日差しが強い。
会いたくないと思っていたら会ってしまう……これってどういう原理なの?出かけなきゃよかったと後悔した。
私は薬局でニコニコしている美咲さんに会ってしまったのだった。雑誌から切り取られたような人で、他のお客さんもちらりと見ている。
私は近所の薬局ということで気が抜けていて、Tシャツにズボン、ぺたんこサンダル姿。これは完璧に負けてる!ううん。着飾っても負けてるし、意味ないけど。
……気づかないふりをしよう!そうしよう!と私は焦って、お店の中で違うコーナーに逃げようとしたが、相手は私の受けたダメージなんて気にしていないらしく、私の姿に気づき、呼び止めてきた。
「オトちゃん!」
私は反射的に驚いて振り返った。私の名前を知ってるの!?栗栖さんに聞いたのだろうか?にこやかな美咲さんが、手を小さく振っていた。
「今から帰るけど、送ってもらうの」
「そうなんですね……気をつけて帰ってください」
私は小さく会釈して顔を見ないようにして行こうとする。通り過ぎようとした時、フワッと良い香りの香水の匂いがした。
「良いこと教えてあげる」
「……あの?」
美咲さんは二本のコーヒーを手にとっていた。栗栖さんの分も買っているのだろうか?そんな心遣いが、大人の女性だなとおもった。大人の女性の美咲さんは私を無遠慮にジロジロ見て、フッと笑う。
「チハルは誰にでも優しいの。だから昔から勘違いする子はいっぱいいたわ。あなたもそのうちの一人だと思うの。傷つく前に止めておいたほうが良いわよ」
そう言い残してスタスタとお会計へ行く。呆然とした私は店内に流れる流行りの曲をモヤがかかったような頭で聴いていた。恋愛ソングじゃなくて良かった。こんなところで泣きたくはないから。
なんて書かれてあるのか、見たいような見たくないような気がしたけれど、そっと電話に触れて、読む。
『美咲が失礼なことを言ってごめん』
……なんであの女の人が言ったことを栗栖さんが謝るの?と少し捻くれた考え方をしてしまった。
確実に栗栖さんの彼女だと、嫌でもわかってしまった。説明なんて必要ないくらい、親しげなやりとりに思えた。
すぐにメールは返せなくて、グズグズしてタイミングを逃してしまい、次の日になってしまった。
栗栖さんのところには行く勇気は持てなかった。きっと美咲さんがいるだろうし……また私の心を読まれてるような、恥ずかしいことを言われるのは嫌だった。
もちろん、点数稼ぎとか、そんなつもりはなかったけど、他の人から見るとそう見える……よね。
家で鬱々していても暗くなるだけだと思い、用事を無理矢理作ってみる。茉莉ちゃんにメールしたら、塾だと涙マークのスタンプで返信がきた。
仕方なく日用品を買いに近くの薬局へ行くことにした。午前中なのに日差しが強い。
会いたくないと思っていたら会ってしまう……これってどういう原理なの?出かけなきゃよかったと後悔した。
私は薬局でニコニコしている美咲さんに会ってしまったのだった。雑誌から切り取られたような人で、他のお客さんもちらりと見ている。
私は近所の薬局ということで気が抜けていて、Tシャツにズボン、ぺたんこサンダル姿。これは完璧に負けてる!ううん。着飾っても負けてるし、意味ないけど。
……気づかないふりをしよう!そうしよう!と私は焦って、お店の中で違うコーナーに逃げようとしたが、相手は私の受けたダメージなんて気にしていないらしく、私の姿に気づき、呼び止めてきた。
「オトちゃん!」
私は反射的に驚いて振り返った。私の名前を知ってるの!?栗栖さんに聞いたのだろうか?にこやかな美咲さんが、手を小さく振っていた。
「今から帰るけど、送ってもらうの」
「そうなんですね……気をつけて帰ってください」
私は小さく会釈して顔を見ないようにして行こうとする。通り過ぎようとした時、フワッと良い香りの香水の匂いがした。
「良いこと教えてあげる」
「……あの?」
美咲さんは二本のコーヒーを手にとっていた。栗栖さんの分も買っているのだろうか?そんな心遣いが、大人の女性だなとおもった。大人の女性の美咲さんは私を無遠慮にジロジロ見て、フッと笑う。
「チハルは誰にでも優しいの。だから昔から勘違いする子はいっぱいいたわ。あなたもそのうちの一人だと思うの。傷つく前に止めておいたほうが良いわよ」
そう言い残してスタスタとお会計へ行く。呆然とした私は店内に流れる流行りの曲をモヤがかかったような頭で聴いていた。恋愛ソングじゃなくて良かった。こんなところで泣きたくはないから。
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