転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ

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学び舎よ!未来への力となれ!

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 売店に新しい仲間が登場した。

 『雪だるまのゆきんこちゃん』シリーズだ。丸い顔に、リボン、手には赤い手袋、足は黒の長靴。キーホルダー、雪だるま型クッキー、メモ帳、タオル、サニーちゃんとのコラボアイスクリーム。

「なにこれー!可愛すぎるっ!」

「お土産にしちゃう!」

「ゆきんこ……?変な名前だけど可愛いから許す!」

 ゆきんこの名前はちょっと引っかかるものがあったようだったが、人気者となれそうな予感。

 日本のアニメ文化のある国の記憶がある私としては、ついキャクター化を推進してしまう。 
 良いのか悪いのかわからないかど………『可愛い』から良し!可愛いは最強だ!

 さて、今日は各地の高等学校の落成式である。私も一応、起案をした人ということで、ご招待されている。ジーニーが言うには、ほぼエスマブル学園の関係者が多いとのことだった。

 深緑の落ち着いた色のドレスにレースをあしらったもの、それに合う厚手の白いコート。飾りもパールを中心にし、落ち着いた装いにする。
 
「用意できたかー?」

「ええ。行きましょうか」

 リヴィオは黒のコートと帽子を被ってマフラーをしている。正装に近い格好でキリッとしていると……かなりのイケメンで目の保養になります。
 突然ニッコリと私を見て笑顔になる。え!?いきなり……なに!?と一瞬ドキッとする。

「たまに正装のセイラもいいな」

 不意打ちで思わず私は赤面する。

 こ、こんなこと言えるリヴィオじゃなかったはずだわ!パクパクと言葉が空を切り、私の動揺を大人っぽい余裕の笑みでかわす。なんだか……彼は大人になっちゃったわと思う私だった。
 
 リヴィオは時計を見て、遅刻すると促す。

「転移魔法で行くぞ」
 
 スッと指で輝く文字を描いていく。転移魔法が発動し、景色が揺らぐ。

 新学舎である王都の高等学校。これと似たものが各地にいくつも作られた。もちろんナシュレにも一つ完成している。新学期が楽しみである。

 体育館はザワザワと賑やかで、招かれた人々が喋っている。室内は暖かい。私とリヴィオも帽子やコートを預けて、胸に招待客用の花をつけてもらう。

「けっこういるわねー」

「そりゃ、資金面でいろんな人から寄付をもらってるだろ。セイラも相当出してるだろ?」

 陛下の声がかかったといえど、こうして学校設立のために心ざしを同じくして、未来のために資金をだしてくれるのは嬉しい。きっとここから、学びたいと思う子や学んで国のために働く人も出てくるだろう。

「お久しぶりですね。セイラさん」

 この声!私はバッ振り返った。

「アドルド先生っ!」

 私は嬉しさで笑顔になった。そんな私を見てアドルド先生はヘーゼルの目を優しく細める。少し涙ぐんですらいる。

「良い表情されてますね。今…幸せに過ごしてるのですね」

「はい……アドルド先生には在学中、お世話になりました」

「そんなこと言えるなんて、随分、成長しましたね。今回、各地の高等学校設立のために力を貸していたと聞きましたよ」

 コホンと横から1つ咳払いし、登場するリヴィオ。アドルド先生は私の担任であったが、それはもちろんリヴィオの担任でもあった。

「おや?『黒猫』リヴィオ君、元気にしてましたか?噂はチラッと聞きましたよ」

「は?どんな??」

 リヴィオがなぜかすごく不機嫌そうに聞き返す。

「騎士団のテストを歴代トップの成績で入団し、最速で辞めていったっていう……」

「そこかよ……」

 金色の目が不機嫌そうに細められている。ジーニーがおーいと呼ぶ。

「あ、学園長が来ましたよ。君達、今も仲がいいらしいですね。いいですね」

「はい。楽しいです」

 アドルド先生は私の答えに本当にセイラさんは変わりましたね。良いふうに…。今度、温泉旅館にも行きますねと言って離れた。

「なんであいつとあんなに仲いいんだ!?」

「あいつってアドルド先生か?」
 
 ジーニーもやってきて、会話に加わる。

「みんなが休暇の時に図書館を開けてくれたり、声をよくかけてくれたりしたわ。それに私達のクラスの担任だったじゃない」

 きっと学園に一人でいる私が気になったのだろう。確かニ年間ほど中等部の時に担任をしていた。
 
「フーーーン。クラスメイトは覚えねーのにあいつは覚えてんだな」

 リヴィオの不機嫌そうな様子にププッと笑って言うジーニー。

「ヤキモチか?」

「まさか……先生にするわけないでしょ?」

 私が驚いて彼を見ると、ムキになって言い返してきた。

「そんなわけねーだろ!なんっとも思ってねーよっ!」

 ……大人の余裕はどこいった?

 やれやれとジーニーは呆れたように肩をすくめる。過去の男に余裕ないところみせるなよなどと意味不明なことを言っている。

 シャーッ!と猫のようにリヴィオがジーニーを威嚇し、怒ってる。

「やあ。リヴィオ、セイラさん、学園長。こんにちは」

 レオンだ。公爵家の代表としてきたらしい。そういえば、公爵家も出資していた。

「あ……あの、こないだは……」

 私が言おうとすると、シーッと唇に指を当てて笑う。

「それ以上言わないでください。あれはこちらのミスです」

「そうそう。レオンの落ち度」

 ぶっきらぼうにリヴィオが言うとレオンが少し危険な目をして言う。

「仕返しをしたかったのに……リヴィオに先を越されてしまって、それが一番残念ですよ」

 無言になる私。カムパネルラ公爵家の息子たちは好戦的でレオンも例外ではない。

「さぁ、式典が始まります。こちらへ……」

 学園長らしい顔付きに戻り、ジーニーが客席へみんなを連れて行く。

 イスに座り、しばらくすると式が始まり、挨拶をするため、ジーニーが舞台に立つ。こうしてみると様になっている。若いが人を惹き付け、動かす、自信ある青年に見える。堂々とした雰囲気は威厳すらある。

 皆…大人になっていくのねと実感する。

「本日はこのお祝いの場に集まって頂き、ありがとうございます。皆さんの支援が形となり、このような立派な学び舎が完成しました」

 普通の挨拶かよ。真面目だなー眠くなるなー斬新な挨拶にしろよーと隣に座っているリヴィオが呟く。目が眠そうに細められている。いや、ここでふざけたら変でしょ……。

「……魔法の衰退は我々の危機でもあります。力を守り抜き、さらなる王国の発展と繁栄を願いたいと思います」

 拍手が起こる。私もパチパチと手を叩く。エスマブル学園長として立派にしてるわ。

「これから、魔法を使える人が増えると良いんだけどね。この王国の平和をずっと守れるように……」

 退屈で眠そうな目をしているリヴィオに小さい声で話しかける。

「そうだな。あの魔物がこの大陸に上陸するとなると一般人は倒せねーな。いつ何が起きてもおかしくない。準備しておくことは悪くねーよな」

 実際に見て、戦った私とリヴィオは危機感を持っている。『コロンブス』にいる人々もそうであろう。

「アオは?……黒龍はなんて言ってたんだ?」

「今すぐ守護が失くなるわけではないとは言っていたわ。この大陸に住むウィンダム王国の人達のことを心配していたのよ」

 そうかと真剣な顔付きになるリヴィオ。

「滅びの時か……魔物はどこからきてるんだろうな?」

「元を断てばいいってこと?」

「そういうものがあるならな。でもアオにすら無理なら無理なんだろうな。できるならしてるよな」
 
 確かに……話が大きすぎて私達に今、どうにかするのは無理だろう。できることをするしかない。

 そうヒソヒソ話しているうちに何人かの挨拶が終わった。

「さー、帰ろーぜー。式典って苦手だ」

 スタスタと帰っていく。切り替えはやっ!ジーニーは来客の相手をしている。目で帰るわねと合図してちょこんと会釈しといた。またなと小さく手をあげるジーニー。
 がんばれ!学園長!!と心の中で応援した。

「大変ですっ!女将!」

 旅館に行くと慌てているスタッフ。不在の間になにがあったの!?とドキッとする私。

「ゆきんこちゃんが!」

 え!?私は目を見開く。

「完売しましたああああ!!」

 そっちー!?!?

「すごいわ!!」 
 
 でも嬉しい驚き!私はガッツポーズを小さくした。売店スタッフが嬉しそうに空っぽの棚を見せる。

「来る人に、ないんですか?と聞かれるんですよー。発注しときました!」

「ありがとう。まさか、こんなに早いとは思わなかったわ。増産しましょう!」

『おーーっ!』

 拳を上に挙げて、ゆきんこちゃんシリーズにテンションの上がる旅館スタッフ達だった。

 式典でリヴィオと話していた魔物やこの国の未来についての話に比べると、スケールの小ささにちょっと申し訳なくなるけど、日常というのはこんなものでいいのかもしれない。





 
 
 

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