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記憶の欠片は蝕む
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トーラディム王国の王城にお風呂作りに来ることになるなんて思ってなかった。
私はたしかに作りましょうか?と聞いたけど、まさか城にまで作る事は想定外であった。長い歴史あるこの王国の王城に温泉のお風呂ができるとは歴代の王の誰が想像できただろうか。
カーンカーンカーンと石を削る音がする。建築士のグレアムが、まさか王宮にくるなんて!と驚いている。
「でもこんなチャンス、めったになくて、光栄すぎて死にそうです!」
顔を紅潮させてそう語る。トーラディム王国の王家は人々に畏敬と畏怖の念を持たれている。そう感じる。ウィンディム王国の王家はまだ親しみやすい方かもしれない。
「そうなのね……あ、ここはサウナにしましょ」
ハイ!とめちゃめちゃいい返事が返ってくる。低温のサウナも作ることにした。王様業は忙しいから、ゆっくりとできるところもあると良いかもしれないと思ったのだ。
私は王宮の中を歩く許可証をもらったので、許された範囲のみ、行くことができるので、休憩がてら散策してみることにした。ちょっと他国の王宮で、誰かに見咎められないか、緊張するけど、なかなかこんな機会はなさそうだものね。
「おやー?セイラさんじゃないですかー」
いきなり声をかけられて驚いて振り返ると、そこには大神官長様がいた。
「びっくりしました!」
「驚かせてしまいましたか?お仕事に来てるんですね」
「あ、そうなんです。王宮にも温泉のお風呂を作ることになりました」
「あ~。いいですね。我が家に温泉なんて!王の特権ですかね。私の家にも、ここが終わったら頼みたいです」
……個人宅に作るのはけっこうお金がいるんだけど。まぁ、大神官長ともなると持っていそうだし、そこは心配ご無用なのかな。
「いいですよ!ぜひ、承ります」
「老後の楽しみに、温泉、良いですよねぇ。ミラが大神官長になってくれたら、平穏な老後を送れるんですけどねー」
はぁ……と憂いるように、頬に手をやる。
「わたし達、ルノールの民は、あの神殿深部の映像以外にも過去を知る事ができるんですよ」
え?と私は唐突に話し始めた内容に驚き、聞き返す。
「ルノールの民の中でも魔力の高い者は、血の呪いのように、過去を夢で見ることになっています。ルノールの民の歴史を忘れるなと言わんばかりに本人の意思とは関係なく、見せられる。その夢にいる中心的人物が、あなたも見た、ミラにそっくりのルノールの民を統べる長です」
シンッと静まった廊下に響く声。いつの間にか大神官長様は防音と姿を隠す魔法を発動させていた。アメジスト色の目が私をジッと見る。いつもののんびりした雰囲気てはなく、どこか神秘的ですらある。
「わたし達、ルノールの民はここに3つの神が降り立つ前の先住民族です。天と地に住まうルノールの民はいつしか神々と人々に恐れられていく。迫害を受けたり、高い魔力を利用されたりしてきました」
「なぜ、私にそんな話を教えてくれるんですか?」
「たぶんあなたは世界を『繋ぐ者』です。離れてしまった心。ルノールの民、3つの神、国を繋いでいる」
「『繋ぐ者』?私はそんなこと……」
大神官長様は買いかぶりすぎだと思う私だった。温泉を作っているだけのような気がするんだけどな……。
「ミラのこと、よろしくお願いします。あの子はルノールの民の長の記憶を持っている。それに飲み込まれないようにしてやりたい。まるで病のように記憶に蝕まれ、今の自分を忘れていくかもしれない」
愛弟子を労るような人間味溢れる大神官長様を見た気がした。いつも微笑んでいるのに、今は苦しげで、悲しい表情をしていた。初めて見た。
「私にできることなら、助けとなれるなら何かしたいです……ミラは私にとって、もう大切な友人ですから」
「すいません、ちょっと弱気になってしまって。これから起こることが、わたしには怖いんですよ。誰かが犠牲になるようで……そんな予感がします。あなたも気をつけてくださいね」
大神官長様の予感は馬鹿にできない。なにせ以前、リヴィオに護符を必要と感じて渡し、それをシンに託してカホを助けている。漠然としたもののようだが、何かを感じ取る力が、大神官長様にはあるのかもしれない。
「お心遣いありがとうございます。気をつけます」
「なんで、この時代なんですかねぇ。何事もなく大神官長の役目を終えたいだけなのになあ」
そう言って、大神官長様はパチンと指を弾き、結界を解くと、いつも通りの、のんびりとした口調の彼に戻っていたのだった。
私やリヴィオのような記憶ならば、まだ良いのかもしれない。少なくとも私はカホの記憶に救われた。でもミラはどうだろう?決して良い記憶では無い。それは自分の人格すら蝕んでいくかもしれない……私になにができるだろうか?
気になりながらも、トーラディム王国を後にした。
私はたしかに作りましょうか?と聞いたけど、まさか城にまで作る事は想定外であった。長い歴史あるこの王国の王城に温泉のお風呂ができるとは歴代の王の誰が想像できただろうか。
カーンカーンカーンと石を削る音がする。建築士のグレアムが、まさか王宮にくるなんて!と驚いている。
「でもこんなチャンス、めったになくて、光栄すぎて死にそうです!」
顔を紅潮させてそう語る。トーラディム王国の王家は人々に畏敬と畏怖の念を持たれている。そう感じる。ウィンディム王国の王家はまだ親しみやすい方かもしれない。
「そうなのね……あ、ここはサウナにしましょ」
ハイ!とめちゃめちゃいい返事が返ってくる。低温のサウナも作ることにした。王様業は忙しいから、ゆっくりとできるところもあると良いかもしれないと思ったのだ。
私は王宮の中を歩く許可証をもらったので、許された範囲のみ、行くことができるので、休憩がてら散策してみることにした。ちょっと他国の王宮で、誰かに見咎められないか、緊張するけど、なかなかこんな機会はなさそうだものね。
「おやー?セイラさんじゃないですかー」
いきなり声をかけられて驚いて振り返ると、そこには大神官長様がいた。
「びっくりしました!」
「驚かせてしまいましたか?お仕事に来てるんですね」
「あ、そうなんです。王宮にも温泉のお風呂を作ることになりました」
「あ~。いいですね。我が家に温泉なんて!王の特権ですかね。私の家にも、ここが終わったら頼みたいです」
……個人宅に作るのはけっこうお金がいるんだけど。まぁ、大神官長ともなると持っていそうだし、そこは心配ご無用なのかな。
「いいですよ!ぜひ、承ります」
「老後の楽しみに、温泉、良いですよねぇ。ミラが大神官長になってくれたら、平穏な老後を送れるんですけどねー」
はぁ……と憂いるように、頬に手をやる。
「わたし達、ルノールの民は、あの神殿深部の映像以外にも過去を知る事ができるんですよ」
え?と私は唐突に話し始めた内容に驚き、聞き返す。
「ルノールの民の中でも魔力の高い者は、血の呪いのように、過去を夢で見ることになっています。ルノールの民の歴史を忘れるなと言わんばかりに本人の意思とは関係なく、見せられる。その夢にいる中心的人物が、あなたも見た、ミラにそっくりのルノールの民を統べる長です」
シンッと静まった廊下に響く声。いつの間にか大神官長様は防音と姿を隠す魔法を発動させていた。アメジスト色の目が私をジッと見る。いつもののんびりした雰囲気てはなく、どこか神秘的ですらある。
「わたし達、ルノールの民はここに3つの神が降り立つ前の先住民族です。天と地に住まうルノールの民はいつしか神々と人々に恐れられていく。迫害を受けたり、高い魔力を利用されたりしてきました」
「なぜ、私にそんな話を教えてくれるんですか?」
「たぶんあなたは世界を『繋ぐ者』です。離れてしまった心。ルノールの民、3つの神、国を繋いでいる」
「『繋ぐ者』?私はそんなこと……」
大神官長様は買いかぶりすぎだと思う私だった。温泉を作っているだけのような気がするんだけどな……。
「ミラのこと、よろしくお願いします。あの子はルノールの民の長の記憶を持っている。それに飲み込まれないようにしてやりたい。まるで病のように記憶に蝕まれ、今の自分を忘れていくかもしれない」
愛弟子を労るような人間味溢れる大神官長様を見た気がした。いつも微笑んでいるのに、今は苦しげで、悲しい表情をしていた。初めて見た。
「私にできることなら、助けとなれるなら何かしたいです……ミラは私にとって、もう大切な友人ですから」
「すいません、ちょっと弱気になってしまって。これから起こることが、わたしには怖いんですよ。誰かが犠牲になるようで……そんな予感がします。あなたも気をつけてくださいね」
大神官長様の予感は馬鹿にできない。なにせ以前、リヴィオに護符を必要と感じて渡し、それをシンに託してカホを助けている。漠然としたもののようだが、何かを感じ取る力が、大神官長様にはあるのかもしれない。
「お心遣いありがとうございます。気をつけます」
「なんで、この時代なんですかねぇ。何事もなく大神官長の役目を終えたいだけなのになあ」
そう言って、大神官長様はパチンと指を弾き、結界を解くと、いつも通りの、のんびりとした口調の彼に戻っていたのだった。
私やリヴィオのような記憶ならば、まだ良いのかもしれない。少なくとも私はカホの記憶に救われた。でもミラはどうだろう?決して良い記憶では無い。それは自分の人格すら蝕んでいくかもしれない……私になにができるだろうか?
気になりながらも、トーラディム王国を後にした。
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