転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ

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そこに愛はあるか

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 私がノーチェとラビを抱っこしたり、暖かな陽射しの下で日向ぼっこしながら遊んでいるのを遠くから眺める双子の少年がいた。

 そのアサヒとヨイチの隣にリヴィオ。近寄れないと二人が寂しそうにこちらを見ているのをなだめる。

「触ると日本へ帰ってしまうから仕方ないな。まさかお前たちが転生したのが、ノーチェとラビってなぁ………なんか驚くことばかりだ」

 リヴィオはまじまじと二人を見る。

「リヴィオはシンヤと出会った時、なにか思った?」

 アサヒが尋ねるとリヴィオはそうだと頷く。

「オレは今、シンヤの役目を引き継ぐためにここにいるんだって思った。あっちの世界にシンヤを帰すために……逆にシンヤはオレが黒龍の役目を果たせるようになるまで、いてくれたんだって思ったな」

「………意味のある引き継ぎか」

 ヨイチが小さな声で呟く。

「でもノーチェとラビはまだ小さいし、どういうことなのかしらね?」

 私が言うとアサヒがこちらへ来てほしいと手招きした。ノーチェとラビを私はアンネとグレイシアに任せる。

 リヴィオも何か話したいことが、この双子にあるのだと気づいて中庭の方へ誘い、庭園の中のベンチに4人で座った。

「僕たちはいまだに帰りたいか帰りたくないのか迷ってる。帰りたいと思えない」

 ヨイチがそう言った。

「あっちの世界では必要とされないからな」

「父や母に抱かれた記憶も優しくされた記憶もないし、都合の良いときだけ利用されてきた」

 今……アサヒとヨイチの飄々とした雰囲気は消え去り、日本にいる普通の少年の顔をしていた。

 私は夢を思い出していた。雨が降りそうな天気のなか、二人の双子が走る。弟たちが車の中から笑ってる。同じ家族なのになぜ?……と思った。あれはヨイチとアサヒの記憶。

「帰ったら、またその繰り返しで、心が海の底に沈んでるように生きていくのかなって思うと嫌だ」

 目の奥が昏くてヨイチは本当に海の底にいるようだった。

「……ヨイチに対して、特にひどい。だから帰りたくない。ヨイチは殴られたり、無視されたりする。俺はあっちの世界では無力で、それを守れなくて見て見ぬふりをしてしまうズルいやつになるから嫌なんだ」

「僕は生意気だからね」

 明るいアサヒの声が震えていた。ヨイチは自分を生意気と表現し、肩をすくめる。

 リヴィオと私は息をのむ。

「そ、そんなことって……」

 私の声まで震える。リヴィオは顔をしかめた。

「帰るなよ」

 リヴィオの一言に双子がハッと顔をあげた。

「ノーチェとラビに近づかなければ良いだけだ。フェンディム王国とウィンディム王国は遠い。会うことはないだろう」

「……リヴィオ、僕たち、まだ帰らないよ。たぶんだけど、僕はわかるんだ。まだだって……でもこんなに早くノーチェとラビに会わせてくれた神様の意図はわかる」

 ヨイチの言葉にえ!?わかるのかよ!?とアサヒが驚く。

「リヴィオとセイラさんに愛されてるノーチェとラビを見たら、心が温かくなるんだ。来世では愛をもらえるんだって思ったら、少し救われる」

 私は思わず立ち上がって、ヨイチとアサヒの二人をぎゅっと抱きしめた。手の長さが足りないくらいなのが、惜しい。

『セイラさん!?』

「私、会ったとき、アサヒとヨイチになんだか懐かしいって思ったの。私はノーチェとラビを愛していくし、アサヒとヨイチも大好きよ」

 だから……そんな絶望的な顔をしないでほしい。でもどうしたら日本にいる二人を救える?どうしたら愛せるのだろう?帰ったら孤独な二人に戻ってしまうの?

「セイラさんとリヴィオに会うために、僕たちはここに来た気がする」

「ヨイチ……」

 私は涙が出てきてしまう。リヴィオがうーんと腕組みをしている。

「まあ……二人を守れないこともないけどな。でもここより幸せになれるかと言われたら、難しい。もし日本に帰るなら、シンヤに会いに行け」

『シンに!?』

「オレの中にいるシンヤはおまえたちと一緒に過ごした日々が楽しかったと思ってる。そして心配している。帰る間際まで……帰ることがあれば、会いに行け。きっと喜ぶ。帰ると決めたらシンヤのいる場所を教えてやるよ」

 大丈夫だとリヴィオは言って、付け足す。

「あっちの世界にもおまえらのこと、気にしてるやつがいるって忘れるな」

 うん……うんと何度も頷く双子達。春の陽射しは暑いほどになってきた。

 アサヒが次にパッと顔をあげた時は明るい顔をし、ヨイチは少し恥ずかしそうだった。

「まだここにいて、することもあるしなっ!」

「帰るか帰らないか……悩む時間はあるよね」

 大丈夫だとリヴィオと私は声を揃えて言った。二人の少年達はいつも通りの楽しげで飄々とした雰囲気に戻る。

 この世界で神様代行をしている二人はフェンディム王国へ笑って帰って行った。
 
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