転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ

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待ちわびていた人たち

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「セイラさん、お仕事に復帰ですか!?そう聞いていてもたってもいられませんでした!」

「どうしたの!?熱烈な歓迎ね……そうよ。またよろしくね。ジャン」

 私がそう挨拶すると、温泉マークの青い法被を着た青年はううっと涙ぐむ。なぜ泣くの!?な、なにか悪いこと言った!?

「嬉しいです!名前を覚えててくれましたか!」

「いや、あなたオープンからいる古参スタッフじゃないの。今更なにを……」

 他のスタッフ達がアハハハハと笑いだした。

「ジャンは女将が帰ってくるのをずっと待っていたんですよ」

「まだかなぁ?といつも言っていたんですよ」

 そこまで私を待ってくれていたなんてと私は嬉しかった……けど、そろそろ泣き止んでくれるといいのだが、いつまでもグスッと鼻をすすっているジャンだった。

「いらっしゃいませー」

 私が、挨拶するとお客様があっ!と声をあげた。

「セイラさん!復帰したのね」 

「おお!久しぶりに見たな!」

 あの乗合馬車組合の会長さんと元騎士団出身の奥さんだった。あれから常連客となり、私が不在の間もよくいらっしゃってると聞いていた。

「長く留守にしまして……またよろしくお願いします」

 こちらこそ!と仲睦まじげに二人は部屋へと行った。他の顔なじみのお客様達も「今日から?」とか「またよろしくね」とか「顔を見れて嬉しい」とか以前と同じように声をかけてくれて、私はうれしいような安堵するような気持ちになる。

「あれ!?女将!今日からお仕事でしたか。無理なさらず……えーと、ミラちゃんは国に帰っちゃったんですか?」

 よくミラが手伝っていた売店のスタッフだった。その言葉に私は少し視線を下に落としかける。しかし顔をあげて、明るい声を出す。

「また、そのうち来るわよ!温泉、すごーく気に入っていたもの」

 それは良かった!と笑うスタッフ。きっとまた一緒に温泉に入る日がくる。そう私は信じてるし、約束をしたもの。

 私は仕事復帰の日、待っていてくれた人がいたことに嬉しすぎて、調子に乗り、働きすぎてクタクタで家に帰った。

「……はりきりすぎじゃね?」

 帰宅した私の顔を見て、リヴィオが呆れたように言う。彼はノーチェとラビを両腕に抱えている。

「あら?リヴィオは子育ては乳母派じゃなかったの?」

 お坊ちゃんのリヴィオは育てるのは乳母だろ?と言っていたのに私がいない間、あやしていたらしい。

「そう思っていたけど、可愛すぎる。もう天使かよ!天使だよな!?仕事の合間につい……」

 え!?天使!?そこまで言う!?リヴィオの様子からして、本気でそう言っているらしい。確かに可愛いけど……なんか彼が言うとは思わなかった。意外すぎる。

「リヴィオ様は合間にとおっしゃいますけど、頻繁に執務室から出てきて遊んでました」

 ノーチェとラビの面倒を見てくれてるアンネがボソッと言いつけた。

「バラすなよっ!……ちゃ、ちゃんと仕事もしてるぞ!?」

 私にそう言うリヴィオ。こんなに子煩悩になるなんてとクスッと笑ってしまった。もしかして私以上かもしれない。

「忙しい日は顔も見れない時があるんだし、家にいる時くらいは良いんじゃないかしら。ノーチェとラビもかまってもらえてうれしいわよね」

 双子の赤ちゃんはすべて承知してる!と言わんばかりにニコッと笑い、リヴィオが天使だ!とまた言う。……やけにタイミングの良い笑顔を見せた二人に私は確信犯ような気がしてならなかった。
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