309 / 319
フォスター家の次期当主は褒め殺す
しおりを挟む
ストロベリーブロンドの長くサラサラの髪を一つに束ね、赤色の目をした高身長の美青年が『海鳴亭』にやってきたのは初夏になる頃だった。
「綺麗すぎて近寄りがたいわね」
「客室係は誰なの!?代わってほしいー」
「えー!むしろ緊張しちゃうー!」
お客様に対して玄人と言える客室係のスタッフたちまでこんな感じで……。
「あなたたち、いつも通りの対応を……」
珍しく私は注意をする……が、逆にブーブー言われる。
「女将はリヴィオ様でイケメン耐性あるからそんな冷静なんですよ~」
イケメン耐性!?そんな耐性とかってあるの!?
「慣れすぎも人生損ですよ!」
「そうそう!キャーキャー言うのが楽しいのに!人生に潤いです!」
………人生まで語られてしまった。
「と、とにかく、いつも通りよ!平常心!」
アサヒかヨイチがここにいたら筆で『平常心』と書いてもらい、飾っておきたいくらいよ。
『ドミニク=フォスター』そうサラサラッと無言で書いた。
あれ?ストロベリーブロンドとこの目の色、フォスター……って?まさか!?
「あの……トトとテテの……もしかしてお兄さんですか?」
「そうです。はじめまして。トトとテテがお世話になってます」
ニコッと煌めくような笑顔を見せて、ペコリとお辞儀する。爽やかな雰囲気の彼に、後ろのスタッフたちの気配がざわめく。なんか人を惹きつけるオーラがある。
「セイラさんには感謝しきれません。フォスター家を代表し、お礼を言わせてください。もっと早く会いに来たかったのですが、忙しくて……なんて言い訳ですね」
「いいえ。感謝なんて……トトとテテには私の方こそ元気をもらい、助けてもらってます。フォスター家の方々に私こそお礼を言いたいです」
「セイラさんは素敵な方ですね。トトとテテが懐くのもわかります。あの二人が発明家として有名になったのはセイラさんのおかげですし、王宮魔道士にするべきだと言う他のフォスター家の親戚一同も最近ではトトとテテの才能を認めています。セイラさんはトトとテテの恩人です。しかもこんな人々が癒やされ、喜ぶものを作るなんて心が綺麗なんじゃないかと……」
「あ、あのっ………ドミニクさん、言い過ぎです。も、もうお部屋へ行き、温泉に入って日頃の疲れを癒やされるとよろしいかと!」
私はどこまでも良い人のドミニクの話を聞いて、そこまで言ってもらえることにはずかしいやら申し訳ないやら複雑な気持ちになり、言葉を遮る。遮らなければどこまでも続きそうだった。
部屋に入ってからもそれは続くこととなった。
客室係のスタッフがお菓子とお茶を持ってくる。青や水色、薄いピンク、白の琥珀糖がお皿の上でキラキラとしているのを目を丸くして驚く。純粋で素直な感情がすぐに表情に直結している人だ。
「すごい!宝石のようです!これは初夏をイメージされてるんですね?」
「そうです。琥珀糖と言います。甘くてシャリっとして美味しいですよ。ぜひ召し上がってください」
「丁寧なご説明ありがとうございます」
「えっ……いいえ」
お菓子の説明をし、お茶を差し出す客室係がお礼と共に笑顔を向けられ顔を赤らめる。
………これは危険な男かもしれない。なんだか嫌な予感がした。
「本当だ美味しい!お茶も香りが良くて美味しいですね。いや……あなたが淹れてくれたお茶だから美味しいのかな?」
「フォスター様は褒め上手ですね。ありがとうございます」
客室係が接客よ!接客!と小さい声で言っているのを私は聞き逃さなかった。
「お風呂と夕食のご案内をさせていただきます」
いつも通りに話すスタッフだったが……。
「すごく丁寧でわかりやすいよ。なんて親切にしてくれるんだろう」
柔らかな笑顔でそうドミニクは言った。ほんとにあのトトとテテ、イーノ、カインの兄なの!?私の頬に一筋の汗が伝う。
私とスタッフが部屋の外へ出る。その瞬間、お互いにはぁ~とため息をついた。
「なんだか……疲れたわ」
私は額に手を当てる。あれからもインテリアを褒めたり、所作が美しいとスタッフを褒めたり……延々と褒めるのである。人間、褒められ過ぎると疲れる気がする。
「ええっ!女将、それはひどいです。とても素敵で良い方です……ほんとに素敵……」
「えっ……いや……でも……」
「まったく……女将はイケメン耐性ありすぎなんですよ。リヴィオ様やジーニー様を見慣れすぎなんです」
イケメン耐性ってまた言われた。いや、大人になって、だいぶ丸くなったけど、リヴィオやジーニーは見た目は良いけど、中身は問題ある部分があるよね?と言いたかったけど、また言い返されそうなので、やめておいた。
しかし……やはり私の嫌な予感は的中した。
「次は私よ!」
「何言ってるの!?さっきドミニク様のところへタオル持っていったでしょ!?」
「冷たいお飲み物運ばなきゃ!」
女性スタッフたちがずっとこの調子で騒いでいる。やはりこうなると思っていた。
ドミニクの宿泊中、めんどくさいことにならないようにしなきゃ……。
そしてしみじみと感じることはフォスター家って、どの人も濃い気がするということだった。
「綺麗すぎて近寄りがたいわね」
「客室係は誰なの!?代わってほしいー」
「えー!むしろ緊張しちゃうー!」
お客様に対して玄人と言える客室係のスタッフたちまでこんな感じで……。
「あなたたち、いつも通りの対応を……」
珍しく私は注意をする……が、逆にブーブー言われる。
「女将はリヴィオ様でイケメン耐性あるからそんな冷静なんですよ~」
イケメン耐性!?そんな耐性とかってあるの!?
「慣れすぎも人生損ですよ!」
「そうそう!キャーキャー言うのが楽しいのに!人生に潤いです!」
………人生まで語られてしまった。
「と、とにかく、いつも通りよ!平常心!」
アサヒかヨイチがここにいたら筆で『平常心』と書いてもらい、飾っておきたいくらいよ。
『ドミニク=フォスター』そうサラサラッと無言で書いた。
あれ?ストロベリーブロンドとこの目の色、フォスター……って?まさか!?
「あの……トトとテテの……もしかしてお兄さんですか?」
「そうです。はじめまして。トトとテテがお世話になってます」
ニコッと煌めくような笑顔を見せて、ペコリとお辞儀する。爽やかな雰囲気の彼に、後ろのスタッフたちの気配がざわめく。なんか人を惹きつけるオーラがある。
「セイラさんには感謝しきれません。フォスター家を代表し、お礼を言わせてください。もっと早く会いに来たかったのですが、忙しくて……なんて言い訳ですね」
「いいえ。感謝なんて……トトとテテには私の方こそ元気をもらい、助けてもらってます。フォスター家の方々に私こそお礼を言いたいです」
「セイラさんは素敵な方ですね。トトとテテが懐くのもわかります。あの二人が発明家として有名になったのはセイラさんのおかげですし、王宮魔道士にするべきだと言う他のフォスター家の親戚一同も最近ではトトとテテの才能を認めています。セイラさんはトトとテテの恩人です。しかもこんな人々が癒やされ、喜ぶものを作るなんて心が綺麗なんじゃないかと……」
「あ、あのっ………ドミニクさん、言い過ぎです。も、もうお部屋へ行き、温泉に入って日頃の疲れを癒やされるとよろしいかと!」
私はどこまでも良い人のドミニクの話を聞いて、そこまで言ってもらえることにはずかしいやら申し訳ないやら複雑な気持ちになり、言葉を遮る。遮らなければどこまでも続きそうだった。
部屋に入ってからもそれは続くこととなった。
客室係のスタッフがお菓子とお茶を持ってくる。青や水色、薄いピンク、白の琥珀糖がお皿の上でキラキラとしているのを目を丸くして驚く。純粋で素直な感情がすぐに表情に直結している人だ。
「すごい!宝石のようです!これは初夏をイメージされてるんですね?」
「そうです。琥珀糖と言います。甘くてシャリっとして美味しいですよ。ぜひ召し上がってください」
「丁寧なご説明ありがとうございます」
「えっ……いいえ」
お菓子の説明をし、お茶を差し出す客室係がお礼と共に笑顔を向けられ顔を赤らめる。
………これは危険な男かもしれない。なんだか嫌な予感がした。
「本当だ美味しい!お茶も香りが良くて美味しいですね。いや……あなたが淹れてくれたお茶だから美味しいのかな?」
「フォスター様は褒め上手ですね。ありがとうございます」
客室係が接客よ!接客!と小さい声で言っているのを私は聞き逃さなかった。
「お風呂と夕食のご案内をさせていただきます」
いつも通りに話すスタッフだったが……。
「すごく丁寧でわかりやすいよ。なんて親切にしてくれるんだろう」
柔らかな笑顔でそうドミニクは言った。ほんとにあのトトとテテ、イーノ、カインの兄なの!?私の頬に一筋の汗が伝う。
私とスタッフが部屋の外へ出る。その瞬間、お互いにはぁ~とため息をついた。
「なんだか……疲れたわ」
私は額に手を当てる。あれからもインテリアを褒めたり、所作が美しいとスタッフを褒めたり……延々と褒めるのである。人間、褒められ過ぎると疲れる気がする。
「ええっ!女将、それはひどいです。とても素敵で良い方です……ほんとに素敵……」
「えっ……いや……でも……」
「まったく……女将はイケメン耐性ありすぎなんですよ。リヴィオ様やジーニー様を見慣れすぎなんです」
イケメン耐性ってまた言われた。いや、大人になって、だいぶ丸くなったけど、リヴィオやジーニーは見た目は良いけど、中身は問題ある部分があるよね?と言いたかったけど、また言い返されそうなので、やめておいた。
しかし……やはり私の嫌な予感は的中した。
「次は私よ!」
「何言ってるの!?さっきドミニク様のところへタオル持っていったでしょ!?」
「冷たいお飲み物運ばなきゃ!」
女性スタッフたちがずっとこの調子で騒いでいる。やはりこうなると思っていた。
ドミニクの宿泊中、めんどくさいことにならないようにしなきゃ……。
そしてしみじみと感じることはフォスター家って、どの人も濃い気がするということだった。
10
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる