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(番外編)嫉妬心は憎しみとなる⑤
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これはどういう状況だ?
俺は兵を連れて公爵領に乗り込んだ。しかし逆に俺が責められることになった。父王から厳しく叱責され、王位継承権を奪われ、今は部屋に謹慎中だ。
公爵領に勝手に侵入したことがそんなに悪いことか?たかだが臣下の領地じゃないか。臣下の物は王家の物だ!
ぎりっと奥歯をかみしめる。なぜ俺が幽閉のようなことをされているんだ?腹がたったから、食事を拒否し、まともに食べていないため、力が入らず座り込んでいる。
なにより腹が立つのは、アルバートにすべてを奪われたことだ。あいつはシアの心をどうやって手に入れた!?
フランは俺とシアの子なのに、アルとの子供だとシアは言い切った。その言葉にすべてが詰まっていた。俺とはなんの関係もないし、もはや関わりたくもないということだ。捨てられたのは……俺のほうか?
ドンっと拳で壁を叩く。憎しみが沸き起こる。アルバートをいますぐ消し去りたい。
トントンと扉をノックされる。こちらから開けれないから、それはパフォーマンスだろう。入りたいなら外側のカギを開けて入ってくればいい。
相手は俺の返事すら待たずに開けた。
目の前に憎らしいアルバートが立っていた。いつもと変わらない美しい顔に微笑みを浮かべている。
おまえからくるとはな!俺はどうやってアルバートを傷つけてやろうか考えた。
「怖い顔してるなぁ。これってオレが恨まれているのか?」
「わかってるなら来るな!」
「シアにさんざんひどいことをした男の末路をあざ笑いにきただけだよ」
これが本性。アルバートは実は怒ると怖い。そう皆が言っているのを聞いたことがあった。目の前の男は怒っていた。もしかして俺以上に怒っている気がした。人は自分以上に怒っている者を見たとき、我に返ると言うが……まさに俺はそうだった。アルの笑顔に背筋が寒くなった。
……笑っているのに怖い。目が笑っていない。むしろ絶対零度の凍土のように目が冷たい。俺は腹が減りすぎて動けないことを、今、心底後悔した。アルが何をしにきたのかなんとなくわかる。
「フランが次期王としての教育を受けることを決めたよ。オースティンはもう用なしってわけだ」
俺に対する敬称すらつけないところを見ると、今の俺は罪人扱いか?
「ブリジット地方の領地に引きこもるなら、オレは許すと陛下に言ったら、それで許してくれるならそうすると言ってくれた。領地に侵略したわりに優しい罰じゃないか?いや、それとも陛下もほとほと君に呆れて目の届かないところへやりたいのかな?」
「ブリジット地方だと……どこがだっ!!あの極寒の地の不毛の領土で、どうやって生きろと言うんだ!!」
アルはどの口が言うんだろう?と言って、服の袖からスッと抜き取った銀色の短剣を出した。刃が黒い。その黒さにギクリとした。
「あ、わかるか?毒を仕込んである。これをあげるよ。今、ここで自害するかそれともブリジット地方へ行くかどっちか選んでほしい」
「自害などするかっ!ブリジット地方にもいくわけがな……ぎゃあああ!」
金属の刃が俺の耳をかすめた。黒い刃は見てわかるように傷1つで致死量である毒が塗ってある。カタカタカタと俺の体が震えだした。
「大丈夫だよ。君が自害するなんて思ってない。そんな勇気もないだろう?オレが手伝ってあげるよ。もう一度聞くけど、ブリジット地方に引きこもるよなぁ?」
「……俺がここにいれば、フランの邪魔になるからか!?」
「わかってるじゃないか。フランが成長し、玉座につくときに、王位継承権を主張されても困るんだ。さっさとそういう芽は摘んでおきたい。どうする?ブリジット地方へ行くよな?それとも自害を手伝ってほしいか?選べ」
黒い刃を目の前でちらつかせる。悪人すぎるだろう!?アルは天使のようだと父王は言っていたが、これでは悪魔だ!!
「それにシアの周りをうろつかせたくない。おまえが彼女にしたことをオレはなんとなく察している。シアは言わないというか……心の傷が深すぎて言えないのだろうと思う。ここで刺せばオレの気分は最高なんだけどな。選ばせてやってるだけ偉いだろ?」
抑揚のない声音で淡々と話す。やり手の若い公爵。そういわれているアルバートは単なるお坊ちゃんじゃないことが嫌というほど、この瞬間わかった。
「くっ……ブリジット地方へ……い……いく」
アルが一枚の紙を出し、グッと俺の腕をつかむ。小さい針を取り出し、俺の指につきたてた。動けない俺はなされるがままだった。
「いっ!?」
紙に親指を押し付けられた。
「血判をもらっとく。『この契約を違えた時は死を持って償います』って書いてあるの読めるか?」
「おまえ!!どこまで悪魔なんだっ!!」
「うるさい。フランが王になると決めたからには全力でそれを支援したい。邪魔者は排除するのは基本だ。王はただでも敵が多いんだからな。可愛いわが子のつゆ払いだ」
「わが子って……フランは俺の子どもだろう!!」
「違う。もうオレとシアの子だ。あきらめろ。今まで行ってきたことを悔いて、寒い地で暮らせ。元気でな」
待てえええ!という俺の声もむなしく、することだけするとアルは扉を閉めて行ってしまった。なんてやつだ!!
恐ろしい目にあった。あれが本気のアルバート。天使の微笑みなんて言ってる父や他の奴らにみせてやりたい。
ふと静かになった部屋で一人になったことに気付く。
―――寂しい。孤独。空虚。
なんだこの結末は?なにもかも持っていたはずの王子が、なにもかもなくした。
あの美しい青い目をしたシアを最初から普通に愛していればこうなっていなかったのか?それともアルバートに嫉妬心を持たず、関わらなければよかったのか?
憎しみを通りこして、虚しさだけが残った。
ひねくれたねじ曲がった形の愛しか俺は示せなかった。本物の愛の形を彼女に贈っていれば俺にも贈りかえしてくれたかもしれない。
この後、イザベラがどうしたと聞いたら『あの女はオースティン殿下と共に断罪されるのは嫌だと言って逃げ出しましたよ。あなたが与えた宝石やドレスごと持って消えました』ということだった。
物や地位がなくなったらこんなものか……と苦笑した。
偽物の愛しか俺には残らなかったようだ。
俺は兵を連れて公爵領に乗り込んだ。しかし逆に俺が責められることになった。父王から厳しく叱責され、王位継承権を奪われ、今は部屋に謹慎中だ。
公爵領に勝手に侵入したことがそんなに悪いことか?たかだが臣下の領地じゃないか。臣下の物は王家の物だ!
ぎりっと奥歯をかみしめる。なぜ俺が幽閉のようなことをされているんだ?腹がたったから、食事を拒否し、まともに食べていないため、力が入らず座り込んでいる。
なにより腹が立つのは、アルバートにすべてを奪われたことだ。あいつはシアの心をどうやって手に入れた!?
フランは俺とシアの子なのに、アルとの子供だとシアは言い切った。その言葉にすべてが詰まっていた。俺とはなんの関係もないし、もはや関わりたくもないということだ。捨てられたのは……俺のほうか?
ドンっと拳で壁を叩く。憎しみが沸き起こる。アルバートをいますぐ消し去りたい。
トントンと扉をノックされる。こちらから開けれないから、それはパフォーマンスだろう。入りたいなら外側のカギを開けて入ってくればいい。
相手は俺の返事すら待たずに開けた。
目の前に憎らしいアルバートが立っていた。いつもと変わらない美しい顔に微笑みを浮かべている。
おまえからくるとはな!俺はどうやってアルバートを傷つけてやろうか考えた。
「怖い顔してるなぁ。これってオレが恨まれているのか?」
「わかってるなら来るな!」
「シアにさんざんひどいことをした男の末路をあざ笑いにきただけだよ」
これが本性。アルバートは実は怒ると怖い。そう皆が言っているのを聞いたことがあった。目の前の男は怒っていた。もしかして俺以上に怒っている気がした。人は自分以上に怒っている者を見たとき、我に返ると言うが……まさに俺はそうだった。アルの笑顔に背筋が寒くなった。
……笑っているのに怖い。目が笑っていない。むしろ絶対零度の凍土のように目が冷たい。俺は腹が減りすぎて動けないことを、今、心底後悔した。アルが何をしにきたのかなんとなくわかる。
「フランが次期王としての教育を受けることを決めたよ。オースティンはもう用なしってわけだ」
俺に対する敬称すらつけないところを見ると、今の俺は罪人扱いか?
「ブリジット地方の領地に引きこもるなら、オレは許すと陛下に言ったら、それで許してくれるならそうすると言ってくれた。領地に侵略したわりに優しい罰じゃないか?いや、それとも陛下もほとほと君に呆れて目の届かないところへやりたいのかな?」
「ブリジット地方だと……どこがだっ!!あの極寒の地の不毛の領土で、どうやって生きろと言うんだ!!」
アルはどの口が言うんだろう?と言って、服の袖からスッと抜き取った銀色の短剣を出した。刃が黒い。その黒さにギクリとした。
「あ、わかるか?毒を仕込んである。これをあげるよ。今、ここで自害するかそれともブリジット地方へ行くかどっちか選んでほしい」
「自害などするかっ!ブリジット地方にもいくわけがな……ぎゃあああ!」
金属の刃が俺の耳をかすめた。黒い刃は見てわかるように傷1つで致死量である毒が塗ってある。カタカタカタと俺の体が震えだした。
「大丈夫だよ。君が自害するなんて思ってない。そんな勇気もないだろう?オレが手伝ってあげるよ。もう一度聞くけど、ブリジット地方に引きこもるよなぁ?」
「……俺がここにいれば、フランの邪魔になるからか!?」
「わかってるじゃないか。フランが成長し、玉座につくときに、王位継承権を主張されても困るんだ。さっさとそういう芽は摘んでおきたい。どうする?ブリジット地方へ行くよな?それとも自害を手伝ってほしいか?選べ」
黒い刃を目の前でちらつかせる。悪人すぎるだろう!?アルは天使のようだと父王は言っていたが、これでは悪魔だ!!
「それにシアの周りをうろつかせたくない。おまえが彼女にしたことをオレはなんとなく察している。シアは言わないというか……心の傷が深すぎて言えないのだろうと思う。ここで刺せばオレの気分は最高なんだけどな。選ばせてやってるだけ偉いだろ?」
抑揚のない声音で淡々と話す。やり手の若い公爵。そういわれているアルバートは単なるお坊ちゃんじゃないことが嫌というほど、この瞬間わかった。
「くっ……ブリジット地方へ……い……いく」
アルが一枚の紙を出し、グッと俺の腕をつかむ。小さい針を取り出し、俺の指につきたてた。動けない俺はなされるがままだった。
「いっ!?」
紙に親指を押し付けられた。
「血判をもらっとく。『この契約を違えた時は死を持って償います』って書いてあるの読めるか?」
「おまえ!!どこまで悪魔なんだっ!!」
「うるさい。フランが王になると決めたからには全力でそれを支援したい。邪魔者は排除するのは基本だ。王はただでも敵が多いんだからな。可愛いわが子のつゆ払いだ」
「わが子って……フランは俺の子どもだろう!!」
「違う。もうオレとシアの子だ。あきらめろ。今まで行ってきたことを悔いて、寒い地で暮らせ。元気でな」
待てえええ!という俺の声もむなしく、することだけするとアルは扉を閉めて行ってしまった。なんてやつだ!!
恐ろしい目にあった。あれが本気のアルバート。天使の微笑みなんて言ってる父や他の奴らにみせてやりたい。
ふと静かになった部屋で一人になったことに気付く。
―――寂しい。孤独。空虚。
なんだこの結末は?なにもかも持っていたはずの王子が、なにもかもなくした。
あの美しい青い目をしたシアを最初から普通に愛していればこうなっていなかったのか?それともアルバートに嫉妬心を持たず、関わらなければよかったのか?
憎しみを通りこして、虚しさだけが残った。
ひねくれたねじ曲がった形の愛しか俺は示せなかった。本物の愛の形を彼女に贈っていれば俺にも贈りかえしてくれたかもしれない。
この後、イザベラがどうしたと聞いたら『あの女はオースティン殿下と共に断罪されるのは嫌だと言って逃げ出しましたよ。あなたが与えた宝石やドレスごと持って消えました』ということだった。
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