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第二章 試験編

幕間6.3 閨教育~その後 side.フェリクス

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「はぁ……。酷い目に合った」

 結局、一通り見終わるまで部屋から出して貰えなかった。
 ようやく開けられた扉からへろへろとしながら出てきた俺は、娼館の支配人に「またのお越しを~」と見送られて館を後にした。

 二度と来るつもりは無い。

 ちなみに後から知ったことだが、あの場で覗いていたのは俺たちだけではなかったらしい。

「閨教育は必要だが娼婦には触れたくないという、潔癖性の令息もいるからな。そういう息子のいる家に声を掛けておいたんだ」

 支配人は良い稼ぎになったと喜んでいたそうだ。あの男、やたらとニッコニコしていたのはそういう理由わけだったのか。
 

「フェリクス様、どうかされましたか」

 向かいに座る婚約者アニエスが、心配そうに俺の顔をのぞき込んだ。

「あ、ああ。ごめん。少しぼーっとしてた」
「お疲れですか?回復術をお掛けしましょうか」
「いや、大丈夫だ」

 こんなこと、アニエスに話せるわけがない。
 墓場まで持って行く秘密だ。

 ふと、彼女の首筋が目に入った。

 白くてきめ細やかな肌だ。
 首筋がなだらかな曲線を描き、胸元へと繋がっている。
 それが、手の届きそうなくらい近いところにあるのだ。

 あのブラウスの中も、同じくらい白いのだろうか。
 そこへ舌を這わせたら、君はどんな可愛らしい声を上げるのだろう。

 はっ。

 お、俺という奴は。
 婚約式も済んでいない女性に対して、なんて不埒な妄想を……!

「だぁぁぁーっ!」
「きゃっ!?」

 妄想をかき消すべく、大声で叫んで立ち上がる。
 
「な、なんだか急に素振りをしたくなったな!俺は修練場に行くから、君はゆっくりしていってくれ!」
「えっ、フェリクス様?いったいどうし……」

 アニエスを置いて、その場から走り去った。

 そうだ。溜まった欲望は身体を動かして昇華するに限る。
 俺は修練場に駆け込み、驚いている騎士たちを尻目に剣を持って素振りを始めた。

「501、502、503……」

 体力の限界まで、剣を降り続ける。

 翌日筋肉痛で動けなくなった俺は、事情を知った兄上と叔父上に大笑いされる羽目になったのだった。
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