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3巻
3-3
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「そうなんだ? 地獄のような日々だな。想像しただけで目眩が起こりそうだ。想像しちゃったから、ほら、俺の腕に鳥肌が」
実際に鳥肌の立った腕を見せると、ヘレンはぷぷっと噴き出した。
「ん? 何かおかしかった?」
何故笑われるのかわからなかったので、首を傾げて問いかける。
「ううん。ユーリは私よりも強いのに変わってるなぁって思ったの。ユーリだって、修練は毎日やっているんでしょ?」
「それは、ローラとディランがやれってうるさいから」
「一緒だよ。もし、ユーリが才能だけで修練をまったくしない人だったら、ここまでの気配は出せないもん」
「それは、買い被り過ぎだな。俺はやる気のないただのガキだよ」
しばらくすると、ケーキや飲み物が運ばれてきた。
ヘレンはそれを美味しい美味しいと絶賛しながら一口一口じっくり味わう。そんなヘレンを横目に、俺は彼女のノートを写しつつカフェラテを楽しんでいた。
口に運ぶたびに大袈裟に目を見開くヘレンを見ながら、俺は思わずペンを止めて話しかける。
「ヘレンは、ほんとに美味そうに食うな」
「んーん」
「おいおい。ちゃんと飲み込んでから話せよ」
「ふ……幸せ。ユーリ、この店のケーキやパフェは、幸せでできているよ」
「そうか。そんなに気に入ったんならここで働いたらどうだ? メニューの最後のページに求人があるぞ? 特待生にはなれたけど生活は苦しいんだろ?」
騎士学校の試験の時、ヘレンは貧乏だからという理由で昼食を用意していなかった。一応、入学してからは食べるようになったみたいだが、それでも余裕があるわけではないらしい。俺は知っている。彼女が学校に通いながら、どっかのレストランの皿洗いの仕事をしていることを。
「雇ってくれないよ、貧乏人の私なんか」
「何言っているんだ? 俺の知っているヘレンは、難関だといわれる騎士学校の一般入試を一発で合格して、特待生になった努力家だよ? ついでに言うと、こんな俺に授業のノートを見せてくれるいい奴だ。それ以上でもそれ以下でもない」
俺が言うと、ヘレンは何かを決めたように数回頷き、残りのケーキとパフェをぺろりと食べきった。
やはり、お菓子に対する女性の胃袋の大きさには驚くべきものがあるな。
そんなことを思いつつ、騎士学校の入試時と比べてヘレンは随分話しやすくなったなと、俺はしみじみ実感していた。
◆
今日は馬術の訓練で、運動場の端にある厩舎に来ていた。
「馬だ」
「馬だね」
「馬やな」
今俺は、ヘレンとロバートとともに厩舎にいる馬を見ている。
日本では馬に触れる機会など滅多になかったが、転生してからは何かと馬車での移動が多いので馬の扱いには慣れていた。
それに、ディランにもたまに乗り方を教えてもらっていたから、俺の【馬術】スキルはレベル4にまで上がっている。
「よしよし、元気だなぁ。お前達」
馬の頭を撫でてやると、俺の手に鼻先を擦り付けてくる。
「ユーリは、乗馬経験あるんか?」
俺が馬と戯れていると、ロバートが気になったのか問いかけてくる。
「ん? あー少しかな。遊び程度だな」
ディランは元冒険者とあって馬の扱いに長けているが、馬上での戦闘は本職ではないため、俺に本格的に教えるのは難しい。だからディランには、馬術は騎士学校で教えてもらえと言われていた。
「私は、初めてなんだ。緊張するなぁ。さ、触っても怒らないかな?」
ヘレンは、そう言って馬の頭を恐る恐る撫でようとしている。
怯えるヘレンを少しからかってやろうと、「機嫌が悪いと蹴られたり噛みつかれたりするらしいがな」と馬の危険について教えてやる。
すると、俺の言葉を真に受けたのか、ヘレンがぴぇっとその場で硬直した。
俺達のやり取りを見ていたロバートが溜め息交じりに笑う。
「そないヘレンを怖がらせてどないすんねん。この子らはちゃんと調教されてるわ」
ロバートが馬の頭を撫でると、ヘレンも安心した様子で「本当? 良かった」と安堵する。そして少し躊躇いながらも、馬の頭を撫でた。
その手が気持ちよいのか、馬も大人しく応じている。
授業の開始までそうやって三人で馬と戯れ合っていると、ようやくクリストがやってきて、1‐Eの生徒を集めて話を始めた。
「今日は乗馬訓練だ。ここにいる者で乗馬経験がある者はいるか?」
クリストの問いかけに対して、俺やロバートを含めてクラスの三分の一が手を挙げた。
やはり、乗馬未経験者は多いようだ。
馬は、維持費がかかるからね。
仕事や移動で馬を使う機会がある家でなければ、馬に触れることもないだろう。
「大体が未経験だな。特に王都出身者の移動は船が多いだろうから、乗馬したことのある者も少ないだろう。だが、四ヶ国平和協定によって他国との大規模な戦争がなくなったとはいえ、小競り合いやいざこざは日々起こっている。そんな時、騎士が扱うのは馬であり、ともに戦う友となるのだ。そういうことを意識しながら訓練を行うように」
クリストの言葉を聞き流して空を見ていると、いつの間にか授業が始まっていた。
「ふぁ……いい天気だな」
青空を眺めながら、ポクっポクっとゆっくり校舎の周りを乗馬する。
鞍は座りにくくて少し痛いが、自分で歩かなくていいのはやっぱり楽でいいな。
乗馬の授業中だが、クリストは未経験者に乗り方を教えるので一杯一杯らしく、俺達経験者は自習ということで適当に乗っていた。
「ユーリ。上手いやないか」
声がした方に視線を向けると、ロバートがやってくる。
「ロバートこそ、相当乗っているだろ?」
「それは……。まぁそうやな」
何気ない一言だったが、ロバートの表情に一瞬緊張が走ったように見えた。
何かあるのだろう……。
いや、それについては以前スキル【鑑定】で調べたので、俺は知っている。
ただ、特に興味もないし、触れもしない。余計なことを言って、俺が【鑑定】スキル保持者で、しかもレベルMAXだなんてばれるのはいろいろと面倒だしな。
「乗馬はいいよなぁ。歩かなくていいし」
そう言ってさりげなく話題を変えて空を見上げた。
「くは……ユーリらしい理由やな」
「勝手に運んでくれる動物っていいよな」
「ユーリは、馬を持っとるんやないんか?」
「家に馬はいるけど、俺のっていうわけじゃないし。それに馬もいいけど、持つならもっと乗り心地がよい奴がいいな」
「それやったら、魔物の使役にでも挑戦してみたらどうなん?」
この世界では、魔物に『使役の首輪』を付けることで意のままに操ることができる。
ただ、使役とはいっても、契約主と余程の力量差がなければ魔物は命令を聞かない。
一般に広く浸透しているのは、ゴンドラを引いてくれるミークだが、ミークとは、大昔、それを目的に魔物と動物とを合成して造り出した半魔である。
完全な魔物ではないから、使役しやすいのだ。
「いや、ミークでもなければ難しいだろう」
「いやいや。龍とかいけるんやないか?」
「ルーカス王国精鋭部隊の龍騎士のことを言っているなら無理だぞ? アレは『使役の首輪』の効力ではないと聞いたことがある。特別な契約や厳しい修業がいるんだとか。そこまでしなくちゃならないなら、俺は馬で十分だ」
この世界には大きく、聖獣と魔物、二種類のドラゴンがいる。いずれも見た目に大きな違いはないのだが、聖獣を龍、魔物をドラゴンと呼び分けているらしい。
龍の巣と呼ばれる雲海に暮らしているのが、聖獣に属する龍である。ルーカス王国は、そこに暮らす龍と特殊な契約を結んでいるんだそうだ。
聖獣にはコミュニティがあり、仮にも『使役の首輪』で強引に聖獣を従わせようものならコミュニティの長が黙っていないという。それこそ国一つが滅ぼされる危険性もあり、絶対の禁忌とされている。
一方、かつて三人の英雄が退治したのが、魔物の領域に棲んでいるドラゴンだ。こちらは知性に加えて凶暴さもあり英雄でもない限り使役なんて無理だ。
「そうなんか。初耳や」
アレ? あまり知られてないことだったのか? コラソン師匠から聞いたんだが。
「それに、龍って乗り心地がよくなさそうだから。いいや」
「フハハ……乗り心地って。やっぱり、ユーリの考え方は変わってんな」
「そうか。乗った時にモフモフしているかしていないかは、とても重要だと思うのだが……ん?」
そんな馬鹿話をしていると、ふと後方からドッドッドッと土を蹴る音が聞こえてくる。
会話をやめて振り返ると、凄まじい勢いで何かが迫ってきていた。
「誰か止めて~!!」
暴れ馬にまたがったヘレンだった。
「ど、どうしたんや!?」
「危なっ」
なんとか助けたかったが、ヘレンは猛スピードで俺とロバートの脇をすり抜けていった。
「なんやったんや?」
「さぁ?」
「ヘレンって、乗馬初めてのわりになかなかの馬捌きやんな」
ロバートが感心したように言う。
いや、アレって乗りこなしているっていうのだろうか?
「まぁ……ヘレンだし。大丈夫か」
その後ものんびり馬に乗りながら、ロバートと何気ない会話をして時間を潰した。
乗馬を終えてEクラスの生徒が再び集められる。
ヘレンはあの後どうやら落馬したらしく、泥だらけの姿で「何で助けてくれなかったの?」とぶつぶつ呟いている。
いや、あれは流石に無理だろ。
ヘレンに同情しつつ、前に立つクリストに視線を向けた。
「ケツは痛いか?」
クリストは、生徒達の表情を見回して満足そうに頷く。
「そうだろう。そうだろう。しかし、これでようやくお前達は人馬一体のスタートラインに立ったんだからな」
クリストはそう授業を締めくくった。
ようやく終わったと思ったのだが、クリストが思い出したように俺達のところに戻ってきて、ニヤリと笑って告げた。
「お前達が乗馬で通った道に、馬の糞が散乱しているから片付けておくように」
それを聞き、やっぱり馬は諦めようと俺は心に誓ったのであった。
◆
数日後――。
今、俺達Eクラスは、クリストとともに騎士学校の修練場に来ていた。
「お前ら、準備運動は済んだな」
騎士学校指定の胴着を身に着けた俺達。着慣れていないから何か背中がむず痒いな。
懸命に背中を掻いていたらクリストにぎろりと睨まれた。
「今からやるのは、騎士にとって必須の魔法である【プランク】の演習だ」
【プランク】は無属性の魔法で、肉体を魔力で強化する効果がある。
強化には制限があるものの戦闘においては万能な魔法だ。
無属性魔法の中では最も簡単な魔法であり、一般的によく使用されている。
今さら習うような魔法か?
そう考えていると生徒の中から手が挙がった。
「あの、質問よろしいでしょうか?」
その生徒の顔には見覚えがあるんだが、名前は何だったかな?
んー、忘れちゃった。
「ケールトンだったか。何だ、言ってみろ」
そうだ、ケールトンだった。
「無属性魔法の【プランク】は、流石に使えない生徒はいないと思うのですが。訓練する意味はあるのですか?」
「確かに【プランク】は簡単に思われがちだ。だが騎士にとって【プランク】は、基礎であり奥義でもある」
「それは、どういうことでしょうか?」
「言うだけではわかりづらいか。ケールトン、前に出てこい。俺と組手をやるぞ」
ケールトンはクリストとの力量差を当然わかっているようで、顔を強張らせる。
構えるケールトンに対し、クリストはケールトンの肩に手を置いて言った。
「心配するな。俺はこの場から動かない。ケールトンは【プランク】を使って攻撃してこい」
「は、はい」
それからクリストとケールトンが修練場の真ん中で向き合い、組手を行うことになった。
俺を含めた他の生徒は二人を囲むように見守る。
「いつでも来ていいぞ」
クリストに言われて、ケールトンが先に動く。
左右に身体を動かし、フェイントを入れてから右の拳を突き出した。
「は!」
ケールトンは動きの鋭さから見て、脚力と右腕を【プランク】で強化しているようだった。
ただ、クリストはケールトンの攻撃を予測していたかのような動きで軽くいなす。
「甘いな」
その後もクリストは、ケールトンの猛攻を涼しい顔で躱し続けた。
三分が経過し、ケールトンが疲れて座り込んでしまったところで終了となった。
ケールトンが息を切らして座り込んでいるのに対して、クリストは何事もなかったように生徒の前に立って授業を再開する。
「【プランク】を使用する際に魔力の制御が未熟だと、スムーズな肉体強化が行えない。そうなれば、次の動作を容易に相手に読まれることになる。対人戦が主戦場である騎士にとってそれは致命的な欠点になる」
確かにその通りだと思うが、正直なところ、相手が【プランク】を使用しているかどうかなんて判別するのは難しくないか? リムみたいに『アズライトの瞳』で魔力の流れが見えれば別だが。
「【プランク】の技術は地道に組手で鍛えていくしかない。これから力量の近い者同士で二人組を作る。互いに【プランク】を使用し、相手の動きを予測したり予測されないようにしたりする訓練を行え」
クリストに指示された通りに二人組が作られていく。
ヘレンかロバートが組手の相手になるかと思ったが、不意に近寄ってきたクリストに肩を叩かれ、「お前の相手は俺だ」と呼び止められてしまうのだった。
それから、生徒達はそれぞれに組手相手と【プランク】の訓練を開始する。
俺一人がクリストの相手らしい。正直げんなりする。
なんで、わざわざこんな面倒な奴と組まないといかんのか。
「ノア様が認めたお前の実力を見てみたかったんだ」
そう言ってクリストは愉快そうに笑う。
……何故、ノア様の名前が出てくるんだろう。すごく嫌な予感がするんだが。
「そういえば言い忘れていたが、俺はノア様の命令で騎士団から学校に派遣された騎士の一人なんだ」
あの糞爺め。何余計なことをやってくれてるんだ!
心の中で悪態を吐いていると、クリストが拳を構えて一気に殺気を放出する。
「では……始めようか」
ふぅ。ノア様ほどでないにしても、腹の底から込み上げてくるものがある。
一呼吸置いて拳を構える。面倒だが、殴られて痛いのは嫌だから仕方ない。
「……」
うむ。クリストの構えにあまりに隙がない。下手に強者の間合いに入るわけにもいかない。どうしたものかと、考えていると――。
「来ないなら俺から行かせてもらう」
クリストが真剣な表情でそう言って、巨体に似つかわしくない素早い動きで飛びかかってくる。
おそらくクリストは【プランク】を使ったのだろう。恐ろしい速さで間合いを詰められて、拳が突き出される。
「速っ」
繰り出された拳を紙一重で回避する。
クリストの予想以上の動きに動揺しながらも、俺も無魔法の【プランク】を使用する。
すると全身が暖かく熱を帯びて強化されるのがわかった。
しかし、クリストは俺に攻撃の隙を与えないように怒涛のラッシュで牽制してくる。
「どうした、攻撃はまだか?」
「っ」
それからしばらくの間、紙一重で回避するのがやっとで攻撃ができなかった。
攻めは最大の防御とはよく言ったものだ。
幸いクリストの攻撃が単調で読みやすいから、何とか避けられている。
どうやら手加減されているようだ。
「一矢報いてやる」
クリストが左の拳を突き出したところで、咄嗟に脚力に【プランク】を集中させて素早く飛び上がる。そして、クリストの左腕を支点にして、顔を目掛け回し蹴りする。
「っ……やるな。しかし、軽い」
蹴り出した足を掴まれてクリストに軽々と投げ飛ばされた。
俺は素早く身体を回転させ勢いを殺し、クリストから三メートル離れた場所に着地する。
「ここまでだな」
クリストがそう言うと、いつの間にか俺とクリストを囲んで観戦していた生徒達から、一斉に拍手が沸き起こった。
何だよ。ズリーな、周りの奴らは見ていただけかよ。
「はぁ……疲れた」
後ろに尻餅をついて座り込む。すると観戦していた生徒が集まってきた。
「すごいな。おまえ」
「先生の攻撃を予測していたかのように躱してたな」
「いや、あの状況で反撃できたのもすごいぜ。そんな隙、まったくなかったろ?」
皆は興奮した面持ちで口々に試合のことを言ってくる。
「はは、いいものが見られたな。お前達も鍛錬に励むように」
この試合を境に、クラス内で一目置かれるようになり、更に演習のたびにクリストの相手をさせられることになるのだが、その時の俺はまだそんなことを知らない。
◆
騎士学校でユーリが在籍するEクラスの担任を務めるクリストは、クリムゾン王国の王城を一人歩いていた。
騎士学校で見かける少しだらしない格好ではなく、気品が溢れる貴族服を着ていた。
クリストはとある扉の前で立ち止まり、ノックする。
「クリスト・インカーです」
「入るがよい」
室内では、この部屋の主であるノア・サーバントがデスクで書類仕事をしていた。
王直属の近衛でも最上位の紅蓮騎士団団長を務めているノア・サーバント。
その二つ名は『クリムゾンの神剣』。クリムゾン王国最強の騎士である。
そんなノアの執務室に入ったクリストは、「失礼します」と短く言って頭を下げた。
「ほほ、少し疲れているようじゃな。教師仕事は大変かの?」
ノアは書類をデスクの上に置いてクリストに視線を向けると、愉快そうに笑いながら言った。
「そうですね。慣れないことも多いので。でもノア様には感謝しておりますよ。おかげさまで、病にかかって容体の優れなかった妻との時間が取れるようになりました。騎士団にいればこのようにはできないですから」
クリストは苦笑しながらノアに返答する。
「そうかの? それは、よかった。お主の奥方の体調は優れぬままか?」
「だいぶ元気が戻ってきて、飲む薬も減ってきています」
「ほほ。騎士学校に派遣されている二年の間は、存分に尽くしてやるのじゃな」
ノアにそう言われたクリストは、顔を引きつらせながら笑った。
「おっと、本題じゃな。ソファに座ってくれ」
ノアはそう言ってメイドを呼ぶと、紅茶の準備をさせる。
「それで、騎士学校の腐敗状況はどうじゃ」
クリストは執務室のソファに腰掛けながら、「相当ですね。おそらく騎士団からの天下りを斡旋する幹部職員がいるのでしょう」と応えた。
「うむ……昔の騎士学校の形に戻そうと考えている儂の邪魔になるやもしれん。仕事を増やすことになるが、騎士学校の校長に加えて幹部職員の粗も探ってくれるかの」
「かしこまりました」
実際に鳥肌の立った腕を見せると、ヘレンはぷぷっと噴き出した。
「ん? 何かおかしかった?」
何故笑われるのかわからなかったので、首を傾げて問いかける。
「ううん。ユーリは私よりも強いのに変わってるなぁって思ったの。ユーリだって、修練は毎日やっているんでしょ?」
「それは、ローラとディランがやれってうるさいから」
「一緒だよ。もし、ユーリが才能だけで修練をまったくしない人だったら、ここまでの気配は出せないもん」
「それは、買い被り過ぎだな。俺はやる気のないただのガキだよ」
しばらくすると、ケーキや飲み物が運ばれてきた。
ヘレンはそれを美味しい美味しいと絶賛しながら一口一口じっくり味わう。そんなヘレンを横目に、俺は彼女のノートを写しつつカフェラテを楽しんでいた。
口に運ぶたびに大袈裟に目を見開くヘレンを見ながら、俺は思わずペンを止めて話しかける。
「ヘレンは、ほんとに美味そうに食うな」
「んーん」
「おいおい。ちゃんと飲み込んでから話せよ」
「ふ……幸せ。ユーリ、この店のケーキやパフェは、幸せでできているよ」
「そうか。そんなに気に入ったんならここで働いたらどうだ? メニューの最後のページに求人があるぞ? 特待生にはなれたけど生活は苦しいんだろ?」
騎士学校の試験の時、ヘレンは貧乏だからという理由で昼食を用意していなかった。一応、入学してからは食べるようになったみたいだが、それでも余裕があるわけではないらしい。俺は知っている。彼女が学校に通いながら、どっかのレストランの皿洗いの仕事をしていることを。
「雇ってくれないよ、貧乏人の私なんか」
「何言っているんだ? 俺の知っているヘレンは、難関だといわれる騎士学校の一般入試を一発で合格して、特待生になった努力家だよ? ついでに言うと、こんな俺に授業のノートを見せてくれるいい奴だ。それ以上でもそれ以下でもない」
俺が言うと、ヘレンは何かを決めたように数回頷き、残りのケーキとパフェをぺろりと食べきった。
やはり、お菓子に対する女性の胃袋の大きさには驚くべきものがあるな。
そんなことを思いつつ、騎士学校の入試時と比べてヘレンは随分話しやすくなったなと、俺はしみじみ実感していた。
◆
今日は馬術の訓練で、運動場の端にある厩舎に来ていた。
「馬だ」
「馬だね」
「馬やな」
今俺は、ヘレンとロバートとともに厩舎にいる馬を見ている。
日本では馬に触れる機会など滅多になかったが、転生してからは何かと馬車での移動が多いので馬の扱いには慣れていた。
それに、ディランにもたまに乗り方を教えてもらっていたから、俺の【馬術】スキルはレベル4にまで上がっている。
「よしよし、元気だなぁ。お前達」
馬の頭を撫でてやると、俺の手に鼻先を擦り付けてくる。
「ユーリは、乗馬経験あるんか?」
俺が馬と戯れていると、ロバートが気になったのか問いかけてくる。
「ん? あー少しかな。遊び程度だな」
ディランは元冒険者とあって馬の扱いに長けているが、馬上での戦闘は本職ではないため、俺に本格的に教えるのは難しい。だからディランには、馬術は騎士学校で教えてもらえと言われていた。
「私は、初めてなんだ。緊張するなぁ。さ、触っても怒らないかな?」
ヘレンは、そう言って馬の頭を恐る恐る撫でようとしている。
怯えるヘレンを少しからかってやろうと、「機嫌が悪いと蹴られたり噛みつかれたりするらしいがな」と馬の危険について教えてやる。
すると、俺の言葉を真に受けたのか、ヘレンがぴぇっとその場で硬直した。
俺達のやり取りを見ていたロバートが溜め息交じりに笑う。
「そないヘレンを怖がらせてどないすんねん。この子らはちゃんと調教されてるわ」
ロバートが馬の頭を撫でると、ヘレンも安心した様子で「本当? 良かった」と安堵する。そして少し躊躇いながらも、馬の頭を撫でた。
その手が気持ちよいのか、馬も大人しく応じている。
授業の開始までそうやって三人で馬と戯れ合っていると、ようやくクリストがやってきて、1‐Eの生徒を集めて話を始めた。
「今日は乗馬訓練だ。ここにいる者で乗馬経験がある者はいるか?」
クリストの問いかけに対して、俺やロバートを含めてクラスの三分の一が手を挙げた。
やはり、乗馬未経験者は多いようだ。
馬は、維持費がかかるからね。
仕事や移動で馬を使う機会がある家でなければ、馬に触れることもないだろう。
「大体が未経験だな。特に王都出身者の移動は船が多いだろうから、乗馬したことのある者も少ないだろう。だが、四ヶ国平和協定によって他国との大規模な戦争がなくなったとはいえ、小競り合いやいざこざは日々起こっている。そんな時、騎士が扱うのは馬であり、ともに戦う友となるのだ。そういうことを意識しながら訓練を行うように」
クリストの言葉を聞き流して空を見ていると、いつの間にか授業が始まっていた。
「ふぁ……いい天気だな」
青空を眺めながら、ポクっポクっとゆっくり校舎の周りを乗馬する。
鞍は座りにくくて少し痛いが、自分で歩かなくていいのはやっぱり楽でいいな。
乗馬の授業中だが、クリストは未経験者に乗り方を教えるので一杯一杯らしく、俺達経験者は自習ということで適当に乗っていた。
「ユーリ。上手いやないか」
声がした方に視線を向けると、ロバートがやってくる。
「ロバートこそ、相当乗っているだろ?」
「それは……。まぁそうやな」
何気ない一言だったが、ロバートの表情に一瞬緊張が走ったように見えた。
何かあるのだろう……。
いや、それについては以前スキル【鑑定】で調べたので、俺は知っている。
ただ、特に興味もないし、触れもしない。余計なことを言って、俺が【鑑定】スキル保持者で、しかもレベルMAXだなんてばれるのはいろいろと面倒だしな。
「乗馬はいいよなぁ。歩かなくていいし」
そう言ってさりげなく話題を変えて空を見上げた。
「くは……ユーリらしい理由やな」
「勝手に運んでくれる動物っていいよな」
「ユーリは、馬を持っとるんやないんか?」
「家に馬はいるけど、俺のっていうわけじゃないし。それに馬もいいけど、持つならもっと乗り心地がよい奴がいいな」
「それやったら、魔物の使役にでも挑戦してみたらどうなん?」
この世界では、魔物に『使役の首輪』を付けることで意のままに操ることができる。
ただ、使役とはいっても、契約主と余程の力量差がなければ魔物は命令を聞かない。
一般に広く浸透しているのは、ゴンドラを引いてくれるミークだが、ミークとは、大昔、それを目的に魔物と動物とを合成して造り出した半魔である。
完全な魔物ではないから、使役しやすいのだ。
「いや、ミークでもなければ難しいだろう」
「いやいや。龍とかいけるんやないか?」
「ルーカス王国精鋭部隊の龍騎士のことを言っているなら無理だぞ? アレは『使役の首輪』の効力ではないと聞いたことがある。特別な契約や厳しい修業がいるんだとか。そこまでしなくちゃならないなら、俺は馬で十分だ」
この世界には大きく、聖獣と魔物、二種類のドラゴンがいる。いずれも見た目に大きな違いはないのだが、聖獣を龍、魔物をドラゴンと呼び分けているらしい。
龍の巣と呼ばれる雲海に暮らしているのが、聖獣に属する龍である。ルーカス王国は、そこに暮らす龍と特殊な契約を結んでいるんだそうだ。
聖獣にはコミュニティがあり、仮にも『使役の首輪』で強引に聖獣を従わせようものならコミュニティの長が黙っていないという。それこそ国一つが滅ぼされる危険性もあり、絶対の禁忌とされている。
一方、かつて三人の英雄が退治したのが、魔物の領域に棲んでいるドラゴンだ。こちらは知性に加えて凶暴さもあり英雄でもない限り使役なんて無理だ。
「そうなんか。初耳や」
アレ? あまり知られてないことだったのか? コラソン師匠から聞いたんだが。
「それに、龍って乗り心地がよくなさそうだから。いいや」
「フハハ……乗り心地って。やっぱり、ユーリの考え方は変わってんな」
「そうか。乗った時にモフモフしているかしていないかは、とても重要だと思うのだが……ん?」
そんな馬鹿話をしていると、ふと後方からドッドッドッと土を蹴る音が聞こえてくる。
会話をやめて振り返ると、凄まじい勢いで何かが迫ってきていた。
「誰か止めて~!!」
暴れ馬にまたがったヘレンだった。
「ど、どうしたんや!?」
「危なっ」
なんとか助けたかったが、ヘレンは猛スピードで俺とロバートの脇をすり抜けていった。
「なんやったんや?」
「さぁ?」
「ヘレンって、乗馬初めてのわりになかなかの馬捌きやんな」
ロバートが感心したように言う。
いや、アレって乗りこなしているっていうのだろうか?
「まぁ……ヘレンだし。大丈夫か」
その後ものんびり馬に乗りながら、ロバートと何気ない会話をして時間を潰した。
乗馬を終えてEクラスの生徒が再び集められる。
ヘレンはあの後どうやら落馬したらしく、泥だらけの姿で「何で助けてくれなかったの?」とぶつぶつ呟いている。
いや、あれは流石に無理だろ。
ヘレンに同情しつつ、前に立つクリストに視線を向けた。
「ケツは痛いか?」
クリストは、生徒達の表情を見回して満足そうに頷く。
「そうだろう。そうだろう。しかし、これでようやくお前達は人馬一体のスタートラインに立ったんだからな」
クリストはそう授業を締めくくった。
ようやく終わったと思ったのだが、クリストが思い出したように俺達のところに戻ってきて、ニヤリと笑って告げた。
「お前達が乗馬で通った道に、馬の糞が散乱しているから片付けておくように」
それを聞き、やっぱり馬は諦めようと俺は心に誓ったのであった。
◆
数日後――。
今、俺達Eクラスは、クリストとともに騎士学校の修練場に来ていた。
「お前ら、準備運動は済んだな」
騎士学校指定の胴着を身に着けた俺達。着慣れていないから何か背中がむず痒いな。
懸命に背中を掻いていたらクリストにぎろりと睨まれた。
「今からやるのは、騎士にとって必須の魔法である【プランク】の演習だ」
【プランク】は無属性の魔法で、肉体を魔力で強化する効果がある。
強化には制限があるものの戦闘においては万能な魔法だ。
無属性魔法の中では最も簡単な魔法であり、一般的によく使用されている。
今さら習うような魔法か?
そう考えていると生徒の中から手が挙がった。
「あの、質問よろしいでしょうか?」
その生徒の顔には見覚えがあるんだが、名前は何だったかな?
んー、忘れちゃった。
「ケールトンだったか。何だ、言ってみろ」
そうだ、ケールトンだった。
「無属性魔法の【プランク】は、流石に使えない生徒はいないと思うのですが。訓練する意味はあるのですか?」
「確かに【プランク】は簡単に思われがちだ。だが騎士にとって【プランク】は、基礎であり奥義でもある」
「それは、どういうことでしょうか?」
「言うだけではわかりづらいか。ケールトン、前に出てこい。俺と組手をやるぞ」
ケールトンはクリストとの力量差を当然わかっているようで、顔を強張らせる。
構えるケールトンに対し、クリストはケールトンの肩に手を置いて言った。
「心配するな。俺はこの場から動かない。ケールトンは【プランク】を使って攻撃してこい」
「は、はい」
それからクリストとケールトンが修練場の真ん中で向き合い、組手を行うことになった。
俺を含めた他の生徒は二人を囲むように見守る。
「いつでも来ていいぞ」
クリストに言われて、ケールトンが先に動く。
左右に身体を動かし、フェイントを入れてから右の拳を突き出した。
「は!」
ケールトンは動きの鋭さから見て、脚力と右腕を【プランク】で強化しているようだった。
ただ、クリストはケールトンの攻撃を予測していたかのような動きで軽くいなす。
「甘いな」
その後もクリストは、ケールトンの猛攻を涼しい顔で躱し続けた。
三分が経過し、ケールトンが疲れて座り込んでしまったところで終了となった。
ケールトンが息を切らして座り込んでいるのに対して、クリストは何事もなかったように生徒の前に立って授業を再開する。
「【プランク】を使用する際に魔力の制御が未熟だと、スムーズな肉体強化が行えない。そうなれば、次の動作を容易に相手に読まれることになる。対人戦が主戦場である騎士にとってそれは致命的な欠点になる」
確かにその通りだと思うが、正直なところ、相手が【プランク】を使用しているかどうかなんて判別するのは難しくないか? リムみたいに『アズライトの瞳』で魔力の流れが見えれば別だが。
「【プランク】の技術は地道に組手で鍛えていくしかない。これから力量の近い者同士で二人組を作る。互いに【プランク】を使用し、相手の動きを予測したり予測されないようにしたりする訓練を行え」
クリストに指示された通りに二人組が作られていく。
ヘレンかロバートが組手の相手になるかと思ったが、不意に近寄ってきたクリストに肩を叩かれ、「お前の相手は俺だ」と呼び止められてしまうのだった。
それから、生徒達はそれぞれに組手相手と【プランク】の訓練を開始する。
俺一人がクリストの相手らしい。正直げんなりする。
なんで、わざわざこんな面倒な奴と組まないといかんのか。
「ノア様が認めたお前の実力を見てみたかったんだ」
そう言ってクリストは愉快そうに笑う。
……何故、ノア様の名前が出てくるんだろう。すごく嫌な予感がするんだが。
「そういえば言い忘れていたが、俺はノア様の命令で騎士団から学校に派遣された騎士の一人なんだ」
あの糞爺め。何余計なことをやってくれてるんだ!
心の中で悪態を吐いていると、クリストが拳を構えて一気に殺気を放出する。
「では……始めようか」
ふぅ。ノア様ほどでないにしても、腹の底から込み上げてくるものがある。
一呼吸置いて拳を構える。面倒だが、殴られて痛いのは嫌だから仕方ない。
「……」
うむ。クリストの構えにあまりに隙がない。下手に強者の間合いに入るわけにもいかない。どうしたものかと、考えていると――。
「来ないなら俺から行かせてもらう」
クリストが真剣な表情でそう言って、巨体に似つかわしくない素早い動きで飛びかかってくる。
おそらくクリストは【プランク】を使ったのだろう。恐ろしい速さで間合いを詰められて、拳が突き出される。
「速っ」
繰り出された拳を紙一重で回避する。
クリストの予想以上の動きに動揺しながらも、俺も無魔法の【プランク】を使用する。
すると全身が暖かく熱を帯びて強化されるのがわかった。
しかし、クリストは俺に攻撃の隙を与えないように怒涛のラッシュで牽制してくる。
「どうした、攻撃はまだか?」
「っ」
それからしばらくの間、紙一重で回避するのがやっとで攻撃ができなかった。
攻めは最大の防御とはよく言ったものだ。
幸いクリストの攻撃が単調で読みやすいから、何とか避けられている。
どうやら手加減されているようだ。
「一矢報いてやる」
クリストが左の拳を突き出したところで、咄嗟に脚力に【プランク】を集中させて素早く飛び上がる。そして、クリストの左腕を支点にして、顔を目掛け回し蹴りする。
「っ……やるな。しかし、軽い」
蹴り出した足を掴まれてクリストに軽々と投げ飛ばされた。
俺は素早く身体を回転させ勢いを殺し、クリストから三メートル離れた場所に着地する。
「ここまでだな」
クリストがそう言うと、いつの間にか俺とクリストを囲んで観戦していた生徒達から、一斉に拍手が沸き起こった。
何だよ。ズリーな、周りの奴らは見ていただけかよ。
「はぁ……疲れた」
後ろに尻餅をついて座り込む。すると観戦していた生徒が集まってきた。
「すごいな。おまえ」
「先生の攻撃を予測していたかのように躱してたな」
「いや、あの状況で反撃できたのもすごいぜ。そんな隙、まったくなかったろ?」
皆は興奮した面持ちで口々に試合のことを言ってくる。
「はは、いいものが見られたな。お前達も鍛錬に励むように」
この試合を境に、クラス内で一目置かれるようになり、更に演習のたびにクリストの相手をさせられることになるのだが、その時の俺はまだそんなことを知らない。
◆
騎士学校でユーリが在籍するEクラスの担任を務めるクリストは、クリムゾン王国の王城を一人歩いていた。
騎士学校で見かける少しだらしない格好ではなく、気品が溢れる貴族服を着ていた。
クリストはとある扉の前で立ち止まり、ノックする。
「クリスト・インカーです」
「入るがよい」
室内では、この部屋の主であるノア・サーバントがデスクで書類仕事をしていた。
王直属の近衛でも最上位の紅蓮騎士団団長を務めているノア・サーバント。
その二つ名は『クリムゾンの神剣』。クリムゾン王国最強の騎士である。
そんなノアの執務室に入ったクリストは、「失礼します」と短く言って頭を下げた。
「ほほ、少し疲れているようじゃな。教師仕事は大変かの?」
ノアは書類をデスクの上に置いてクリストに視線を向けると、愉快そうに笑いながら言った。
「そうですね。慣れないことも多いので。でもノア様には感謝しておりますよ。おかげさまで、病にかかって容体の優れなかった妻との時間が取れるようになりました。騎士団にいればこのようにはできないですから」
クリストは苦笑しながらノアに返答する。
「そうかの? それは、よかった。お主の奥方の体調は優れぬままか?」
「だいぶ元気が戻ってきて、飲む薬も減ってきています」
「ほほ。騎士学校に派遣されている二年の間は、存分に尽くしてやるのじゃな」
ノアにそう言われたクリストは、顔を引きつらせながら笑った。
「おっと、本題じゃな。ソファに座ってくれ」
ノアはそう言ってメイドを呼ぶと、紅茶の準備をさせる。
「それで、騎士学校の腐敗状況はどうじゃ」
クリストは執務室のソファに腰掛けながら、「相当ですね。おそらく騎士団からの天下りを斡旋する幹部職員がいるのでしょう」と応えた。
「うむ……昔の騎士学校の形に戻そうと考えている儂の邪魔になるやもしれん。仕事を増やすことになるが、騎士学校の校長に加えて幹部職員の粗も探ってくれるかの」
「かしこまりました」
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