無能な俺が、年下騎士さまの溺愛ゲージを溜める話。

ツキハ|BL小説

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1章 ニート、日当たりのよい部屋に住む。

※ニートは気持ちがいいセックスの方がいい。

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 後ろに撫でつけられた、オールバック風の白銀の髪。騎士らしくがっしりとした、ニートの俺とは全く違う男らしさの中に、なんとも力強い藍色の瞳が備わっていて、一目見るだけで、男の俺ですら惹きつけられてしまう格好良さ。

 茶色のマントはところどころ赤黒く染まっていて、鉄さびに似た匂いが漂うあたり、おそらく戦場帰りに違いなかった。

 婚姻は成ったとはいえ、未だ戦が続く地域もあるのが現状だ。そうして、血の匂いの中で、旦那様のお出迎えは、あっさりと終わった。

 

 俺の方を見ることすらなく部屋に引っ込んでいった彼が、夕食後に俺の部屋へやってくると聞く。風呂場で尻を洗って準備ができ次第、こちらのワインをお召し上がりください、と可愛いメイドさんに手渡されたそれを風呂上りに口にすれば、あまりの美味しさに一気に飲み干してしまった。

 もうなくなってしまった……としょんぼりしつつ、暇でベッドに転がっていれば、段々と体が火照る感覚がする。意外と度数のあるワインだったのかも。そう酒に詳しくもない頭で考えたけど、それにしたってちょっとおかしい。

 
「う、ぁ」

 用意されていたバスローブが肌に擦れるだけでも、こう、滅茶苦茶えっちな気分になるし、言ってしまうと完全に勃っている。確かに最近自分でもあんまりしていなかったが、これから旦那が来るというのにこれはまずい。一応丹念に洗った尻が何故か疼く気すらして、形だけの夜なのに、期待している感全開になっていて笑ってしまう。

 そう思った直後。ギィ、と部屋の扉が開かれて、薄暗い室内で、他人の気配が近づいてくる。ぼうっとする頭で見上げれば、思った通りの白銀の髪がおろされていて、昼とは違った雰囲気でどきりとする。


「今夜の性交は、形だけのものだ。入れたらすぐ終わる」
「は、ぇ」

 思ったよりも低く、腹に響きそうな声だなと、どうでもいいことを思う。ぐっと脚を掴まれて、仰向けのまま尻も下のものも曝け出す格好になり、いくらニートと言えども恥が勝つ。ぐっと旦那様のものが押し付けられるが、そこで彼がぴたりと止まった。

「……準備はしていないのか」

 準備って何の……? ぼけっとしていたら、ベッドサイドの引き出しから何かを取り出した旦那様が、それを躊躇いなく俺の腹にぶちまける。ひんやりとした感触に思わず悲鳴をあげたけど、完璧に無視され、そして。


 にゅるりと、何かが入ってくる感触。いや、わかる。この場合これは、旦那様の指以外であるはずがない。現実逃避だ。初めての異物感に、酒が無ければ取り乱していたかもしれないと、メイドさんに感謝しておく。


 違和感はあるが、まあ、痛いわけじゃないから全然平気。というか、あれか。準備ってこれ、尻洗うプラス、指でならしておいてねってことだったのだろうか。

 前の旦那との間には肉体関係なんてなかったし、そもそも金のための形式的なものだったから、無縁すぎて知らなかった。旦那様が怒って無さそうなのが救いだ。お手数かけて申し訳ない。



 そうやって、力を抜いて余裕しゃくしゃくで尻を差し出していた時だった。

「っぁ」
「何かあるな」

 最初は小さな違和感。それが、ぐりぐりと、そこばかりを狙って指先でもまれるうちに、目に見えて体に変化が起きる。息が乱れて、無意識にそこばかり意識してしまうから、さらに感覚が鋭くなる。ぼーっとしてばかりもいられなくなって、必死に枕に顔を埋めて堪えるしかなくなった。

 信じがたいことに、何度かイってしまったようで、前は既にぐちゃぐちゃだ。ようやく指が引き抜かれた時には、ほっとすると同時に、物足りなさすら感じているのがわかって、我ながら困惑する。だが。


「もう少しで終わるから、力を抜いておけ」

 枕から顔をあげた俺に覆いかぶさる彼の声が、耳元におとされる。その声は、確かに事務的で、温度もさほど感じられなかったけれど、俺を下に見ているようなものでもなく。なるほど、この人も俺も、国のために使われているという一点は一緒だしなと、ちょっとだけ身近に感じた。


「は、い」

 小さく頷いて、言われた通りに力を抜く。ゆっくりと入ってくるその質量に、あれ、これまだ入ってない? 大丈夫か? と、何かのアトラクションじみた恐怖と好奇心を抱きつつ、中がみっちりと埋め尽くされる未知の感覚に震えておく。


 少しして、ようやく彼の動きが止まったので、ちゃんと入ったのかなと下の方に目をやれば、生々しい現実が見えて、謎の感動を覚えてしまった。いや、しかし。それにしても。

 中にある暖かいソレが、どくどくと脈打っているように感じられ、とてもいたたまれない。一度意識してしまうと、時折俺も力が入りかけてしまって、そのたびに彼が小さく呻くから大変申し訳ない。


「抜くぞ」

 あぁ、終わるのかとほっとしていたら、ずるりと少しずつ引き抜かれる感触が、想像以上に未知の快楽で、思わず声も出てしまう。いっそ名残り惜しそうなくらいだったかもしれない。必死に枕を抱きしめて、ついでに尻の穴も偶に締めていたら、ついに目の前の彼が口を開いた。


「っ、誘惑しようとしても無駄だ」

 いやなんの話だろうか。もっとしてほしいとはちょっと思ったから、それのことかもしれない。ぼうっとしながらも、これは謝罪しとくべきかなと思う。

「ごめ、なさ、でも、気持ちがよくて」

 ついでに本音もポロリしてしまったが、これはもう仕方がない。俺には仕事の才能はなかったが、尻を掘られる才能はあったのかもしれない。どこで使うんだよその才能。やっぱニートが適職か。


 うめき声と共に引き抜かれたそれを、名残惜しそうに見つめていたら、シーツを被せられた後で、彼が俺の隣に寝転がる。一緒に眠ってはくれるらしい。

 血に飢えた悪魔さんも、夜は眠る人間だったということだ。昼間かいだ血の匂いが薄れていくのを感じながら、俺も一緒に目を閉じた。
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