無能な俺が、年下騎士さまの溺愛ゲージを溜める話。

ツキハ|BL小説

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4章 ニート、陽当たりを愛ス。

ニートは暖かいソファを大切にしている。

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 あと一週間しかないのに、相変わらず答えはわからない。そういう状況であるから、流石の俺も焦っていた。今回はレガルさまは長期に王城の仕事でに拘束されるらしく、丁度帰ってくるのが期日の日だ。故に何としても、役に立たない騎士なチェリーワインくんに役に立ってもらわねばならない。

「ですので、レガルさまはド変態の乳首好きだから、今まで見合いの相手にドン引きされた結果結婚出来ないようになったのだと思っていたんです」
「お前の中でのレガルどんだけ格好悪い変態男なんだよ。ひょっとして嫌いなのか?」
「好きですよ?」
「ふ……ルシアは特別優しい子なので、そんじょそこらの人間と同じにしてもらっては困りますね。ちなみに僕のことも好きですよね?」
「おうクドラスさま。目が血走ってんぞ」

 それは当然大好きなので頷いておけば、にこにこ笑顔のクドラスさまが、チェリーワインくんに問うてくれる。

「なら、なぜ彼は婚姻を結んでこなかったのですか。戦場での噂は耳にしていますが、それだけが理由ではないでしょう?」
「あー。前に何度か、血濡れのまま戦場から戻った時にご令嬢とトラブルを起こしたことがあってな。そこで噂に尾ひれがついて悪評になったってのと、単純に愛想が悪すぎて相手を怒らせることもあったらしい」

「初手でルシア様を端の部屋に通した挙句外出も禁ずるあたり、その話は信憑性がありますね」
「俺はありがたかったけどね~」
「ルシア様くらいですよ、そんな方は」

 本日分の手紙をお出ししておきます、と言い残して部屋から出て行く執事を見送って視線を戻すと、チェリーワインくんが眉を寄せてこちらを見ていたので首を傾げる。

「どうしたんですか」
「お前、そんな態度とられてよく怒らなかったな。仮にも国同士の婚姻だぞ」
「へえ。僕からルシアを奪っておいてそういう扱いを。へえ……」
「ほら、クドラスさまがこんなんなってるくらいには酷い扱いだったってことだぞ、ルシア」

 クドラスさまを指さしながら呆れた声を出すチェリーワインくんが、俺に諭すようなことを言う。まあ確かに、本来であれば馬鹿にしている~、とか、そうやって怒るんだと思う。執事はそんな感じだったし。

 望まない婚姻だったとはいえ、本来であれば相手を尊重して会話をするくらいはすべきだと、クドラスさまは吐き捨てる。そのくらいに非常識な行いなのだと今更ながらに不思議な実感を得たけど、ならば、なぜレガルさまは、多少のリスクがあるかもしれないのにそんな態度をとったのだろうか。

 表面上当たり障りのない会話をして、互いに納得の上家庭内別居のようにする。そういう風にした方が後腐れは無い筈だ。最初から敵意を見せて来る相手に優しく出来る人間は多くないし。

 と、そこまで考えてふと思い至る。チェリーワインくんは、さもレガル様だけがおかしいような口ぶりだったが。

「そういえば、俺に初対面で雑種とか言って敵視してましたよね?」
「ほお。ルシア、この筋肉だるま2号もひっそり処分した方がよいのではありませんか」
「……いや、あの。あれはだな。レガルがらしくもなくお前にほだされてそうだったから、絶対裏があると思ってて、それでだな」
「いえ、ただの事実だったのでそれはいいんですけど、でも普通は嫌われてしまうと思うので気を付けたほうがいいんじゃあないかなと」
「スミマセンデシタ」

 きゅ、と梅干を食べたみたいなしょっぱい顔になりながら、チェリーワインくんが謝罪の言葉を口にする。俺は謝罪はいらないけど、チェリーワインくんは謝りたいらしいのでとりあえず受け取っておく。チェリーワインくんは女性にモテるらしいので、普段はちゃんとしているのかもしれない。


 昼ごはんを一緒に食べてから、俺は一人ソファでごろんと転がっていた。二人に対して、じゃあなぜレガルさまは俺を抱くのかと聞いてみたけど、物凄い半目で此方を見るばかりで何も言ってくれなかった。クドラスさまは教えてくれると思って再度聞いてみたけど、小さく笑って何故でしょうねと言うだけで答えはくれない。

 クドラスさまが俺の質問に答えをくれないのは初めてのことだったから、なんだか途端に不安になる。立ち上がったクドラスさまが俺の手を取って、彼は自分で気づいて欲しいのだと思いますよと言うから、クドラスさままでもがレガルさまの味方をするのだろうかと、少し泣きたい気持ちになった。

 そういうわけで、俺は絶賛不貞腐れニートである。俺は確かにクソ雑魚無能ニートだけど、皆してレガルさまの方の肩をもつのは許しがたい。何としてでもぎゃふんと言わせたい。そう思って考えようとするのだけど、もうこれがさっぱり何もわからない。ポン酢並みにさっぱりしている。

 性欲以外に抱く理由など、一体何があるというのか。そもそもレガルさまの気持ちなどレガルさまにしかわからない筈で、俺に推測できるものなのだろうか。

 そこまで考えて、ふと、目をぱちぱちとさせる。

「レガルさまの気持ちはわからないけど、自分のならまだわかる」

 相手の気持ちは見ることは出来ない。口ではよいことを言って、内心は真逆なんてよくある話だ。そうであるのだから、見えないものを見る方法を考えても無駄である。

「俺がなんでレガルさまとするのか……」

 うとうととした、心地よいまどろみの中。俺は気持ちが良いから好きで、そして同時に。

 この暖かなソファを、宝物のように思っていたのだと、そう気付いた。
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