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1章
謝罪にも手順がある。
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謎の茶会が俺にとってのおやつタイムとして習慣化されたある日。俺はずっと気になっていた事実を知るに至った。
「アレクとお出かけしたことが、無い……?」
「なんだその驚愕の顔は。平民街だぞ。俺たちが行くには危険だろう」
何を馬鹿なことを、とのたまうこの美形その1、攻略対象レオンとしての自覚がおありだろうか? いや、ない。
ゲーム開始は学園入学の4月。俺が水魔法をぶちまけたのが7月。今は9月頭。ゲームの終わりは卒業までの3年。
ちなみに俺は悪行バレで1年目で姿を消すちょい役のはずが、とりあえずの危機回避を成功させている。しかしちょっとした失敗で悪評が再燃することがあるので要注意だ。
おわかりだろうか。
「こいつら全然進展してねえ……」
「急にどうした。頭でも打ったか」
ドン引きした、みたいな顔を隠そうともしない呑気な攻め様を見上げつつ、わりと死活問題であるので頭をフル回転させる。
この世界には、レオンを含めて攻略対象が4人いる。その中でもレオンは入学するだけで出会えるお手軽金髪碧眼BOYなのだが、なんとこいつ、ルートに入らないと2年生の間は好感度を稼ぐことが出来ないらしい。
騎士の家系に生まれた彼は、来年時が来れば、魔族と睨み合う国境に赴くことになるからだ。
俺としては学生を戦地にやるなと言いたいが、レオンの一族が持つ力が魔族との闘いには必要不可欠なのであるのが大きい。
光の魔力を扱う主人公が無双すれば万事解決! となればいいのだが、お忘れ召されるなこの世界はBLゲーム。
実況動画を見ただけなので他のルートはどうか知らんが、主人公が力を開放するためには……そう。
「なんとか体の関係に持ち込ませなければ……」
俺は無言で頭を叩かれた。
週末、休み時間にアレクを探せば、丁度廊下を歩く後ろ姿を目にして声をかける。駆け寄ると笑顔で対応してくれる辺りに、人の良さが滲んでいるよな。
「明日遊びに、ですか?」
「そう。アレクは平民街にも詳しいだろ? 俺行って見たくて」
「俺は構いませんが、いいんですか? 貴族の方はあまりこちらにいらっしゃらないと思っていましたが」
「もちろん。頼もしい護衛を連れてくから平気だよ」
わかりました、楽しみにしていますね、というお手本のような回答を得て、俺は身を翻す。
目指すは隣の棟のクラス。騎士として身を立てるものが魔術も剣技も学ぶというハードモードスパルタクラスで、正気か? なんて思うくらいのぎっちぎち訓練を受けられるのがポイントだ。俺は絶対やだ。
扉に手をかけ、目的の人を探す。窓辺で壁にもたれかかり、数人の生徒と言葉を交わす金髪をロックオン。
「わ、シア様? レオンに用事ですか」
声をかけようとして、先に横から知らない生徒に話しかけられて、思った位置に頭が無い事に驚いた。身長基準バグってるよこの教室。
「はい。お邪魔でなければですけど……」
「とんでもない! なあ?」
「おぉ。ね、シア様。レオンは今忙しいみたいだから、ちょっと俺たちと話でもして、」
一人二人、魔術クラスのメンバーとは明らかに体格の違うむさ苦しさが密集し出すのを見ていたら、つい、とこちらを向いたレオンの目が、俺を見て見開かれる。
無視される可能性も想定していたが、以外にも駆け足でやってきたレオンに声をかけようとして、そのまま腕を掴まれて歩かされる。
「あぇ? あの、レオン……さま。ちょっと話があって、すぐ済むんですけ、ど」
「いいから黙ってついてこい」
渡り廊下あたりまで歩いて、ようやく腕が離される。腕組してこちらを見おろす様は、控えめに言って機嫌がよろしくない。
「一人で騎士棟まで来るなんて、何を考えている。せめてアレクを連れてこい」
突っ立っている俺を見て、心底深いため息をついてから、レオンが呆れたようにそう零すので、俺は悟った。
なるほど、つまり。
スッと両足をそろえ、足先の間にわずかな隙間をひらく。頭のてっぺんから指先まで芯を通し、角度を意識しつむじの見える位置まで、素早く頭を下げて腰を折る。
発声ははっきりと、しかし、微かに震えるようでいて、悲壮感のにじむ色を出すのがポイントだ。では御唱和ください。せーの、
「申し訳ございませんでした!!!!」
渡り廊下から見える青空には、今日も白い雲が浮かび、コンマ一秒かと思う速度で頭を上げさせられた俺の目を楽しませてくれていた。目の前の、明らかに不機嫌が増している顔とのコントラストが見事だ。
――迅速なる謝罪も、調査不足で決行すれば逆効果。ままならない社会というやつである。
「アレクとお出かけしたことが、無い……?」
「なんだその驚愕の顔は。平民街だぞ。俺たちが行くには危険だろう」
何を馬鹿なことを、とのたまうこの美形その1、攻略対象レオンとしての自覚がおありだろうか? いや、ない。
ゲーム開始は学園入学の4月。俺が水魔法をぶちまけたのが7月。今は9月頭。ゲームの終わりは卒業までの3年。
ちなみに俺は悪行バレで1年目で姿を消すちょい役のはずが、とりあえずの危機回避を成功させている。しかしちょっとした失敗で悪評が再燃することがあるので要注意だ。
おわかりだろうか。
「こいつら全然進展してねえ……」
「急にどうした。頭でも打ったか」
ドン引きした、みたいな顔を隠そうともしない呑気な攻め様を見上げつつ、わりと死活問題であるので頭をフル回転させる。
この世界には、レオンを含めて攻略対象が4人いる。その中でもレオンは入学するだけで出会えるお手軽金髪碧眼BOYなのだが、なんとこいつ、ルートに入らないと2年生の間は好感度を稼ぐことが出来ないらしい。
騎士の家系に生まれた彼は、来年時が来れば、魔族と睨み合う国境に赴くことになるからだ。
俺としては学生を戦地にやるなと言いたいが、レオンの一族が持つ力が魔族との闘いには必要不可欠なのであるのが大きい。
光の魔力を扱う主人公が無双すれば万事解決! となればいいのだが、お忘れ召されるなこの世界はBLゲーム。
実況動画を見ただけなので他のルートはどうか知らんが、主人公が力を開放するためには……そう。
「なんとか体の関係に持ち込ませなければ……」
俺は無言で頭を叩かれた。
週末、休み時間にアレクを探せば、丁度廊下を歩く後ろ姿を目にして声をかける。駆け寄ると笑顔で対応してくれる辺りに、人の良さが滲んでいるよな。
「明日遊びに、ですか?」
「そう。アレクは平民街にも詳しいだろ? 俺行って見たくて」
「俺は構いませんが、いいんですか? 貴族の方はあまりこちらにいらっしゃらないと思っていましたが」
「もちろん。頼もしい護衛を連れてくから平気だよ」
わかりました、楽しみにしていますね、というお手本のような回答を得て、俺は身を翻す。
目指すは隣の棟のクラス。騎士として身を立てるものが魔術も剣技も学ぶというハードモードスパルタクラスで、正気か? なんて思うくらいのぎっちぎち訓練を受けられるのがポイントだ。俺は絶対やだ。
扉に手をかけ、目的の人を探す。窓辺で壁にもたれかかり、数人の生徒と言葉を交わす金髪をロックオン。
「わ、シア様? レオンに用事ですか」
声をかけようとして、先に横から知らない生徒に話しかけられて、思った位置に頭が無い事に驚いた。身長基準バグってるよこの教室。
「はい。お邪魔でなければですけど……」
「とんでもない! なあ?」
「おぉ。ね、シア様。レオンは今忙しいみたいだから、ちょっと俺たちと話でもして、」
一人二人、魔術クラスのメンバーとは明らかに体格の違うむさ苦しさが密集し出すのを見ていたら、つい、とこちらを向いたレオンの目が、俺を見て見開かれる。
無視される可能性も想定していたが、以外にも駆け足でやってきたレオンに声をかけようとして、そのまま腕を掴まれて歩かされる。
「あぇ? あの、レオン……さま。ちょっと話があって、すぐ済むんですけ、ど」
「いいから黙ってついてこい」
渡り廊下あたりまで歩いて、ようやく腕が離される。腕組してこちらを見おろす様は、控えめに言って機嫌がよろしくない。
「一人で騎士棟まで来るなんて、何を考えている。せめてアレクを連れてこい」
突っ立っている俺を見て、心底深いため息をついてから、レオンが呆れたようにそう零すので、俺は悟った。
なるほど、つまり。
スッと両足をそろえ、足先の間にわずかな隙間をひらく。頭のてっぺんから指先まで芯を通し、角度を意識しつむじの見える位置まで、素早く頭を下げて腰を折る。
発声ははっきりと、しかし、微かに震えるようでいて、悲壮感のにじむ色を出すのがポイントだ。では御唱和ください。せーの、
「申し訳ございませんでした!!!!」
渡り廊下から見える青空には、今日も白い雲が浮かび、コンマ一秒かと思う速度で頭を上げさせられた俺の目を楽しませてくれていた。目の前の、明らかに不機嫌が増している顔とのコントラストが見事だ。
――迅速なる謝罪も、調査不足で決行すれば逆効果。ままならない社会というやつである。
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