初めての物語【B面】~First Story~

秋 夕紀

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第9章 初めての嫉妬

1 懐かしい再会

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 真斗とクリスマスを過ごした次の日から、愛海は母親の友人の喫茶店でアルバイトをしていた。どうしてもと頼まれて、年末までの5日間の予定だ。仕事をしていると、真斗の事を考える余裕もなく、余計な事を考えずに済んだ。
 アルバイト3日目の午後、店に入ってきたのは島本瑛士えいじだった。愛海は驚いて、コップを落としそうになった。瑛士とは、中学2年の気まずい出来事があって以来、会っていなかった。知らぬ顔をするのもおかしく、愛海から声を掛けた。瑛士は懐かしそうに愛海を見て、
「可愛くて分からなかったよ。バイトが終わったら、会って話そう。」と愛海を誘った。愛海も懐かしく、断る理由もなく承諾していた。
 
 愛海は仕事が終わり外へ出ると、瑛士が待っていた。
「お疲れ!どこか話せる所に行こうか。少し早いけど、愛、お腹空いてない?その辺の店で食べようか。」瑛士が案内したのは、小じゃれたイタリアンの店だった。愛海は「家に行こう」と言われたらどうしよう、と恐れていたが安心して付いて行った。ピザやサイドメニューをシェアして食べながら、瑛士は大学生活や東京の話をした。あの時の気まずい出来事には、一切触れてこなかったし、愛海も忘れていた。
「愛は彼氏いないの?」瑛士が訊いてきた。愛海はどう答えようと迷ったが、
「いるよ。もう17歳だからね。」と答えていた。
「歳はあんまり関係ないだろう。うまくやっているの?」やっているという言葉を想像すると引っ掛かるが、愛海は適当に答えておいた。
「瑛士君は、彼女がもちろんいるんでしょ。」愛海はお返しにいた。合コンで知り合い付き合ったが、半年ほどで別れてから今はいないと瑛士は答えた。どんな付き合いだったのか愛海は興味があったが、それ以上は訊かない事にした。
 帰りは、「家の車で来ているから、送って行くよ」という瑛士の言葉に甘えて、愛海は何の抵抗もなく送ってもらった。車の中で愛海は、東京の大学に行きたい旨、夏休みにオープンキャンパスに行く旨を話すと、瑛士が案内してくれる事になった。二人は家の前でラインを交換して、愛海が家に寄って行くように促したが、瑛士はそのまま帰って行った。
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