初めての物語【Ｂ面】～First Story～

第９章 初めての嫉妬

２ 初詣の帰り道

　愛海は元旦を家族と過ごし、今日は真斗と初詣の予定だ。ちょっとおしゃれして、髪をアップにし、長めのワンピースにコートを着て出掛けた。
「愛海、大人っぽいね。俺、こんな格好で恥ずかしくなるよ。」という真斗は、セーターにダウンジャケットという寒さ対策ばっちりの格好かっこうだった。
　お互い新年の挨拶を交わして、電車に乗った。神社の参道では、真斗の腕に腕を絡からめて、愛海ははぐれないようにしていた。お参りが済んで、カフェで休む事にした。愛海は、真斗に何でも話すようになっていたので、バイトの事、茜の事、島本瑛士の事も話していた。
「でね、夏休みには東京へ行って、瑛士君に案内してもらう約束をしたの。」
　愛海は何の躊躇ためらいもなく話し続けていると、真斗は落ち着かない様子だった。夏休みに東京で、瑛士に案内をしてもらう話になると、真斗は機嫌を損そこねていた。
～真斗～瑛士とどんな関係？愛海の部屋で見たアルバムに、彼の腕にしがみつ
ている写真があったけど、まだ続いているのかな。

　東京は茜と一緒に行くからと、真斗を何とか説得して街をぶらついた。
いつもの駅に着いて別れようとしたが、真斗は愛海の腕を離さなかった。
「愛海、俺たち今日はまだキスしてないよね。」と拗すねたような態度を取った。
「うんそうだね、このまま別れるのはつらいね。どこかへ行こう。」真斗は場所を物色しながら、愛海を連れて歩いた。結局着いたのは、いつもの公園だった。コートは着ているが、暗闇の中の公園の寒さは身にこたえた。
　公園に入るとすぐに、真斗が愛海を抱き締めてキスをしてきた。真斗の唇は彼女の口を散々むさぼって、首筋に向かってきた。厚着のせいで密着感はなかったのを不満に思ったのか、彼女のコートの前ボタンを外して手を差し込んできた。真斗の気持ちも理解できるので、愛海は好きなようにさせていた。
～愛海～瑛士君の事で、真斗は妬いているのかな。でも嬉しい！私の胸を触って
　　　いる。あの日の事が蘇よみがえってきた。そろそろ覚悟を決めなくては。

　その時人影が近付いて来るのに気が付いて、二人は慌あわてて離れ、何食わぬ顔でやり過ごした。真斗は白けてしまったようで、軽くお別れのキスをして公園をあとにした。