危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

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第1章:異世界の森で生活開始

第28話:戦ってみよう

ブラッケラーの顔面めがけて振り下ろされた私の手は、顔面を切り裂くことはなかった。
ブラッケラーがとっさに、左腕を、顔の前に持ってきて、防いだのだ。庇った左腕には、4本の傷が入り、出血している。
ブラッケラーのすぐ近くに着地した私は、再び足に力をいれ、今度は後ろにジャンプして距離をとる。

「ギュラァァァァ!!!」

大地を震わすような、そんな叫び声をブラッケラーは上げている。
痛いのか、怒っているのか・・・

改めて私を認識したブラッケラーは、右手に掴んでいたフォレストタイガーの身体を投げ捨て、両手を自分の胸元に持って行き、再び叫び声を上げながら、何度も何度も胸を叩いた。

・・・・・・ドラミングと呼ばれる、ゴリラの威嚇行動だ。
やっぱこいつは、ゴリラだ。
どうやら、私を敵と見なしたらしい。
そりゃぁ、そうか。食事をしていたら、いきなり切りつけられたんだし・・・


私は、『ストーンバレット』を乱射して、ブラッケラーの気を逸らしながら、再び近づくスキをうかがう。
『竜人化』しているし、角も生えているので、普段よりは威力があるが、それでも数撃ちは威力が下がる。

『竜人化』した脚で細かくステップを取りながら、ブラッケラーの身体の周りを動き回るが、なかなかスキが見当たらない。
というのも、ブラッケラー、でかい図体の割に、素早いのだ。
遠くからでは大きさがよく分からなかったが、二階建ての一軒家くらいの大きさがある。
どうしてこの森の生き物はどいつもこいつも、でかいのよ!

そう心の中で叫びながら、少し攻撃を変えてみる。
『水魔法』で、水流を浴びせてみたり、『光魔法』で顔の周りに強い光を当ててみたりした。
ただ、ブラッケラーの気を逸らすことはできなかった。

ブラッケラーは、私の魔法が止んだタイミングで、私をめがけて、太い腕を目一杯振り下ろして来るが、これはステップで軽く避けられる。
とはいえ、振動はすごいし、腕の振り下ろされた地面は、ひびが入ったり、沈み込んだりしているので、食らったらひとたまりもないだろう。


 ♢ ♢ ♢


ブラッケラーと戦い始めて、10分ほどが経過した。
相変わらず、私が魔法を撃って、ブラッケラーがそれを受け流しながら、腕で攻撃してくるのが続いている。
変わったことといえば、ブラッケラーの動きが少し鈍くなってきたことだろうか。

私は、ほとんど魔法を打ち込んでいるだけだ。ブラッケラーの攻撃は、軽く避けられる。
それに対して、ブラッケラーは、毎回毎回、身体を思いっきり反って、腕を振り下ろしている。
地面からの反動もあると思うし、ほとんど効果がないとはいえ、多数の石弾や氷塊を食らっている。


・・・・・・突撃するか。
そう思って、ブラッケラーの頭付近に『光魔法』で強い光の球をぶつけて、目潰しをした。間髪入れずに、最初の攻撃で出血している、左腕に向かって、いつもより少し小さめの石弾を多数放つ。
ブラッケラーの攻撃は、両腕を使っていたが、左腕を使ったときの方が威力が弱かったし、振り下ろした後に痛そうに声を出していた。
おそらく、まだ痛むのだろう。そう思って、左腕を狙った。


石弾のいくつかは、傷の部分に命中し、ブラッケラーは大きな声を出して、左腕を庇うように、うずくまった。
・・・きた!

ブラッケラーがうずくまったのを見ると同時に、私は脚に今日一番の力を込めて、ブラッケラーの顔めがけて、高く跳び上がった。
そして、今度は思いっきり、下に向かってグーで殴りつけた。

ブラッケラーは、ギリギリで気がついて防御しようとしたが、間に合わず、そのまま地面に顔から倒れ込んだ。

私は、着地すると、再度跳び上がり、今度は倒れているブラッケラーの後頭部めがけて、かかと落としをお見舞いした。
身体を起こそうとしていた、ブラッケラーは、再び地面に叩き込まれ、動きを止めた。




・・・・・・倒した?
思ったより、あっさりだなぁ。
いろいろ動きを試せたのは良かったけど。
そう思って。『竜人化』を解こうとしたその時だった。

身体中を冷たいなにかが駆け巡ったような、そんな感じ。
無意識に、後ろにジャンプして、ブラッケラーと距離を取っていた。

それと同時に、両腕で身体を支えながら、ブラッケラーが上半身を起こし、口を大きく開けた。

ブラッケラーを見ると、大きく開けた口の前に、白い光が集中していた。
それを認識すると、私はとっさに両手を広げて前に突き出した・・・、のと同時に、白い光が前に向かって、つまり私に向かって放たれた・・・






放たれた光は、突き出した私の手に直撃すると、そこから二叉に分かれて、私の後ろに向かっていき、生えていた木などにぶつかり、それらを消し飛ばした。


私の手には、確かに何かに押されている感覚がある。
今も、ブラッケラーの口から光が放たれていることから、原因は分かっている。
ブラッケラーは、まるで怪獣映画の怪獣のように、口から光線を放っているのだ。

・・・そんなの、あり!?
そう、突っ込みながら、必死に光線を受け続けている。
幸い、痛みも感じない。徐々に後ろへと押されている程度だ。
というか、『自動防御』は? 壊れた音はしなかったけど!?




ブラッケラーが口から光線を放ち始めてから、どれほど時間が経ったかは分からない。
さすがに、時間を気にできる程余裕はないのだ。

光線の間から、ブラッケラーを見ると、とてもしんどそうにしている。
そもそも、大分ダメージを与えていたはずだし、この威力の光線を出すのも、簡単じゃないのだろう。
とはいえ、私も動くことができない。魔法を放つこともできない。
こうなったら、最大出力で、つまり『竜人化』し、角を生やした状態で、集中して全力の魔法を叩き込もうかと思ったが、今、防御に使っている両手を魔法発動に使うのは怖い。




そんな膠着状態が続いていたが、先に動いたのはブラッケラーだった。
私に向かっていた光線を、私の少し前の地面に向かって打ち付けたのだ。

光線の命中した地面は、大きな音を立て、土が削られて私に向かって飛んできた。それと同時に、ものすごい土煙が舞い上がった。
私は、思わず両手はそのままに、顔を逸らした。
その際、大きな足音が聞こえた。


・・・しまった!
そう思い、顔を前に向けるが、そこには、ブラッケラーはおらず、えぐられた地面と、ブラッケラーが打ち付けられて穴が空いた地面があるだけだった。






・・・・・・・・・・・・逃げた、のか。
なんで? 顔を逸らしている私を攻撃するチャンスだったはずなのに・・・


・・・違うか。そうじゃない。
さっきの光線。あれが最大の攻撃なんだ。
それを、“手”で受けていた私を見て、倒すことは諦めたんだ。それで逃げた。
光線を地面に向けて、私の視界を奪って・・・

「ふーっう。・・・・・・・・・疲れた」

そうこぼしながら、思わず、その場に座り込んでしまった。


ダメージらしいダメージは受けていない。
あの光線も、さすがに焦ったが、終わってみれば、手で受けて、逸らすことができていた。
背後の木々は消え失せているが。

そうしていると、リンが「大丈夫?」と言うように、私のもとに来て、私の周りをグルグルとジャンプし始めた。

「・・・リン。大丈夫だよ。ちょっと疲れただけ」

ひとまず、今回の戦いは、ブラッケラーの逃亡 —敗走ってことで、私の勝ちだな。
とはいえ、グレイムラッドバイパーを一撃で沈めた攻撃は受けられたし、数を優先したとはいえ、『竜人化』した状態の魔法もあんまり効かなかった。

「次は、必ず倒すから・・・」

獲物を初めて逃がしたのが悔しかったのか、思わず、そう、呟いていた。




すると、どこからか、

「お見事でした」

そんな声を掛けられた・・・
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