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16.愚かな女王【一方、ドラゴニア王国では】
しおりを挟む――――一方、その頃王都。
「女王様! 西方のゴーレム部隊が動かなくなりました! 原因はわかりません!」
「東方でも水道が故障して民に水が行き渡らなくなっています! こちらは原因はわかっておりますが、再び動かすには大量の魔法石が必要です」
フェイがいなくなったことで次々と機能を失っていく王都。
もちろん、その対応策はフェイが残した“マニュアル”に書いてあったが、それまでフェイに頼りきりだった宮廷の人間にテキパキそれをこなしていくことは不可能だった。
「ええい、無能ばかりですわね! 一体どれだけ私を怒らせれば気がすむんですか!?」
女王が玉座を叩く。
長年引き継がれてきたその椅子は、フェイがいなくなってからと言うもの毎日叩かれ続けて、どんどん形を歪めていた。
「――女王様、恐れながら申し上げます」
と、一人の大臣がおどおどとしながら口を開いた。
フェイが用意したマニュアルを片手にしており、そこには女王に絶対に伝えなければならないことが盛り込まれていた。
しかしそれを言えば、女王が激怒するのは火を見るより明らかであった。
「これ以上一体なんですか!?」
「……女王様。指示書によれば、魔界への門が開かないようにする封印の結界を維持する必要があります」
「魔界への門だと!? 王都が魔界へ繋がっているのか!?」
「恐れながら女王様、その通りでございます。しかし、結界を維持していれば魔物たちが入って来ることはございません、それで……」
「なんだ」
「……明後日までに、王家に伝わる“指輪”を動力に捧げろとのことです――」
その言葉を聞いた瞬間、女王は立ち上がり唾を飛ばしながら大臣を罵倒した。
「私のコレクションを薪がわりに使うだと!? この愚か者!」
「も、も、申し訳ありません!!!!」
大臣は平謝りする。
「私の宝石コレクションを動力にするなどもってのほかだ。魔力が必要ならば、魔法石を使えばいいだろう!』
「し、しかし、指示書には王家に伝わる指輪でなければいけないと書かれていまして……」
大臣は、決死の覚悟で伝える。
指示書に従わなければ大変なことになるというのは、この短い期間で十分に理解していたからだ。
だが、女王は意に介さない。
「魔力が必要ならば、魔法石を使えばいいだろう!」
「しかし、もう宮廷に魔法石を買う余裕はございません」
「ならば民に税金を課せばいいだろう! そんなこともわからないのか!?」
「し、しかし、すでに増税に次ぐ増税で、民たちからはこれ以上納めるお金がない状態です」
「ええい、どいつもこいつも怠け者たちめ! そんなやつらは全員奴隷にして働かせろ!」
――大臣は、それ以上は何も言わなかった。
女王に逆らうことなど不可能だと悟ったのだ。
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