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しおりを挟む――――俺の斬撃が、ゴブリン・ロードを跡形もなく消し去った。
「え……?」
自分でも、起きている現実に認識が追いつかない。
“ゴミ強化”のスキルで、ゴミ扱いされた俺自身が強化された。
神官の言葉によれば、ゴミ強化のステータスアップは10倍。
つまり、俺の力が10倍になったということだ。
だが、それでも上級モンスターであるゴブリン・ロードを一撃で、跡形もなく消し去るなんて、ありえない。
いや、待て。
――ユニークスキル“ゴミ強化”が“ゴミ強化”によって強化されました。
先ほど脳裏に浮かんだ女神の言葉。
これを文字通り解釈したらどうなる?
“ゴミ強化”のスキルが、“ゴミ強化”のステータス強化で10倍になった……?
つまり、10倍のステータス強化を持つスキルが、自身の効果でさらに10倍されて、100倍強化の効果になった――ってことか。
平凡な剣士である俺でも、ステータスが100倍になれば、ゴブリン・ロードを一瞬で消し去ることもできるかもしれない。
外れスキルだと思われた“ゴミ強化”に、まさかこんな力があるなんて。
――いやいや。
今はそんなことを考えている場合じゃない。
村がゴブリンに襲われているんだ。
ボスは倒したが、まだ配下のゴブリンたちはわんさといる。
まずは村人たちを助けなければ。
と思って、村に意識を向けたが。
「ギャァァ!!」
と、ゴブリンたちは甲高い声をあげて、村から逃げていく。
その時、俺を――ゴブリン・ロードを倒した人間を、綺麗に避けて逃げていった。
どうやら、主人を失っては勝ち目はないと本能で理解したようだ。
――ゴブリンの脅威から救われた村人たちは、歓喜に沸く。
「ありがとうございます、剣士様!!」
「あなた様がいなければ、この村は滅んでいました」
「村人全員の命の恩人です。本当にありがとうございます」
「あなた様は、村の英雄だ」
と村人たちが俺の元へと寄ってきて、口々に礼を言った。
俺は頭を掻きながら、いえいえと頭を下げて答える。
なんの役にも立たないと思っていた、外れスキルが、こうして人の役に立ったのだ。
これ以上に嬉しいことはなかった。
――きっと、この力でもっと多くの人を救えるだろう。そんな気がした。
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