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ごめん、すっぽ抜けてた

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「じゃあ早速初めてみるね。」

色々言ってたけど結局はイメージが全てってことだよね。
何にしようかな~ん~火だと危ないしやっぱりロマンさんと同じ風にするか。

魔力を手に集めながら頭では鋭い風がものを切り裂くような想像をする。鎌鼬みたいな。
すると、手のひらが熱くなり魔法陣が浮かぶと同時に風が勢いよく吹いた。手を向けた先にある木にはいくつもの傷はつかず、変わりに切り取ってしまうぐらいの大きな切後が一つ付いた。

「え?一つだけ?ロマンさんの見本を真似してみたんだけど…」

そう言いながらロマンさんを見上げると目を見開いて驚いていたと思えば、いきなりぶつぶつ言い始めた。

「…刃の数は…いやでも、殺傷力は…」

ほとんど聞き取れず、とりあえずロマンさんが落ち着くまで大人しくしていた。…嘘です、ごめんなさい。魔力循環をしつつ、身体強化を試していた。時間は有効に使わないとだよね。

「ナオちゃん素晴らしいです!最初からあんなに殺傷力高いものになるとは!!これから先、上達してきたときに言おうと思っていたのですが…ナオちゃんは聡明な方なので言わなくても分かるかと思いますが、魔法を習う上で知っておかなければならないことがあります。魔法はさっきのナオちゃんの風のように簡単に傷つけることができます。今回は木に向けて撃ちましたが人が相手だと…先ほどの殺傷力であれば簡単に命を奪うことができるでしょう。それほど恐ろしいものであるということをお忘れなきよう。」

「はい、肝に銘じておきます。」

「いくら騎士団と言えど攻撃魔法は滅多に使用しません。体術や剣術で事足りるときは無暗に使うことはないでしょう。しかし、自身の命がかかっている時は躊躇わないようお願いします。まだ難しいことだとは思いますがどうが覚えておいてください。ナオちゃんに傷つけないよう私たちは全力で守りますが現実は難しいことがあるでしょう。その時の判断はナオちゃんに委ねることになると思いますが私はナオちゃんなら大丈夫だと信じています。」

ロマンさんはそう言いながら私の額にチュッとキスを落とす。敬愛と言うか安心させるような微笑みも添えて。

「分かりました。早めに大切なことを教えてくださりありがとうございます。」

恐ろしい現実につい敬語になってしまい、キスされたことなんて一瞬で頭からすっぽ抜けてしまう。
前の世界とは違って私は簡単に人の命を奪うことができるようになってしまったわけで…反対に無暗に人を傷つけないと言っても自分の命が危ないときは躊躇している暇はないぐらいには危ない世界だということなのだろう。

「ナオちゃん色々言ってしまってごめんね。でも、そんなに難しく考えないで、簡単にナオちゃんが傷つく可能性がある時は魔法で対処したらいいんですよ。」

ロマンさんはニコッと綺麗な笑顔でサラッと恐ろしいこと言う。

その日からいろんな種類の魔法を練習し、習得していった。
ロマンさんは忙しく付きっきりで教えてもらうことは難しかったが時間が空くと練習に付き合ってくれた。ロマンさんがいないときは団員が指導してくれる時もあった。
そうして私は着々と実力をつけていった。



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