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茶番はほどほどに⑵
しおりを挟むここでお気づきの人もいるだろうか。
「この俺を…俺の存在を無視するなんて何たる無礼!!!」
そう彼の存在を。
彼の怒りが爆発したところで私とクレマさんは顔を見合わせて笑う。この展開にしたくて、わざわざクレマさんと茶番をしたのだ。上手くいったようで何より、というかクレマさんもノリノリでしてくれたし、よくよく考えたらいつも私たちがしていることと変わりないのかもしれない。
なんで茶番なんかしたのかって?そりゃ、普通に負ける姿より自信満々で自分の力を誇張した後に無様に負ける様の方が面白いでしょ?
「すまないな。数時間ぶりの息子との再会に込み上げる気持ちを制御できなかったようだ。」
何て涼しい顔して話すクレマさんだけど、片手で僕を抱っこしているのはツッコまない方が良いのかな?
「それじゃあ、お手並み拝見、だな。」
そう言って私を下ろしながらクレマさんは私の耳元に口を近づける。
「ナオ、最悪殺しても何とかなる。が、まぁ死なない程度に地獄を見せてやれ。」
なんと物騒なことを言うのだ、私のパパは。まぁそれほど私を貶されて腹が立ってるってことだよね。
極めつけはその治安の悪そうな表情。うん、イケメンは何してもイケメンって私知ってた。
私もそれに応えてニヤリと笑う。
「御意。」
スッと姿勢を正して前に出る。目の前にはチャーミングなそばかすを前面に出しているなんくるないさー君。
今にも私に噛みついてきそうな勢いの目つきをしている。おぉ、怖い怖い。
いつでも準備OKな私は全身の力を抜いた楽な体勢でクレマさんの合図を待つ。
「…始め!」
合図とともにこちらに駆けて来たなんくるないさー君。相手の出方を伺いながらふとクレマさんのさっきの言葉がよみがえる。
『死なない程度に地獄を見せてやれ。』
フフッ、そうだよ。私をバカにしたってことは、私を育ててくれてるクレマさんや騎士団の皆のこともバカにしてるってことだよ。
…あぁ、考えたら腹が立ってきた。
もう、後のことは知らない。今は目の前のコイツを地獄に落とすだけ……
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