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第1章
心配事
しおりを挟む今日一日の仕事を終えて騎士団兼魔術師団の詰所に戻ると団長に呼ばれ、会議室へ入る。
「じゃあ3日後に始まる使節団来訪の警備及び護衛について話し合おう。」
そこには団長副団長をはじめ、隊長クラスの人達が揃っていた。
当日の警備の配置や担当場所、各場所の指揮官の決定などを詰めていき記録していく。
「今日はこれまでとしよう。当日何が起こるか分からない。最悪の事態を予想して任務に就くように。」
我らが団長ナートの声掛けに皆が「はい。」と言う返事とともに騎士の敬礼をする。
作戦会議を終え、各々が自分の部屋や家へ戻っていく。私は団員が住める寮で暮らしているけど家から通っている人も結構いるのだ。寮は王城の敷地内にあり、朝はぎりぎりまで寝ていられるため重宝している。
「ナーシィ、ちょっといいか。」
「はい、団長。何かありましたか。」
「いや、今日のことを聞いてな。3日後にある来訪の時もそうだが、あまり無理はするなよ。」
「はい、ありがとうございます。」
今日のはそこまで無茶でもなかったんだけど…
「はぁ、ナーシィ。今日のことといい、今までのことといい、お前にとっては無茶なことじゃないかもしれないのは分かる。だが、心配なんだ。お前にもしもの事があったらって思うと…」
なんでそんなに辛そうな顔をするんだろう。私に何かあったら苦しむのは私だけなのに。なんで団長がそんなに辛そうなんだろう。私には…分からない。
「団長……あの、その…心配かけてごめんなさい。」
私はなんて言葉を掛けたらいいか、掛けるべきか分からず謝ることしかできない。
「ナーシィ、謝るな。お前が誰よりも強いことを理解している。ただ、これだけは覚えておいて欲しい。俺は俺自身よりもナーシィが大事だ。だから、お前が傷つくと思うと怖い。」
「はい。」
私は強いから生半可な相手には傷つけられない。だから、今回の使節団の来訪時どんな刺客が来るかは分からないけど、多分私に敵う者はいないだろう。
大切な人が傷つくのは誰だって怖いのは分かる。でも、絶対的な強さがあれば傷つくことはほとんどない。だから、みんなして私のことをそこまで心配する要素がどこにあるか分からない。
さまざまな経験で偏った思考をしているナーシィには、周囲の人が心配している傷つくことが身体的なものではないことに気づかなかった。
いや、気づけるはずもなかった。
だって、ナーシィはそうある様に育てられてきたのだから。
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