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第1章
ナーシィの…⑴
しおりを挟む里親に引き取られて3年がたった。今日は私の8歳の誕生日。毎年盛大に祝ってくれるお父さんとお母さんはいいところの貴族様なのだろうと子供ながらに思っていた。
「ナーシィ、ちょっとこっちに来てくれるか?」
「はい、お父様。」
お父様に呼ばれてついていく。今まで入ったことのない地下に続く階段をなんの疑いもなく。
「お父様?ここは…っ!」
そこは地下牢獄になっており、獣人や幼い子供、見目麗しい男女など様々な人たちが鎖に繋がれ檻の中にいた。
「ナーシィ、ここは私たちのコレクションだ。私たちの仕事は殺し屋。潰した闇市や依頼されたターゲットも美しいもしくは珍しければここに連れてくる。」
「ころしや?…」
「ナーシィ、お前も今日で8歳だ。今日から立派な殺し屋になるべく訓練を受けて貰う。決して逃げることは許さない。」
8歳の誕生日、贈られたのは地獄への切符だった。
毎日毎日確実に殺せる剣術、魔術の教育に加え毒の耐性を付ける様毒入りの食事を毎食食べる日々。血を吐いても、ケガをしても、風邪を引いても訓練を休むことは許されなかった。
今まで大切に育ててきたのは孤児院でやせ細った身体を鍛えられるまでに戻すため。優しく振る舞っていたのは逃げられないように囲うため。
私はなぜ産みの親に捨てられたのか知らないが、やっぱり私を愛してくれる人なんていないのだという思考が溢れる。
訓練を初めて1年を過ぎてからは実践で父親が雇った盗賊などと手合わせと言う名殺し合いが始まった。初めて人を殺したのは9歳の時。剣が肉を裂く感覚が手から抜けず、動かなくなった人を見ると無性に怖くなった。儚い命は一度失うと戻ることはない。
私が殺した、私のせいでこの人はもう動かない。手に付いた血の匂いは洗っても洗っても取れない。目を瞑ると殺した人の顔が鮮明に浮かぶ。
もちろん自分が殺されそうになることもあった。殺されてしまうという恐怖、人生を奪ってしまったという恐怖から抜け出せない。
初めて依頼を受けたのは10歳の時。自分とは何の関わりもなく、私はその人になんの恨みもない。依頼を熟していくうちに、あぁ自分はろくな死に方をしないだろうなと思った。このまま人を殺すだけの人生。
そんな時、たまたま両親がいない時に郵便物が届いた。普段なら使用人が受け取るんだろうが、私は依頼以外で外に出ることが許されなかったため無理やり受け取りに外に出た。
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