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第2章
敵
しおりを挟む「分かった。じゃあ今日のステファニア嬢の護衛、ナーシィに任せよう。」
「御意。」
不穏な雰囲気で始まったお茶会は滞りなく進んでいく。それに伴って令嬢がお花を摘みに行くときも迫っているわけで…
何を考えているか分からないけど、間違いなくロイたちの信頼を失うだろう。そう考えている時点で、私はまだ期待しているのだと気づかされる。
バカだなぁ…期待しても自分が苦しいだけなのに…
「では、ちょっと失礼しますわ。」
あぁ、来た。心臓の鼓動が、全身から聞こえるんじゃないかと思うくらい大きく聞こえる。
私は何も言わず令嬢の後ろをついて行く。
周囲に誰もいなくなったところで令嬢はこちらを振り向きニヤリと笑う。私は無表情でその歪んだ顔を見つめ返す。
「ねぇ、私が言ったとおりになったでしょう。どう?今の気分は。私は最高に気持ちいいわ!」
頬をピンク色に染めて、恍惚とした顔で問い掛けられる。
「どうでしょうね。でも、残念ながらあなたが望んでいた私からここを出ていくことは無さそうですね。」
「はっ、虚勢を張っても今更ですわよ。でも、貴方から出て行かないのなら私が出ていきやすいようにして差し上げましょう。」
そう言うや否や令嬢は叫び出した。
「キャ―――ッ!!!誰か誰か!!」
「なんだっ!?」
「あっちからだ!!」
「何があった!!」
令嬢の叫び声を聞きつけて王城で警備をしている騎士たちが集まって来る。令嬢は泣きながら騎士たちに懇願する。
「あの方が…あの方が私のことを…」
…そういうことか。
「貴様、何をした?このお方は殿下の婚約者様なのだぞ。」
そりゃ私の方がよっぽど詳しいんだけど…この騎士達私って気づいてない?それとも知った上で言ってる?
「何をしている。」
この一言でその場の雑音が一切なくなり、シーンと静まり返る。
「殿下!この者が婚約者様を…」
何をしたかは分かってないのだろう、その先の言葉が続かない。
「殿下、あの方が私を罵り、魔法で攻撃しようと…私とても怖くて…」
「みな、この者を拘束せよ。」
サーシスは先ほどの冷たい目をしたまま放った一言に、私は絶望した…その後ろにはロイが無表情で控えていた。
…やっぱり、人殺しには幸せを感じる資格はないのかもしれない。これは報復なのかもしれないね。
…好きな人から、大切な人から…信じて貰えないことはこんなにも苦しいことなんて知らなかった。こんなに苦しいのなら、知りたくなかった…
何もかもあの頃の方が傷つかなくて済んだのに。
「何を言われても私は何もしていません。」
私はその一言だけを残して、拘束に対して抵抗はしなかった。
まだ………
まだ泣いちゃダメだ…こんなところで弱みなんて見せたら、付け込まれて何をされるか分からない。幼い頃から嫌と言うほど学んできた。
今、ここにいる人は皆、私の敵なんだから…
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