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第3章
幻覚
しおりを挟む「うん、……だから騙したみたいになってごめんね。」
「…………………………………」
暫しの沈黙の後、いち早く回復した陛下が動く。さすが陛下だよね。
「ん?どういうことだ?ナーシィ。……確かに死にそうにしては普通に会話しているな。」
「陛下!!」
陛下の物言いに咎めるように呼ぶサーシス。
いや、中々鋭いですよ陛下。
「そうなんですよ。簡単に言うと私死なないので安心してください!」
元気いっぱいに言うとまたもや訪れる沈黙。あれ?滑った感じ?
「詳しく言え。」
無!ハルトにまさしく無の顔で問い詰められる。
「ハイ…いやぁ、王太子は私を狙ってるから私が死んだらどうするんだろうって思って…隙が出来たらそのうちに皆を解除できるかなって思って。だから、死ぬように見えるフリをしたの。つまりは………」
そこまで言ってパチンッと指を鳴らす。
すると私の胸に刺さっている…ように見えた剣はなくなり、王太子の腰に。私の胸の傷は跡形もなく綺麗になっていた。
「…どういうことだ?…っ!もしかしてナーシィ、君は!」
いち早く気づいた様子の団長にニヤリと笑う。
「幻覚ですよ、幻覚。みんなの前にいた私は私が魔法で見せていた私。本当は何も起こってないんですよ。」
意味を理解して、皆がホッとしている中……ずっと抱かれていた腕に力が入った。そのまま絞殺されるんじゃないかってぐらい強く。
「…ほんと……ばか……」
絞り出すように言われた言葉に顔がほころぶのを感じる。本気で心配してくれたんだ。
「本当に俺、これからどうしようって……俺も一緒に…後を追おうって思って……今度からはこんな無茶するなよ、バカナーシィ。」
「うん、ごめん…ごめん、ね。」
ロイの泣くのを我慢したような声に、内容に反対の立場だったらと考えてしまうと涙がとめどなく溢れてくる。
私はロイにこんな思いをさせてしまったんだ…本当にごめんなさい。
「幻覚を見せられる…それにこんなにたくさんの人間に対して一緒に見せられるなんて聞いたことがない。そんなの可能なのか…?」
団長の問いかけに、まだ離れる気のないロイの腕の中から答える。
「いやぁ、出来るかは分からなかったんですけど案外やってみるものですね!」
そう、幻覚って聞いたことはあったし魔法陣も知ってはいたけど大勢に対してどこまでできるかは不明だったから一か八かって感じだったんだよね…「また規格外になっていく。」って声が聞こえたけど無視無視。
まぁ、なんとなくだけど王太子は私のこと殺さないだろうなっていう確信があったから出来たことなんだけど…
「よがっだ…ズビッよがっだよぉ、ナージィ…」
団長たちに拘束されたまま未だに号泣している王太子。詳しいことはまだ分からないけど、根は悪い人では無さそうなんだよね。隣国の王家、あるいは隣国全体がこの人をこうさせてしまったんじゃないかって思ってならない。
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