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昔話⑵
しおりを挟むそれから数日後――――
皆で集まっている時にいきなりカップルの彼氏の方が声を上げた。
「なぁ、聞いてくれよ。栄人の奴、真奈美に手出したんだよ。それだけじゃ飽き足りず、俺たちのことも狙ってるんだと。」
「はぁ?どういうことだよ、好きで手出したわけじゃないのか?」
「気持ちいことがしたいってさ。ホモなんじゃねぇの?」
「でも、真奈美とするって…バイってやつか?」
「うーわ、俺たちもそんな目で見られてたのか?ないわ。」
「お金持っってっし、おっさんとか相手に援交してんじゃねぇの?やっば!」
いきなり始まった俺の知らない俺の話。
火のない所に煙は立たないとは言うが、火元は十中八九あの女だろう。
こんな時って多分俺が何を言っても聞く耳を持たないだろう。いや、永遠に聞いてはくれない。だったら、俺はここから離れるのみだ。別にどうしても一緒にいたいと思う奴はいねぇし、最近視線がキモチワルイと思ってたんだ。
その日を境に俺は学校で一人になった。それは別に苦ではなく身軽になって息がしやすくなったから結果オーライと思ったんだけど……そこで終わるあいつ等じゃなかったんだ。
俺が1人屋上でお昼ご飯を食べていた時、一緒のグループにいたさっきの3人が来たんだ。
「栄人じゃん!ここんいいたんだ。探したんだけど。なんで最近来ないわけ?」
「ほんと、俺ら待ってんだけど。」
そう口々に言うこいつ等の頭の中を見てみたい。どこに目と耳つけてんだ?散々人のこと好きかって言ってたくせに、何がしたいんだ?色々考えたけどこいつらの考えることなんて俺に分かるわけがない、分かってたらこんなことになんなかったわ、という考えにいたって無視をした。
「は?何無視してんだよ。まぁいいわ。それより、お前男もいけんだろ?」
「そうそう、真奈美から聞いたけど俺らのこともそういう目で見てたって。」
「ならさぁ、相手にしてくれよ。そのキレイな顔が快楽で歪むところを見たいんだわ。」
そう言いながら、下品な顔で声で口で笑う。
あのキモチワルイ視線はそういうこと…だったら俺よりホモじゃん。
変に納得した俺は笑いが込み上げてきた。なんだ、俺はこんなに醜い奴らと一緒にいたのか。
触れようとしていたキモチワルイ手を叩き落とし、一言も発することなくその場を去る。そして、ちょうど転校の話が上がったから、そのまま逃げる様にその学校を去った。
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