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番外編
番外編・その47
しおりを挟む「そうか…そうだったのか…」
元母親の話を聞いた父は額を押さえて俯いた。
結局、母は実家に居場所もなく、外出する事が増えたのだという。
どんなに兄である伯爵が苦言を呈しても母は聞く耳を持たなかった。
伯爵も出戻りの妹に掛かりきりになる暇などなく、誰も母を止める事が出来なかった。
しかし、オーヴェル家から追い出された母と仲良くしようなどという貴族はおらず、孤独になった母は、悪い連中と付き合うようになり、実家から姿を眩ませた…という訳だ。
絵に描いたような転落人生だ。
父が倒れた時、真摯に病と向き合い、父を大切にしていれば、こんな事にはならなかっただろう。
母は牢屋の中だ。もちろん母に唆され、オーヴェル家に侵入し金品を奪おうとした賊の連中もだ。
この結末を選んだのは他でもない母自身。
私は頭を抱える父の肩に手を置いた。
「私が今回の事で1番許せなかった事は、ジュリエッタの結婚式の日を実行日に選んだ事です。
物理的に今日が侵入しやすいと考えた理由はわかりますが、心情的な所が全く理解出来ません。何故娘の結婚式の日を選ぶ事が出来るのか」
と私が首を振って言えば、
「私はずっと彼女のそういう部分を見ないようにしてきた。自分さえ良ければいいと…そんな風に考えているのはわかっていたんだ。だが、見てみぬフリをしてきたんだ。私が彼女を変える事が出来ていれば…」
と声を絞り出すように父は言った。
父は本当に母を愛していたのだろうか?愛とは全てに目を瞑る事?いや…それは違うと私は思う。
臭いものに蓋をして、美しい部分だけを見るのは愛ではなくエゴだ。
だが今、父を責めるのも間違いだ。母が変わるチャンスは幾度もあった。それをみすみす見過ごしたのは母自身だ。まぁ…彼女自身変わる必要があるとは微塵も思っていなかったのだろうが。
「お父様、このことはジュリエッタに…」
言わないでおこうと言いかけた私に、
「黙っておいてやってくれ。あの子の笑顔を曇らせたくない」
と父は言った。私も同じ気持ちだ。素直に頷いた。
「お疲れ様。さぁ…マッサージをしよう」
と湯浴みを終えた私にマルコ様が手招きをする。
子ども達を抱きしめて、心からホッとした。庭師の怪我も大した事はなかったし、屋敷に残っていた皆も無事だった。
アントン伯爵から忠告の手紙を受け取った後から護衛の数を増やしていた事が功を奏した。
元母のした事だという事が心に重くのし掛かってはいるが、暗い顔をすればジュリエッタに気付かれてしまう。
今日はジュリエッタは伯爵と共に離宮に泊まっている。明日には伯爵領へと経つ。父との時間を邪魔するつもりもない。…伯爵としては初夜がお預けになっているのが申し訳ないが。
「マルコも疲れてるのに、悪いわ」
と私が言っても、
「ほら、遠慮しない!おいで」
と私の手をつかみ自分の膝に座らせた。
「もう!こうしてたら、マッサージは出来ないでしょう?」
と私が笑えば、
「今クロエに必要なのは、心を解すマッサージだ。とりあえず何も言わずに俺にギュってさせてくれよ」
とマルコ様は言って私を思いっきり抱き締めた。
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