10 / 55
case 桂男 ⑦
しおりを挟む
「お前の仕事はな『ほすと』だ。良かったな。天職だろ?」
「『ほすと』?」
確か、ほすととは、最近出来た、男性が給仕をする飲み屋だ。
キラキラした美丈夫が、お客様をおもてなしするのだという。…私も行ってみたい。
「そう。お客様のお嬢様方をおもてなしするんだ。お客様が気持ちよくお酒を飲めるようにな。お客様がたくさんお酒を飲んで、店にお金を落とせば、その分お前の給料も上がる。歩合制ってやつだ」
「……お客は、人間、なんだろう?」
「やっぱりお前は、それを気にしていたか。大丈夫、お前はちゃんと自分の力をコントロール出来てる。
お前と相対したからと言って、相手の寿命は縮まないよ。それより、気分が良くなって、かえって寿命が延びるんじゃね?」
と言って所長は笑う。
「それにな、お客には人間も妖怪もいるし、それは従業員も同じだ。どっちも居る。それに、俺が紹介する店の店長はお前と同じ…桂男だよ。だから、大丈夫だ」
桂男…私は身近では一路しか会ったことがない。いたんだ…他にも。
「…そうか。私には拒否権は…」
「ない!」
「じゃあ、その仕事やっても良いよ。でも条件がある」
一路…何故上からなの?八重乃さんにお金返せるチャンスなのに。
「条件?あ?お前、自分の立場分かってるか?金を返さなきゃ、警察行きだぞ?」
「分かってるよ。でも、八雲から紹介された仕事を易々と引き受けたくない。だから、条件を付けさせろ」
「なんのプライドだよ…。まぁ、なんだ、話してみろよ。善処してやるから」
「じゃあ、そのお店に週に1度、凛が来る事」
「へ?」
思わぬ角度から、私に弾が飛んで来たけど?巻き込まれたくない!
「はぁ?なんで、凛がお前に貢がなきゃならんのだ?それに、さっきも言ったが、凛には金はない。諦めろ」
所長の言う事は最もだ。だが、給料未払いの雇用主に言われると、なんだかムカつく。
「金はいらない。私がそれは支払う。でも、凛に来て欲しい。私が頑張って働く姿を見せたい」
一路…まず自分の借金返そうよ。
「ダメだ」
所長が決める事?それもなんだかムカつく。
そこで私が、
「いいよ?私、行ってみたいって思ってたし。でも週に1回も行く暇はないかな。なんせ、この〈よろず屋〉でまともに働いてるの、私だけだから」
それを聞いた一路は、
「じゃあ、2週に1回!」
「うーん。もう一声」
「じゃあ、3週に1回!」
「フフッ。それぐらいなら時間作れるよ」
「やった!じゃあ、真面目に働くから、凛、来てね」
と一路は嬉しそうにしている。
私にそこまで働いてる姿を見せたいのね。
散々、私に迷惑かけたからかな?
そのやり取りを見ていた所長が、
「……紹介すんの辞めようかな」
ボソッと呟いたが、よく聞き取れなかった。
「『ほすと』?」
確か、ほすととは、最近出来た、男性が給仕をする飲み屋だ。
キラキラした美丈夫が、お客様をおもてなしするのだという。…私も行ってみたい。
「そう。お客様のお嬢様方をおもてなしするんだ。お客様が気持ちよくお酒を飲めるようにな。お客様がたくさんお酒を飲んで、店にお金を落とせば、その分お前の給料も上がる。歩合制ってやつだ」
「……お客は、人間、なんだろう?」
「やっぱりお前は、それを気にしていたか。大丈夫、お前はちゃんと自分の力をコントロール出来てる。
お前と相対したからと言って、相手の寿命は縮まないよ。それより、気分が良くなって、かえって寿命が延びるんじゃね?」
と言って所長は笑う。
「それにな、お客には人間も妖怪もいるし、それは従業員も同じだ。どっちも居る。それに、俺が紹介する店の店長はお前と同じ…桂男だよ。だから、大丈夫だ」
桂男…私は身近では一路しか会ったことがない。いたんだ…他にも。
「…そうか。私には拒否権は…」
「ない!」
「じゃあ、その仕事やっても良いよ。でも条件がある」
一路…何故上からなの?八重乃さんにお金返せるチャンスなのに。
「条件?あ?お前、自分の立場分かってるか?金を返さなきゃ、警察行きだぞ?」
「分かってるよ。でも、八雲から紹介された仕事を易々と引き受けたくない。だから、条件を付けさせろ」
「なんのプライドだよ…。まぁ、なんだ、話してみろよ。善処してやるから」
「じゃあ、そのお店に週に1度、凛が来る事」
「へ?」
思わぬ角度から、私に弾が飛んで来たけど?巻き込まれたくない!
「はぁ?なんで、凛がお前に貢がなきゃならんのだ?それに、さっきも言ったが、凛には金はない。諦めろ」
所長の言う事は最もだ。だが、給料未払いの雇用主に言われると、なんだかムカつく。
「金はいらない。私がそれは支払う。でも、凛に来て欲しい。私が頑張って働く姿を見せたい」
一路…まず自分の借金返そうよ。
「ダメだ」
所長が決める事?それもなんだかムカつく。
そこで私が、
「いいよ?私、行ってみたいって思ってたし。でも週に1回も行く暇はないかな。なんせ、この〈よろず屋〉でまともに働いてるの、私だけだから」
それを聞いた一路は、
「じゃあ、2週に1回!」
「うーん。もう一声」
「じゃあ、3週に1回!」
「フフッ。それぐらいなら時間作れるよ」
「やった!じゃあ、真面目に働くから、凛、来てね」
と一路は嬉しそうにしている。
私にそこまで働いてる姿を見せたいのね。
散々、私に迷惑かけたからかな?
そのやり取りを見ていた所長が、
「……紹介すんの辞めようかな」
ボソッと呟いたが、よく聞き取れなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
74
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる