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case 鬼 31

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直ぐに、大蔵の養父がやって来た。

「すまん!遅くなった。桜雅様の暗示を解くのに時間がかかった」

私はその声を聞いた気がするのだが、力を使い果たしてしまった私は、そのまま意識を失った。






私が再び目を覚ましたのは、それから3日後の事だった。

私が目を覚ますと、そこには泣き腫らした顔の八雲が居た。

「…酷い顔ですね…所長」

「うるさいな。…これでも心配したんだ」

「事件は…どうなりましたか?」

「老人になった実氏は守総に引き渡したが…昨日死んだと連絡があった。
実氏の作っていた武器は「無尽の矢」と言われるもので、作動すると対象になる全てに矢が放たれる仕組みの物だった。だが、安綱が再び封印された事で、その力は元の鬼に戻っていったよ。
力の戻った鬼は呪いの紋様も消えて元通りだ。しかし、既に死んでしまった鬼の妖力は、行き場を失くしてしまった。
その力は安綱の封印を強める為に使われるらしい。紫電が取りに来て、島へ持って帰ったよ」

「そうですか…解決…したんですね」

「一応な。死んでしまった者は還らないが」

「桜華は?」

「今は北の塔に幽閉中だ。しかし…間接的にでも帝の暗殺に協力していたし、桜雅様に対してはある意味、直接手を下そうとしていたんだ…死罪は免れないだろう。それに、もう彼女は…狂ってしまった」

「守総をそれほどまでに愛していたのね」

「あれを愛と呼ぶのかな?俺には理解出来ないが」

「そうですね。私にもわかんないや」

「…そういえば、久しぶりに名前、呼んでくれたな」

「はぁ?自分が〈よろず屋〉を始めた時に、『所長と呼べ』って言ったんでしょうが?!」

「は?えっと…そうだったかな?」

「そうだよ。威厳がどうとかって。だから、ずっと所長って呼んでたんじゃん。なのに」

「本当に…すまない。忘れてた。その上、お前が名前を呼んでくれないからいじけてた


「…いいんだよ?嫌なら婚約解消しても。どうせ、子どもの頃の約束だし、私達の事は大蔵の家の人達しか知らないし。

「なんでそんな事言うんだよ!結婚まで自由で居たいって言うから、独り暮らしも許したんだ!ただ、ほら…一緒に働くのに…婚約者ってのも…恥ずかしいからさ。
俺が…お前の事を好きな事知ってるくせに…」

「…知ってるよ。所長は私にしか興味ないこと…もしかして幼女趣味とかじゃないよね?」

「んな事あるか!それに、お前…ほら、鏡見てみろ」

所長は手鏡を私に渡す。
私はまだ横になったままだが、その手鏡を覗き込むと、そこには、妖艶な美女が居た。

「誰?これ?」

「お前だよ。一路の全力の妖力を浴びただろ?さすがにお前は半妖だから、少し影響あったみたいで…その…一瞬で成長したらしい。これで、俺との見た目も釣り合いがとれてきたな」

「…自分の顔が見慣れないって不思議な感じ」

「なぁ、これならもう結婚出来るだろ?」
なんて、私達が話していると、


「はぁ~。何をイチャついてるんだよ」
と部屋の入り口から声がした。
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