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第64話
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「ハリソン様、お野菜は食べられますか?」
私は厨房を見渡してそう尋ねた。
「……野菜は大丈夫だ」
お肉は残していらっしゃったものね。そう考えた私は簡単な野菜のスープを作る事にした。
何だかんだで、ハリソン様が厨房から出ていかない所をみると、やはりお腹が空いていたのだろうと思う。そんなハリソン様につい笑ってしまいそうになるが、我慢だ。またへそを曲げられたら困る。
「すみません、お待たせしました。そこにお座り下さい」
私がテーブルにスープを置くと、ハリソン様は無言でテーブルについた。
「熱いので気を付けて下さいね」
そう声をかけると、ハリソン様はスプーンの上のスープにフーフーと息を吹きかけて冷ましている。
スープを口にしたハリソン様が少し口角を上げた。……喜んでくれているのかしら?
私がついその様子をジッと見つめていると、
「そんなに見られていては、食べられない」
と言われてしまった。
「すみません」
苦笑しながら、私が向かい側に腰掛けると、ハリソン様は驚いた様な顔をした。
「何故、まだ居るんだ?」
「え?自分が作った物ですから、最後まで食べていただけるか気になるじゃないですか」
「……ちゃんと食べてるだろうが」
「はい。食べていただけて安心しました。……もしかしてハリソン様はお肉を食べると……お腹を下したりするのではないですか?」
私が尋ねると、ハリソン様はスプーンを置いて、
「食事中にする話じゃないだろ」
と嫌そうな顔をした。
「あ!本当ですね。すみません。配慮に欠けました」
素直に謝罪した私にハリソン様はまたスプーンを手に取ると、一口スープを啜った。
「いや……別に良い。だが、どうしてそう思った?」
「実は私の父がそうだったのです。少量なら問題ないのですが、脂肪の多い肉をたくさん食べるとその……」
と私は先程注意を受けた事もあり、口籠った。
「……その通りだが、これを誰にも言った事はない。肉が食べられないのは騎士にとっては致命的だからな。だが、よくわかったな」
「最初にお会いした時の晩餐でも切り分けるだけで、殆ど肉には手を付けていませんでしたから。父の事もありましたし、ひょっとして……と思ったのです」
「情けないよな。こんな事で騎士に相応しくないと言われ、長男なのに父の後を継ぐ事も出来ない。優秀な弟と比べられてばかりだ」
「ハリソン様……。私には騎士が何たるか……など分かっておりませんので、そこについては何も言う事が出来ませんが、身近に比べてしまう人物が居ると、少し卑屈になってしまうその気持ちはわかります」
私がそう言うと、ハリソン様は私の顔をジッと見た。
私は厨房を見渡してそう尋ねた。
「……野菜は大丈夫だ」
お肉は残していらっしゃったものね。そう考えた私は簡単な野菜のスープを作る事にした。
何だかんだで、ハリソン様が厨房から出ていかない所をみると、やはりお腹が空いていたのだろうと思う。そんなハリソン様につい笑ってしまいそうになるが、我慢だ。またへそを曲げられたら困る。
「すみません、お待たせしました。そこにお座り下さい」
私がテーブルにスープを置くと、ハリソン様は無言でテーブルについた。
「熱いので気を付けて下さいね」
そう声をかけると、ハリソン様はスプーンの上のスープにフーフーと息を吹きかけて冷ましている。
スープを口にしたハリソン様が少し口角を上げた。……喜んでくれているのかしら?
私がついその様子をジッと見つめていると、
「そんなに見られていては、食べられない」
と言われてしまった。
「すみません」
苦笑しながら、私が向かい側に腰掛けると、ハリソン様は驚いた様な顔をした。
「何故、まだ居るんだ?」
「え?自分が作った物ですから、最後まで食べていただけるか気になるじゃないですか」
「……ちゃんと食べてるだろうが」
「はい。食べていただけて安心しました。……もしかしてハリソン様はお肉を食べると……お腹を下したりするのではないですか?」
私が尋ねると、ハリソン様はスプーンを置いて、
「食事中にする話じゃないだろ」
と嫌そうな顔をした。
「あ!本当ですね。すみません。配慮に欠けました」
素直に謝罪した私にハリソン様はまたスプーンを手に取ると、一口スープを啜った。
「いや……別に良い。だが、どうしてそう思った?」
「実は私の父がそうだったのです。少量なら問題ないのですが、脂肪の多い肉をたくさん食べるとその……」
と私は先程注意を受けた事もあり、口籠った。
「……その通りだが、これを誰にも言った事はない。肉が食べられないのは騎士にとっては致命的だからな。だが、よくわかったな」
「最初にお会いした時の晩餐でも切り分けるだけで、殆ど肉には手を付けていませんでしたから。父の事もありましたし、ひょっとして……と思ったのです」
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「ハリソン様……。私には騎士が何たるか……など分かっておりませんので、そこについては何も言う事が出来ませんが、身近に比べてしまう人物が居ると、少し卑屈になってしまうその気持ちはわかります」
私がそう言うと、ハリソン様は私の顔をジッと見た。
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