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第65話
しおりを挟む「お前も婚約解消されたと聞いた…弟と結婚するのは妹のはずだったと。何故だ?」
「ハリソン様は詳しいお話は?」
「聞いていない。僕はいつだって蚊帳の外だ」
……いや、多分話すほどの事ではないと判断しただけだろう。レナード様も最初は誰でも良いと考えていたみたいだし、顔合せしたご令嬢は、クレイグ辺境伯という地位に興味がお有りの方ばかりだったようだし。
「そうでしたか。まぁ、簡単に言えば、妹が私の婚約者にプロポーズされた……ただそれだけの話です。実は……という程深い話でもありませんね」
私は明るくそう言った。きっと顔も微笑んでいた事だろう。正直、今は本当にそう思っている。『大した話ではない』と。
しかし私の表情とは裏腹に、ハリソン様は難しい顔をして、
「なんだそれは?」
と吐き捨てた。
「そのままです。私より妹の方が良かった元婚約者が私から妹に乗り換えたかった。でもそんな風に言うとレナード様がハズレくじを掴まされたみたいで、それは失礼な言い方になっちゃうかもしれませんね」
私が軽く首を傾けると、
「どうしてそんな明るく言えるんだ。……悔しかった……だろ?」
とハリソン様はますます難しそうな顔をした。
「だって……私は今幸せだからです。私も妹には並々ならぬコンプレックスを抱えていました。……今のハリソン様のように」
そうからかうように私が言えば、ハリソン様は面白くなさそうな顔をした。だけど席を立つ様子はない。ならばこのまま話を続けても良いという事だろう。
「妹はとても華やかで可愛らしくて……私とは正反対なんです。小さな頃から『お姉さんなんだから』と我慢させられる事も多かったせいか、つい自分と妹とを比べるようになってしまいました。意識しないようにと、考えれば考える程深みにハマってしまって」
そこで私が笑いだせば、ハリソン様は不思議そうに
「どうして笑える?不公平に感じた事もあっただろう?それにそんな妹に婚約者をとられたんじゃないのか?」
と私に尋ねた。
「確かに不公平を感じる事もありましたし、その場面に遭遇した時はとても悲しかったです」
「その場面に遭遇……って妹が婚約者にプロポーズされてるのを見たって事か?」
「はい。たまたまですが」
「きっつ……」
絶句するハリソン様の顔がおかしくて、私はまた笑ってしまった。
「本当『きっつ』ですよね。でも……正直こうなって本当に良かったと心から思っています」
「それは……レナードか?」
ハリソン様のレナード様コンプレックスは根深い。レナード様の名前を言う時に少し眉間にシワが寄るのは仕方ない事だろう。
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