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第18話
しおりを挟む数分後、げんなりした顔でローラさんと、メイナードさんが、私の控え室に顔を出し、
「お待たせ致しました。司祭様の元へと行きましょう」
とローラさんから声を掛けられる。
私は、
「公爵様は…ご納得されましたか?」
と訊ねずにはいられない。
司祭様の前でごねられでもしたら、目も当てられない。
「前の結婚指輪を鎖で首にかけ、今回の結婚指輪を指にはめる事で、なんとか納得してもらいました。…妥協案です」
とメイナードさんが、苦虫を潰したような顔をした。
…大丈夫かな…。私は本当に指輪なんてどうでも良いんだけど。
というか、この教会まで公爵様が来たこと事態、奇跡に近い。
ユージーン様が連れて来たと言っていたが、それだけでも褒めてあげたい。
「公爵様は…指輪の事も含め、この結婚の儀にはご納得されてますか?」
やはり訊かずにはいられなくて、私は再度確認した。
「納得…はしていないかもしれませんが、逃げられない事も重々承知です。とにかく、終わらせてしまいましょう」
メイナードさんの目が血走っている。
さっさと結婚誓約書にサインした方が良さそうだ。
ちなみに、結婚の儀は服装に決まりはない。私は用意されていた薄紫色のドレスを来ているが、ドレスなんて着た事が無かったので、歩くのにも一苦労だ。…貴族って大変なんだな…。
教会の司祭様の前には既に公爵様が待っていた。
魔法使いの証でもあるローブのフードを目深に被り、殆んど顔は見えない。
見えないのだが、オーラが…不機嫌さを醸し出している。
私はローラさんの手を借りて、司祭様の前まで進む。もちろん公爵様のエスコートなど期待すらしていない。
公爵様の横に立つ。公爵様はこちらに目を向ける事もなく、ずっと下を向いたままだ。
結婚誓約書の見届け人の欄には既に司祭様のサインがある。
まずは公爵様からサインをするのだが、ペンを握ったまま、動かない公爵様。
…何かと戦っているんだろうか?手はプルプルと震えていた。…そんなに嫌ですか…。
ユージーン様が、
「ウィル様、サインを」
と声を掛けると、大きなため息を1つついて、公爵様はサインをした。
ペンと誓約書を1度司祭様へ戻すと、司祭様から私に誓約書とペンが改めて渡される。
私は直ぐ様サインすると、司祭様へその2つを戻した。
司祭様は誓約書を見て大きく頷くと、
「お2人の結婚がここに成立した事を宣言します。では、指輪の交換を」
と私達の前に指輪を2つ差し出した。
公爵様はその内の1つ…少し小さめの指輪を掴むと、私の方へと差し出した。またもやプルプルしている。…生まれたてなのかしら?
私が左手を差し出すと、公爵様は震える手で、人差し指を掴み、そこへ指輪をはめた。指輪には魔法がかかっていて、私の人差し指にピッタリと吸い付くようにそこへはまった。
私も、もう1つの指輪を公爵様の指にはめる。
その時に、公爵様は初めて顔を少し上げた。
そして私を見ると、
「へ?メイド?」
と素っ頓狂な声をあげた。
…あ、忘れてた。
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