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第66話

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「アメリア、お前がそんな辛そうな顔をする必要はない」
旦那様は少し笑うように言うが、私は全く笑えない。

「でも…」

「イメルダが僕を嫌っているのは、何となくわかっていたんだ。それなのに、自分の立場を利用して、彼女と無理矢理結婚しようとしたんだから、逃げられて当然なんだと思う。
死んだと聞かされた時には悲しかったし、辛かったが、今回の事で『実は男と逃げていた』と聞いても、別にショックじゃなかった。気にするな」

「だって…旦那様はずっとイメルダ様を…」
と言って、私はふとこの部屋の違和感に気づいた。

「あれ?イメルダ様の肖像画が…」
無くなっている、あの存在感バリバリの肖像画が。

「今さらか?随分前からここに置いてないが、気づかなかったか?」

「え?いつから?」

「いつだったかな…少なくともイメルダが生きていたと知る前から、部屋にはないはずだ」

そんな前から?

「肖像画は何処に?」
私が訊ねると、

「ベイン子爵に引き取って貰った。だが…ベイン子爵は彼女が生きていた事を知っていたのではないだろうか?」

「何故、そう思われるのです?」

「亡くなった娘の肖像画であればもう少し喜ぶんじゃないかと思っただけだが…最初は貰っても困ると言っていたからな」

…でも、前の夫の部屋に飾られていた肖像画なんて…貰っても困るような気もするんだけど…。

「イメルダ様はその…盗賊団の男性と駆け落ちを?」

私は少し話を変えて疑問に思っていた事を口にした。

「そこはユージーンが調べていた。
どうも結婚した当日、行方を眩ませた時に一緒に居た男と盗賊団の男とは別人のようだ。
最初の男は貴族の3男坊で騎士をしていた男だと言う。
騎士団で問題を起こして…捕まるぐらいならと、当時恋人だったイメルダを連れて逃げたって訳だ。
どうも2人で隣国まで逃げていたらしい。ユージーンが調べたのはそこまでだ。その後2人に何があったのかは知らん」

「あれからもう随分と経っていますから…色々とあったんでしょうけれど。でもよりにもよってその後、盗賊団の一員とお付き合いをされていたなんて…」
と私が言えば、

「まぁ…そこら辺の事情はわからんが、盗賊団の男にも捨てられて、流石にこの国へ帰って来る気になったのかもしれないな」

あんなにお好きだったイメルダ様の事を淡々と話す旦那様。…何だか不思議なのだけど。
人の気持ちって…結構呆気ないものなのね…。
私が今旦那様を好きなこの気持ちも、いつの日か失くなってしまうものなのかしら?

人を好きになると言う経験が初めてだから、なんだか不安だわ…。
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