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第43話
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「ん?まぁ……な」
歯切れの悪い陛下の答えに、
「あ!さては眠れていませんね?」
と少し茶化す様に私は言った。
王国軍と反乱軍の事を考えれば眠れなくなるのは分かる。正直……夜一人になった時、私もどうしようもなく怖くなって、眠れなくなる時がある。そんな時は、夜中でも部屋の掃除をする。王宮のメイドの仕事は完璧で、部屋もゴミ一つ落ちていない。だが、あえてそれでも私は掃除をする。無心に床を磨いていると、不思議とスッキリして眠れる様になるのだが、その方法を陛下に薦める訳にはいかない。
陛下は少し困った様に眉を下げた。その顔は随分と歳上の陛下を少しだけ幼くさせた。
「そうだ!陛下、今日は一緒に庭を散歩しませんか?」
私の言葉に陛下は驚いた様に目を丸くした。
陛下が動くとたくさんの護衛も動く。そんな事を全く考えてなかった私に自分自身で呆れた。
「何だか大ごとになってしまいました……」
陛下の腕に掴まりながら庭を歩く私に陛下は笑った。
「仕方ないんだ。……私の命は狙われている」
陛下のその言葉に私は少し背筋が寒くなった。
「軽率でした……」
俯く私に、
「気にするな。この状況にも自然と慣れる」
たくさんの護衛に囲まれる事に慣れる日が来るのか……それはそれで何か嫌だな……と私は思った。
しかし、こんな場所ではメリッサ様や公爵様の話をする訳にはいかない。私と陛下は取り留めもない話をする。
「陛下、この花の名前知ってます?」
私は最近マークに教えて貰った知識をひけらかす事にした。
「これは、ダリアだろう?」
事も無げに答える陛下に、私は口を尖らせた。
「え~ッ!知ってるんですか?せっかく自慢しようと思ったのに」
「ハハハッ。そう怒るな。……カサンドラは花が好きだった。その影響だ」
陛下は昔を思い出している様な遠い目をした。ふと、私は陛下が居なくなってしまうような感覚に襲われて、陛下を掴む手にギュッと力を入れた。
陛下は私の方を見て……フッと微笑むと私の手をポンポンと軽く撫でた。
「ダリアは色んな種類、色んな色がある」
陛下の低い声が静かに響く。
「マークに聞きました。ここにあるダリアだけでも十数種類あると」
「大きさも様々、花の咲き方も様々だ」
「これも、これもダリアだなんて……全く違う花の様です」
私は大きさの違う二つのダリアを指差してそう言った。
「ダリアは色により様々な花言葉を持つ」
「花言葉?」
「ん?花言葉を知らんか?そうだな、花の色や形、その植物が持つ性質などから、品種や色別につけられた意味を持つ言葉のことだ。 言葉にしづらい気持ちを花に託して贈ったりして、自分の気持ちを伝えるのに使える」
「へぇ~ロマンチック」
「ダリアにはたくさんの花言葉がある。色によってな」
「ふーん。じゃあこの白は?」
私は白いダリアを指差しながら尋ねる。
「白は『豊かな愛情』『感謝』だ、この黄色は『優美』こっちの赤は『栄華』や『華麗』」
「凄い!陛下って物知りですね」
「ハハハ。花言葉を知っているからと、褒められたのは初めてだ」
陛下は楽しそうに肩を揺らした。
私達はゆっくりと庭を歩く。
私はマーク顔負けの知識を披露する陛下の話に耳を傾けた。
「たまにはこうして庭を歩くのも悪くない」
「……きっと今日は眠れます」
そう言った私の頭を陛下はそっと撫でた。私は初めての事にびっくりする。
陛下はそんな私に優しげに目を細め、
「お前は優しいのだな」
とポツリと呟いた。
歯切れの悪い陛下の答えに、
「あ!さては眠れていませんね?」
と少し茶化す様に私は言った。
王国軍と反乱軍の事を考えれば眠れなくなるのは分かる。正直……夜一人になった時、私もどうしようもなく怖くなって、眠れなくなる時がある。そんな時は、夜中でも部屋の掃除をする。王宮のメイドの仕事は完璧で、部屋もゴミ一つ落ちていない。だが、あえてそれでも私は掃除をする。無心に床を磨いていると、不思議とスッキリして眠れる様になるのだが、その方法を陛下に薦める訳にはいかない。
陛下は少し困った様に眉を下げた。その顔は随分と歳上の陛下を少しだけ幼くさせた。
「そうだ!陛下、今日は一緒に庭を散歩しませんか?」
私の言葉に陛下は驚いた様に目を丸くした。
陛下が動くとたくさんの護衛も動く。そんな事を全く考えてなかった私に自分自身で呆れた。
「何だか大ごとになってしまいました……」
陛下の腕に掴まりながら庭を歩く私に陛下は笑った。
「仕方ないんだ。……私の命は狙われている」
陛下のその言葉に私は少し背筋が寒くなった。
「軽率でした……」
俯く私に、
「気にするな。この状況にも自然と慣れる」
たくさんの護衛に囲まれる事に慣れる日が来るのか……それはそれで何か嫌だな……と私は思った。
しかし、こんな場所ではメリッサ様や公爵様の話をする訳にはいかない。私と陛下は取り留めもない話をする。
「陛下、この花の名前知ってます?」
私は最近マークに教えて貰った知識をひけらかす事にした。
「これは、ダリアだろう?」
事も無げに答える陛下に、私は口を尖らせた。
「え~ッ!知ってるんですか?せっかく自慢しようと思ったのに」
「ハハハッ。そう怒るな。……カサンドラは花が好きだった。その影響だ」
陛下は昔を思い出している様な遠い目をした。ふと、私は陛下が居なくなってしまうような感覚に襲われて、陛下を掴む手にギュッと力を入れた。
陛下は私の方を見て……フッと微笑むと私の手をポンポンと軽く撫でた。
「ダリアは色んな種類、色んな色がある」
陛下の低い声が静かに響く。
「マークに聞きました。ここにあるダリアだけでも十数種類あると」
「大きさも様々、花の咲き方も様々だ」
「これも、これもダリアだなんて……全く違う花の様です」
私は大きさの違う二つのダリアを指差してそう言った。
「ダリアは色により様々な花言葉を持つ」
「花言葉?」
「ん?花言葉を知らんか?そうだな、花の色や形、その植物が持つ性質などから、品種や色別につけられた意味を持つ言葉のことだ。 言葉にしづらい気持ちを花に託して贈ったりして、自分の気持ちを伝えるのに使える」
「へぇ~ロマンチック」
「ダリアにはたくさんの花言葉がある。色によってな」
「ふーん。じゃあこの白は?」
私は白いダリアを指差しながら尋ねる。
「白は『豊かな愛情』『感謝』だ、この黄色は『優美』こっちの赤は『栄華』や『華麗』」
「凄い!陛下って物知りですね」
「ハハハ。花言葉を知っているからと、褒められたのは初めてだ」
陛下は楽しそうに肩を揺らした。
私達はゆっくりと庭を歩く。
私はマーク顔負けの知識を披露する陛下の話に耳を傾けた。
「たまにはこうして庭を歩くのも悪くない」
「……きっと今日は眠れます」
そう言った私の頭を陛下はそっと撫でた。私は初めての事にびっくりする。
陛下はそんな私に優しげに目を細め、
「お前は優しいのだな」
とポツリと呟いた。
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