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第25話

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「殿下、ダメでした?」

「うーん。彼女…確かデイジー嬢だったかな?何か違うんだよ…何かが」

…その何かを言葉にしていただけなければ、次に繋げませんわ…。

「何か…ですか。何でしょうね?」

「言葉にするのは難しいなぁ。明るいってあんな感じなのだな。うーん。違う。やっぱり違う。明るいご令嬢という条件は無しだ。そうだなぁ…やっぱり大人し感じが良いかも」

「大人しい感じ…。では…このリリー様はいかがでしょう?」

私がリストアップしたご令嬢の中から、比較的控えめなご令嬢の名前を挙げてみますと、

「じゃあ次はリリー嬢?にしてみるか。今読んでいる小説の主人公はそんな感じだ」

「そうですか。では…」

「うん。またアナベルよろしく頼むよ」

…やっぱり、私がセッティングするのですわよね?



私はこの前と同じ様にリリー様と殿下のお話しの時間を設けました。
なんだか…本当に私って馬鹿みたいですわよねぇ。




***********

「メル!おかえりなさい!」

私は大好きなメルに抱きつきました。1年ぶりです。

「ただいま!元気にしていたかい?ベル」

「ええ!メルも元気そう。ねぇ、留学はどうだった?お手紙では教えて貰ってたけど、メルの口から直接聞きたいわ」

と、私とメルが感動の再会を果たしていると、私の後ろから、

「おいベル。隣に居る自分の兄にも同じぐらいの熱量で接してやれよ」
と言うグレイの声が聞こえました。

おっと…忘れておりました。私のお兄様であるフリオも一緒に帰ってきていたのでしたわ。お兄様とメルは留学していた国が同じで、帰国の日程が近かった事から、一緒に帰国してきたのです。
ちなみに…お兄様とメルは何故か親友です。

「お兄様おかえりなさい」

「あぁ。久しぶり…という程でもないな。3ヶ月ぶりぐらいだし」

「確かに。お兄様も留学は如何でした?」

「知りたかった事を直接この目で確かめられて良かったよ」

「そうですか。それは良かったですわ。で、お父様とお母様には?」

「まだだ。これからタウンハウスに戻る」

「なら、私と一緒に帰りましょう。馬車もありますし。メル、また遊びに来るから、お話し聞かせてね?」

「あぁ。領地に戻るまでにあと1週間は此処に居るから、いつでもおいで」

「じゃあね、グレイも。また明日!」

私はもう1度メルにハグをすると、お兄様と一緒に、公爵家のタウンハウスに戻る事にしましたの。

我が公爵家のタウンハウスには、お母様がいらっしゃいます。
お父様は領地に。

お兄様は、タウンハウスで3日程過ごした後、領地に戻られるそうです。




「おかえりなさい!フリオ!元気そうね」
お母様はタウンハウスに着いたお兄様を嬉しそうに出迎えました。

兄のフリオは本当に…大人しくて。全く手のかからない子であったと、お母様もお父様もよく言っておりました。

あまり自己主張のない兄が留学したいと言い出したのは、兄の好きな考古学者の遺跡発掘隊に参加する為です。


兄は公爵家を継ぐ立場にあるので、考古学者の夢を諦めざるを得なかったのです。

でも、まだまだお父様も現役なので、こうして少しの期間であれば、好きな遺跡に触れるのも問題ないと、両親は兄を送り出しました。


…私が…王太子妃にならずに、この公爵家を継げば…兄は考古学者の道に進めたのかもしれないと思うと、お母様と、楽しそうに遺跡発掘の話をしている兄を見て、どうしても申し訳なく思う気持ちが沸き上がる事を私は押さえる事が出来ませんでした。
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